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【徹底比較】成年後見制度・家族信託・遺言・贈与の意義と違い|どれを選ぶべきか?行政書士がわかりやすく解説

【徹底比較】成年後見制度・家族信託・遺言・贈与の意義と違い|どれを選ぶべきか?行政書士がわかりやすく解説

福井県越前市に永く暮らしてきた私は、家族の財産管理や相続について多くのお悩みの声を耳にすることが増えてきたと強く感じています。その多くは、「制度が複雑すぎて、どれを選べば良いかわからない」というものです。
特に、認知症対策・相続準備・将来の安心を考える場面では、成年後見制度・家族信託・遺言・贈与の4つが主要な選択肢になります。

しかし、それぞれの制度は「目的」「使えるタイミング」「メリット・デメリット」が大きく異なり、誤った制度を選ぶと家族も本人も困ることになります。

この記事では、地域の家族のつながりを大切にしている行政書士の視点から、この4つの制度をわかりやすく・実務的に・目的別に徹底比較し、どんな方に向いているかを丁寧に解説します。

1. 成年後見制度とは ― 本人の判断能力が低下してから使う制度

成年後見制度とは、認知症・知的障害・精神障害などで判断能力が低下した人の財産管理・契約行為を代理する仕組みです。家庭裁判所が後見人を選任し、後見人が本人の財産を適切に管理します。

■ 成年後見制度の意義

  • 判断能力が低下した本人を法的に守る制度
  • 財産の浪費や詐欺被害の防止
  • 医療契約・施設入居契約などの代理が可能

■ メリット

  • 認知症発生後でも利用できる(唯一の制度)
  • 家庭裁判所による強い保護がある
  • 本人の利益優先で管理される

■ デメリット

  • 後見人は家庭裁判所が決めるため、家族が選べない場合がある
  • 資産運用・不動産売却など自由な処分が難しい
  • 毎年の報告義務・費用が発生

■ まとめ

本人がすでに認知症等で判断能力が不足している場合に使う「守り」の制度です。 家族による柔軟な管理を希望する家庭には向かないこともあります。

2. 家族信託とは ― 判断能力があるうちに財産管理を家族に託す制度

家族信託(民事信託)とは、委託者(親)が、判断能力があるうちに財産管理を信頼できる家族(受託者)に託す契約です。 認知症後でも財産凍結を防ぎ、スムーズな管理を可能にします。

■ 家族信託の意義

  • 認知症による財産凍結リスクの回避
  • 生活費・介護費の支払いを家族が自由に行える
  • 不動産の売却や管理をスムーズに行える
  • 死後の財産承継まで一体型で設計できる

■ メリット

  • 親が元気なうちに準備できる
  • 自由度が高く、家族の事情に合わせた設計が可能
  • 後見制度より柔軟で迅速な財産管理ができる
  • 相続対策・空き家対策にも有効

■ デメリット

  • 仕組み自体あまり知られていない
  • 専門家による設計が不可欠(複雑)
  • 信託口座・不動産の登記など手続きが多い
  • 受託者が適切に管理する責任が重い

■ まとめ

認知症になる前の対策として最も柔軟性が高く、家族間の財産管理をスムーズにする制度です。 介護費や生活費、不動産管理など実務に強い家庭で特に有効です。

3. 遺言とは ― 死後の財産の分け方を指定する書類

遺言とは、本人の死後に財産をどのように承継させるかを指定する法的文書です。家庭内の紛争対策として非常に効果的です。

■ 遺言の意義

  • 相続人間の争いを防ぎ、安心して財産を渡せる
  • 誰に財産をどの割合で渡すかを明確にできる
  • 死後の事務(葬儀費、納骨など)も指定可能

■ メリット

  • 自分の意思を明確に残せる
  • 相続発生後の手続きを大幅に効率化
  • 特定の人に財産を多く残すことが可能

■ デメリット

  • 生前の財産管理には使えない
  • 認知症になると作れない(無効の危険)
  • 争いがゼロになるわけではない

■ まとめ

死後の財産承継を明確にしたい方に必須の制度です。 しかし、生前の財産管理はできないため、認知症対策としては不十分です。

4. 贈与とは ― 生前に財産を移転する制度

贈与は、生きているうちに財産をあらかじめ渡す方法です。 相続税対策や、早めの財産移転として用いられます。

■ 贈与の意義

  • 早めに財産を子に移すことで相続対策になる
  • 住宅購入資金・教育資金など目的別で活用可能
  • 不動産の名義変更にも使われる

■ メリット

  • 自分が元気なうちに財産を渡せる
  • 家族の生活を早期に支援できる
  • 相続税の節税につながることがある

■ デメリット

  • 贈与税の負担が大きい可能性
  • 一度贈与すると取り戻せない
  • 認知症後は贈与ができなくなる

■ まとめ

相続税対策や、早期の財産移転をしたい家庭向きですが、税務リスクがあるため慎重な判断が必要です。税理士先生とのご協議が必要になります。

5. 4制度の違いを比較 ― 目的によって“選ぶべき制度”が変わる

制度使うタイミング目的柔軟性認知症対策
成年後見判断能力低下後保護低い◎(唯一、生後利用可)
家族信託判断能力があるうち管理・凍結防止非常に高い◎(最も有効)
遺言元気なうち死後の承継△(生前管理は不可)
贈与元気なうち生前の財産移転△(認知症後は不可)

この比較からわかるとおり、 認知症対策→家族信託
死後の財産承継→遺言
すでに認知症→成年後見
生前に渡したい→贈与
というシンプルな分岐になります。

6. どの制度を選ぶべきか?行政書士が示す“最適な順番”

実務経験から、次の順番で検討するのが最も確実です。

① 家族信託(認知症対策の軸)

② 遺言(死後の備え)

③ 贈与(相続税や生活支援で補強)

④ 成年後見(すでに認知症の場合の最終手段)

この4つは対立する制度ではなく、むしろ組み合わせることで最大効果を発揮します。


7. まとめ ― 家族を守るために、制度の理解は“最高の備え”になる

成年後見制度・家族信託・遺言・贈与は、それぞれ目的もタイミングも異なります。 制度を正しく理解し、自分の家庭に合った方法を選ぶことが、将来の不安を大きく軽減します。

特に、認知症リスクが高まる今の時代、「家族信託+遺言」は非常に強力な組み合わせです。

もし「どれを選べばよいかわからない」という不安があれば、どうぞお気軽にご相談ください。 ご家族の気持ちに寄り添いながら、最適な制度を一緒に選ぶお手伝いをいたします。

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