【相続の調査ガイド】ゆうちょ口座・証券口座・生命保険の有無を確認する方法
相続手続きでは、どの金融機関に何があるのかを正確に把握することが第一歩です。ここでは、①ゆうちょ銀行の口座確認(現存調査)、②証券口座の開設先確認(JASDEC/ほふり)、③生命保険の加入有無確認(生命保険協会の照会制度)の3テーマを、必要書類・手順・注意点まで実務目線で解説します。
① ゆうちょ銀行に口座があるか不明なとき(現存調査+残高証明)
一般の銀行では本支店で残高証明の発行依頼を行いますが、ゆうちょ銀行は「現存調査」手続と同時に残高証明を依頼する方式がとられています。民営化前(2007年9月30日以前)の郵便貯金を含む場合など、他行と手順が異なるため注意が必要です。
必要書類(相続人が手続きする場合の例)
- 被相続人の死亡がわかる戸籍(除籍)謄本 等
- 相続人であることが確認できる戸籍謄本 等
- 相続人本人確認書類(運転免許証 等)
- 相続人の印章
- 残高証明の発行手数料引落用の通帳・届出印(通常貯金/通常貯蓄貯金)
手順(窓口)
- ゆうちょ銀行の窓口で現存調査と残高証明書発行を依頼
- 貯金事務センターで調査後、結果が郵送される
- 民営化前の郵便貯金の調査は可能だが、回答に時間を要する場合あり
ポイント
・過去10年以上前のみを対象とする現存調査は原則不可(ただし民営化前の郵便貯金は別途対応)。
・代理人申請は委任状が必要。
・ゆうちょは「残高証明のみ」の前提ではなく、現存調査とセットで進むのが通常運用です。
② 証券会社・信託銀行の口座開設先が不明なとき(JASDEC/ほふり)
証券保管振替機構(JASDEC/通称:ほふり)は、振替法に基づく我が国唯一の振替機関で、上場株式等の決済インフラを担っています。故人がどの証券会社・信託銀行に口座を開設していたか不明な場合、「登録済加入者情報の開示請求」で口座の開設先名称等を確認できます。
主な要件・準備物
- 請求者:株主本人または相続人
- 必要書類:相続関係がわかる戸籍一式、本人確認書類 など
- 手数料:所定の実費(最新の金額・支払方法はJASDECの案内を要確認)
手順(概略)
- JASDEC公式サイト → 「各種手続き」→「株主・相続人の方」へ
- 「登録済加入者情報の開示請求」の案内に従い申請
- 回答で判明した開設先の証券会社・信託銀行に、相続手続きを進める
ポイント
・いわゆる「失念株式」関連の案内や、共同請求手続きのページも併設。
・名義や口座番号が不明な場合でも、開設先(取引機関)を突き止められるのが大きな利点です。
③ 生命保険の加入有無が不明なとき(生命保険契約照会制度)
保険証券や通知類が手元にない場合は、一般社団法人生命保険協会の「生命保険契約照会制度(平時利用)」を活用できます。
ご親族の死亡または認知判断能力の低下(医師の診断が必要)が条件で、会員生命保険会社に契約の有無を横断的に確認してもらえます。
| 照会対象者 | 故人(保険契約者・被保険者)/ 認知判断能力が低下したご親族 |
|---|---|
| 照会者 | ご家族等(代表者1名を定め、他の家族は委任) |
| 利用料 | 1名につき 3,000円(協会公表の標準額) |
| 回答内容 | 契約の有無、契約先保険会社 等(受取人が照会者であると判明した契約はその旨も回答) |
手順(概略)
- 生命保険協会の専用ページからオンライン申請(または書面)
- 本人確認書類・死亡(または診断)を証する書面等を提出
- 協会が会員各社へ一括照会 → 結果通知
ポイント
・口座振替履歴(通帳)やクレジット明細から保険会社名を特定できる場合もあります。
・一時払や長期前納契約など、引落し履歴が出ない契約は協会照会が有効です。
よくある質問(FAQ)
Q. どれから着手すべき?
通帳・郵便物・メール・クレジット明細などの手がかり収集→ゆうちょ現存調査→JASDEC開示→生命保険照会の順で着手すると、漏れが少なく効率的です。
Q. 代理人(家族以外)でも手続き可能?
多くの機関で委任状があれば可能です。原本確認が必要な書類も多いため、郵送・窓口の別や返送方法を事前に確認しましょう。
相続では、金融資産の所在把握と証拠書類の整備がスムーズな手続きの鍵です。
行政書士中川まさあき事務所では、戸籍収集・金融機関照会・相続人間の調整まで、実務をワンストップで支援します。小さな疑問でもお気軽にご相談ください。
※本記事は、ゆうちょ銀行・証券保管振替機構(JASDEC)・生命保険協会の公開情報をもとに、一般的な実務手順を整理したものです。
手数料・必要書類・運用は改定される場合があります。最新の公式案内をご確認のうえ、個別事案は専門家へご相談ください。
