生命保険 死亡保険金の受取人変更

 生命保険の契約関係は、契約者、被保険者(保険の対象者)、保険料負担者、保険金受取人などが関係してきますが、受け取った死亡保険金は、それらの組み合わせの違いによりその性質が変わってくるため注意が必要です。また、一般的に生命保険金は遺産ではないといわれていますが、保険金受取人を被保険者自身にしている場合には相続財産となるという解釈になるようです。

ここでは、「死亡保険金の課税関係」、「遺言による受取人の変更」、「遺言者による受取人変更手続き」、「保険金受取人の変更の制限」、「受取人を内縁関係の方へ変更する場合」などのテーマに区分してみました。

死亡保険金の課税関係

契約者被保険者保険料の負担者保険金受取人税金の種類
BABB所得税
AAAB相続税
BABX贈与税

 死亡保険金の契約関係と課税関係は上記を念頭にする必要がありますが、一般的に、遺言や申出により死亡保険金受取人の変更を申し出るケースは、契約者=保険料負担者=遺言者である場合が前提となると考えられますので、以降、受取人の変更を考察するにあたっては、②のような契約関係を前提として記述していきたいと思います。

遺言による保険金受取人の変更

 平成20年に定められた保険法で遺言による保険金受取人の変更ができるようになりました。これにより、平成22年4月1日以降に締結された保険契約について、遺言による保険金受取人の変更が可能となり、遺言書に生命保険の証券番号、契約締結日、保険者(保険会社名)、保険契約者、被保険者、死亡保険金受取人を記載してすることになります。この場合、安全性と正確性を担保するため公正証書遺言にするケースが多いようです。なぜなら、遺言者が死亡した後、遺言執行者が保険会社に受取人の変更を通知する旨を公正証書で定めることにより、その執行手続きが確実に行われるからです。

遺言者が直接、保険会社に保険金受取人変更の申出をする場合

 前述の公正証書による保険金の受取人の変更は、変更する保険契約一つの場合1万1千円の手数料がかかってくるため、遺言者が保険会社へ直接変更の申出をして手続きをすることにより、この手数料は不要ということになるため節約できますね。

保険金受取人の変更の制限

 保険金受取人の変更に関する規定は任意規定であるため、保険金受取人の変更を制限する保険約款がある場合にはその保険約款が優先することになります。従って、遺言者は保険約款を調べるとか、保険会社へ確認するなどして人的範囲の制限の有無及びその内容を調査しておく必要があります。

保険金受取人を被保険者の相続人等から、相続人以外の内縁関係の方へ変更する場合

 前述の課税関係②のケースにおいて、例えば、遺言者Aが受取人をAの母Bとして契約している保険を、内縁の関係にあるZに変更する場合を考えてみましょう。

このような場合においては、前述の人的範囲の制限の有無及びその内容について保険会社へ問い合わせが必要になります。その上で、①重婚的内縁関係でないこと。②内縁の実態があることなどを保険会社が調査するため、双方の戸籍謄本並びに住民票の提出を求めるということもあるようです。

現実的には、変更前の受取人の理解と協力が得られるかという問題も残りますが、契約関係としては内縁の方が遺贈を受けるという関係になります。他の先生のお話では、最近、パートナーへ遺産を残したいという方の声が増えてきたということですので、保険受取人変更ができるかどうかは別として、内縁関係とパートナー、社会的な関係性と理解度、法整備の問題、自治体ごとの対応の差など関心のあるテーマになってきていると考えられます。

一方、来週20日にトランプ大統領が新たに就任することに関連して、企業がマイノリティに対する考え方を後退させる傾向が出始めているという報道がされています。今後の動向に留意していきたいと思います。

※税に関する個別具体的なご相談には応じられませんので、税に関するご相談は税理士先生へお問い合わせ下さい。

行政書士中川まさあき事務所