海外法人設立|私文書・公文書の扱いとアポスティーユ手続きの実務的な流れ
前回の記事で、アポスティーユや公印確認について概略を説明しました。
今回取り上げるテーマは、実務で必ず直面する「私文書と公文書の扱いの違い」です。ここを理解しないまま進めると、書類が受理されなかったり、手続きをやり直す羽目になることがあります。
■ 私文書と公文書の違いが、海外提出時の手続きを左右する
外国に提出する文書が「公文書」に当たるのか、それとも「私文書」に当たるのか。
さらに提出先の国がハーグ条約加盟国か非加盟国かによって、手続きが大きく異なります。
● 基本原則
- 加盟国あて → 原則アポスティーユ
- 非加盟国あて → 原則公印確認(+領事認証)
しかし実務では、もっと注意すべき点があります。 たとえば、日本語と外国語の委任状をまとめて印鑑証明書とホッチキス留めして提出する場合です。
● 一見「公文書」に見えるが、セットにすると“私文書扱い”になる場合がある
印鑑証明書そのものは公文書です。 しかし、次のような場合は書類全体が「私文書の束」として扱われる可能性があります:
- 日本語の委任状(私文書)
- 外国語翻訳の委任状(私文書)
- 印鑑証明書(公文書)
これらをホッチキスでひとまとめにした場合、全体が「私文書」扱いとなり、外務省はそのままではアポスティーユを付与できません。
■ 「どうして私文書にアポスティーユを付けられるのか?」という疑問への答え
外務省は「公文書」に対してのみアポスティーユや公印確認を行います。 では、ひとまとめにした私文書をどうやって公文書に変えるのか?
● 公証人の「認証」を受けると、私文書が“公文書に変わる”
私文書でも、次の手続きを踏めば「公文書」として扱われるようになります:
- 公証役場で公証人に私文書の認証を受ける
公証人が「この文書は確かにこの人が作成した正当な文書である」と認める手続きです。 - その公証人が所属する法務局で「公証人押印証明」を受ける
法務局が「この公証人は実在し、公証権限を有する」と証明します。
この2ステップを経ると、私文書の束は公文書扱いになります。 その結果、外務省でアポスティーユを申請できるようになる、という仕組みです。
つまり、外務省の案内にある「日本の官公署が発行する公文書」というのは、公証人と法務局の手続きを経て「公文書に変わった私文書」も含まれる、ということです。
■ ハーグ条約加盟国向け:アポスティーユ取得までの実務的な流れ
実際に私が経験した流れを、順番に分かりやすく解説します。
- 提出用書類を準備する
(例:日本語の委任状+外国語翻訳委任状+印鑑証明書) - 私文書の束を公証役場へ持参し、公証人の認証を受ける
※手数料が必要です。 - 公証人が所属する法務局で「公証人押印証明」を受ける
※通常手数料は不要。 - 外務省の「アポスティーユ申請書」を入手し記入
(外務省ホームページから入手可能) - 申請書・書類・返信用封筒を外務省へ郵送
- 返送された書類をそのまま外国の提出先へ送付
● 実務で特に重要な注意点
- 一度ホッチキスを外すのは絶対NG(偽造を疑われ却下の原因)
- ②と③を同じ建物内で完結できる地域もある(公証人に要確認)
- 書類のまとめ方・製本方法は厳格に扱われる
■ 結論:複雑なので専門家に任せるのが最も確実
ここまで手続きを追ってみると、海外法人設立には思った以上に細かなルールや実務上の要点があることが分かります。 慣れない方が全て自力で対応すると、手戻りが発生したり、提出先で書類が受理されないリスクがあります。
そのため、海外法人設立に関わる書類認証は、専門の行政書士等へ依頼するほうが結果的に早く、確実に進みます。
