在留資格の手続きは、初動で9割決まります
在留資格の手続きは、初動で9割決まります
在留資格の手続きについて相談を受けていると、「書類を出してみないと結果は分からないですよね?」という言葉をよく耳にします。 確かに、最終的な判断は出入国在留管理庁が行うため、結果を100%保証することは誰にもできません。 しかし、実務の現場で数多くの申請を見てきた立場から断言できることがあります。 それは、在留資格の手続きは、申請前の初動で9割が決まるという事実です。
初動とは、単に「最初に動き出すタイミング」という意味ではありません。 どの在留資格を選択するのか、申請理由をどう構成するのか、どんな資料を準備し、どのリスクを事前に潰しておくのか。 これらを含めた戦略設計の段階こそが初動であり、この部分の出来が申請結果を大きく左右します。
なぜ在留資格は「後から挽回」が難しいのか
在留資格の手続きが他の行政手続きと大きく異なる点は、「やり直しが簡単ではない」という点です。 不許可になった場合、再申請は可能ですが、審査する側には過去の申請履歴がすべて残っています。 つまり、一度提出した内容は、その後も影響し続けるのです。
例えば、申請理由に一貫性がなかったり、事実関係の説明が不十分だったりすると、「この申請者は信用できるのか」という視点で見られてしまいます。 後から「説明不足でした」「誤解でした」と修正しようとしても、最初の印象を覆すのは簡単ではありません。 だからこそ、最初の申請でどれだけ完成度を高められるかが重要になります。
在留資格選択の段階で結果はほぼ決まる
初動で最も重要なのが、在留資格の選択です。 「就労できれば何でもいい」「とりあえずこの資格で出してみよう」という考え方は非常に危険です。 在留資格にはそれぞれ明確な趣旨と要件があり、申請内容がその枠組みに合っていなければ、どれだけ熱意を伝えても許可されません。
例えば、実際の業務内容が現業中心であるにもかかわらず、無理に技術・人文知識・国際業務で申請すると、審査の段階で必ず矛盾が生じます。 一方で、少し視点を変えれば、別の在留資格の方が自然に説明できるケースも少なくありません。 この見極めを誤ると、その後どれだけ書類を整えても限界があります。
申請理由書は「想い」ではなく「論理」で作る
初動において次に重要なのが、申請理由の構成です。 申請理由書というと、「本人の想い」や「会社の期待」を強く書けば良いと考える方が多いですが、それだけでは不十分です。 審査官が見ているのは感情ではなく、制度との整合性です。
なぜこの外国人でなければならないのか。 なぜこの業務内容が当該在留資格に該当するのか。 学歴・職歴・業務内容・会社の事業内容が、一本の線でつながっているか。 これらを論理的に説明できていない申請は、どこかで必ず引っかかります。 初動でこの設計を誤ると、後から文章を直すだけでは対応できません。
リスクを想定し、先回りして潰す
在留資格の申請には、必ずと言っていいほど「懸念点」が存在します。 学歴と職務内容の関連性が弱い、転職回数が多い、日本での在留状況に空白期間があるなど、完璧なケースはほとんどありません。 重要なのは、それらを隠すことではなく、どう説明するかを初動で決めておくことです。
想定される指摘事項を事前に洗い出し、それに対する説明や補足資料を準備しておく。 この作業を初動で行っている申請と、出されてから慌てて対応する申請では、審査官に与える印象がまったく異なります。 「よく考えられた申請だ」と思われるか、「とりあえず出した申請だ」と思われるか。 その差は結果に直結します。
初動に時間をかけることは、最短ルートである
「早く申請したいから、とりあえず書類を出したい」という気持ちはよく分かります。 しかし、初動を疎かにした申請ほど、結果的に時間がかかります。 不許可や追加資料要請、再申請といった遠回りをすることになるからです。
一方で、最初の段階でしっかりと戦略を立て、必要な資料と説明を整えた申請は、スムーズに進むケースが多くなります。 初動にかけた時間は、決して無駄ではありません。 むしろ、最短で許可を得るための投資と言えるでしょう。
まとめ:在留資格は「準備の質」で決まる
在留資格の手続きは、運や偶然で決まるものではありません。 どれだけ制度を理解し、自分の状況を正確に把握し、それをどう伝えるか。 その準備の質が結果を左右します。
そして、その準備の大部分は申請前、つまり初動で完了しています。 書類を提出する前に、どれだけ考え抜いたか。 この一点が、在留資格手続きの成否を分けると言っても過言ではありません。 在留資格の申請を考えている方は、ぜひ「初動」にこそ時間と労力をかけてみてください。
行政書士中川まさあき事務所(福井県越前市)
