【ルール解説】入国審査の基礎条文 ― 入管法第7条(入国審査官の審査)
日本に入国しようとする外国人が合法的に上陸を認められるかどうか、その重要な基準となるのが、出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」)の第7条です。入国審査官が「この者を上陸させてよいか」を判断するための審査項目が明文化されており、入国管理・在留管理の枠組みを理解するうえで極めて重要な条文です。
1.条文の概要とその背景
入管法第7条は、前条第6条(上陸申請)に基づき、上陸を希望する外国人が提出した申請に対して、入国審査官が「上陸のための条件」に適合しているかどうかを審査しなければならないと定めています。
このような審査制度は、我が国が入国を許可する外国人を限定し、不法上陸・不法滞在・不適正な活動を未然に防止するための制度的枠組みの一環です。具体的には、旅券・査証・活動内容・在留期間・上陸拒否の有無という観点から該当者をチェックする仕組みになっています。
条文構成のポイント
- 第1項:入国審査官が審査すべき「上陸のための条件」を列挙
2.審査される5つの主要条件
入国審査官は、次の主要な条件を満たしているかどうかを審査します。これは、法務省入国管理局等の公式サイトでも「次の5つ」として整理されています。
- 有効な旅券及び、必要な場合には有効な査証を所持していること。
- 申請に係る「本邦において行おうとする活動」が虚偽でなく、かつ、入管法別表に掲げる活動または身分・地位に該当するものであり、かつ上陸許可基準(省令等)に適合すること。
- 申請に係る在留期間(滞在予定期間)が、法務省令の規定(施行規則・省令)に適合すること。
- 当該外国人が入管法第5条に定める上陸拒否事由に該当しないこと。
- (再入国許可者・難民旅行証明書所持者の場合)上記のうち1号及び4号についても適用関係がある点。
それぞれの条件について、以下で詳しく確認します。
① 有効な旅券・査証の所持
旅券は有効期限内であることが前提です。また、査証が必要な外国人については、有効な査証が旅券に付与されていることが条件となります。査証免除制度の対象国・地域に属する外国人は、この査証が不要な場合があります。
② 本邦で行おうとする活動の適合性
「申請に係る本邦において行おうとする活動」が虚偽であってはいけません。そして、入管法別表第1・第2に掲げる活動(例:技術・人文知識・国際業務、特定技能、留学、家族滞在など)または身分・地位(例:永住者・定住者など)に該当していることが求められます。さらに、別表第1の表のうち「2の表・4の表」に掲げる活動を行おうとする場合には、我が国の産業・国民生活に与える影響などを勘案して法務省令で定める基準に適合している必要があります。
特に近年、多様な在留資格制度(高度専門職、特定技能等)が規定されており、各々に対応する省令・告示が設けられています。
③ 在留期間の適合性
上陸申請時に予定される滞在期間が、入管法施行規則・省令等で定められる在留期間の区分に適合していなければなりません(例:1年、3年、5年などの規定在留期間)。
④ 上陸拒否事由に該当しないこと
入管法第5条には、麻薬・覚醒剤・銃砲刀剣類の所持、不法就労、退去強制歴がある者等、上陸を拒否すべき外国人の具体的事由が列挙されています。審査官はこれら該当の有無を確認し、該当する者には上陸許可を与えてはなりません。
⑤ 再入国許可・難民旅行証明書保有者の特別な取扱い
再入国許可を受けている者や、難民旅行証明書を所持している者については、上陸のための条件のうち「第1号(旅券・査証)」「第4号(上陸拒否事由)」について特別扱いがされており、要求の範囲が限定されるケースがあります。
3.実務上のポイントと注意点
入国時の審査をスムーズに通過するためには、以下のような実務的ポイントを押さえておくことが大切です。
- 旅券・査証の有効性を事前確認:旅券の残存有効期間、査証の種類・有効期限をしっかり確認。査証免除対象国かどうかも判断要素。
- 活動内容と在留資格の整合性:入国時に選択する在留資格が、実際に日本で行う活動と一致しているかを確認。例えば「技術・人文知識・国際業務」資格を想定するなら、受入れ先の業務内容や専修学校・大学卒業状況などが問われることがあります。
- 上陸許可基準の整理:別表第1・第2に定められる在留資格には、それぞれ省令・告示で詳細な基準が定められており(例:特定技能、技能実習など)事前に関連省令の確認が望まれます。
- 在留期間の適合性チェック:予定滞在期間が在留資格ごとに定められた区分と合致しているか、また延長・更新の可能性も意識しておくと安心です。
- 上陸拒否事由の該当性の確認:退去強制歴、過去の不法就労、重大な犯罪歴などがあると上陸が拒否される可能性が高くなります。
- 書類の整備と提示の準備:場合によっては在留資格認定証明書(COE)を取得し、それをビザ申請・入国時に提示することで手続が円滑になるケースがあります。
さらに、入国審査時に「上陸許可の証印」が旅券に押印されるか、また電子的な記録(旅券に押印せずコンピュータシステムに記録)として行われるかが、入管法施行規則・省令で定められています。
4.条文理解と制度意義からの整理
入管法第7条を通じて、日本は「誰を入国させるか」を制度的に制御しています。旅券・査証という国際的基準、活動・在留資格・滞在期間という国内制度、そして上陸拒否事由という安全・公共秩序の観点が結びついており、入国管理と在留管理の橋渡し的条文とも言えます。
また、この第7条と関連して、在留資格認定証明書(第7条の2)など、在留資格の認定・証明に関する制度が整備されており、ビザ申請・入国・滞在という流れを制度的に支える構造になっています。
5.まとめ:入国審査を制するために押さえるべき論点
- 入管法第7条は「入国させてよいかどうか」を判断する最初かつ重要な条文。
- 旅券・査証、活動内容、在留資格との整合性、在留期間、上陸拒否事由という5つの条件を押さえる。
- 制度的には、ビザ(査証)手続き・在留資格認定(COE)・在留許可・上陸許可という一連の流れとの関連性が強い。
- 実務では、各条件の「省令・告示・別表」の基準や最新改正のチェックが欠かせない。
この条文を理解することによって、外国人の入国・滞在を巡る制度の枠組みを整理でき、実務・学習の両面で大いに役立つものです。ぜひ、制度設計の背景もふまえつつ、条文を繰り返し読み込み、関連省令・告示の確認を習慣にしてください。
