経営の話が数字だけで終わると危険な理由
経営の話が数字だけで終わると危険な理由
「結局、数字がすべてですよね」
経営の現場で、何度となく聞いてきた言葉です。
確かに、売上・利益・資金繰り。どれも経営にとって欠かせません。 私自身、長く財務や経理の仕事に携わってきましたから、数字の重要性は骨身に染みています。
ただ一方で、こうも感じてきました。
経営の話が数字だけで終わってしまうと、会社は静かに危険な方向へ向かう。
数字は「結果」であって「原因」ではない
月次の試算表、損益計算書、資金繰り表。
これらはすべて、これまで会社がどう動いてきたかの「結果」です。
ところが、数字だけを見ていると、 「利益が出ていない=もっと売れ」 「資金が足りない=コストを削れ」 と、短絡的な判断に陥りがちです。
本当は、その数字に至った背景があります。
誰が、どんな思いで、どんな判断を積み重ねてきたのか。 そこを見ないまま数字だけをいじっても、根本的な改善にはなりません。
数字だけの議論は、人を黙らせてしまう
以前、こんな場面に立ち会ったことがあります。
会議の場で、社長が数字を示しながら「だから現場が悪い」と結論づけた瞬間、 それまで発言していた社員が、一斉に黙ってしまったのです。
社員は数字を否定できません。
でも、数字の裏にある現場の事情や工夫、葛藤までは、数字には表れません。 そこを汲み取らないまま話が進むと、現場は「どうせ言っても無駄だ」と感じてしまいます。
数字は正しい。
でも、数字だけが正義になると、人は考えることをやめてしまう。
経営者自身も、数字に追い込まれていく
これは社員だけの話ではありません。
実は一番追い込まれるのは、経営者ご本人です。
「前年より落ちている」
「計画に届いていない」
「返済が続く」
数字だけを見続けていると、次第に 「自分は経営者として失格なのではないか」 「もう打つ手がないのではないか」 という思考に引きずられていきます。
その結果、本当は相談すべきタイミングで、誰にも話せず、一人で抱え込んでしまう。 これは非常によくあるパターンです。
数字の奥にある「人の動き」を見る
同じ売上減少でも、理由はさまざまです。
- 主力メンバーが疲弊していないか
- 社内の意思疎通が滞っていないか
- 社長自身が現場から距離を置きすぎていないか
- 逆に、抱え込みすぎていないか
こうした「人の状態」を見ずに数字だけを追うと、 一時的に改善しても、また別のところで歪みが出てきます。
補足: 数字を見ることをやめましょう、という話ではありません。 数字は「入口」であって「出口」ではない、という感覚を持ってほしいのです。
数字+言葉で、経営はようやく動き出す
私が経営者の方とお話しするとき、必ず数字の話はします。 ただし、数字だけで終わらせません。
「この数字を見て、正直どう感じていますか」
「ここ、一番気になっているのはどこですか」
そう問いかけると、たいてい数字の説明ではなく、気持ちの話が出てきます。 その瞬間、数字が“責める材料”から、“考える材料”に変わります。
経営は、冷静さと人間らしさの両立
経営は合理的であるべきです。
でも、人がやっている以上、感情や迷いが入り込むのは自然なことです。
数字だけで自分を追い詰めてしまうと、 冷静さも、人間らしさも、どちらも失ってしまいます。
数字を見て、言葉にして、誰かと話す。
そのプロセスがあるからこそ、経営は持続します。
経営の話が、数字だけで終わっていませんか。
もし少しでも引っかかるものがあるなら、
数字の奥にある「本音」を言葉にするところから始めてみてください。
話すことで見える景色は、必ずあります。
福井県越前市を拠点に、経営者の数字と感情の両面に寄り添う伴走支援を行っています。 財務・経理・監査の実務経験を背景に、現実的で無理のない経営判断を支援しています。
行政書士中川まさあき事務所(福井県越前市)
