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外国人材受入れ制度の「過去」と「今」と「これから」を整理する。

外国人材受入れ制度の「過去」と「今」と「これから」を整理する。

法務省が公表しているデータによると、技能実習制度に係る在留外国人数は456,595人にのぼっています。
その職種別内訳を見ると、以下の分野が大きな割合を占めています。

  • 建設関係:23.3%
  • 食品製造関係:20.3%
  • 機械・金属関係:13.3%

(※その他の職種を除外した場合)

これらはいずれも、日本国内で慢性的な人手不足が続く産業分野であり、現場を預かる経営者の方々にとって、外国人材はすでに欠かせない存在となっています。一方で、技能実習制度は本来、「国際貢献」を目的として創設された制度であることを、あらためて押さえておく必要があります。日本の産業現場で技能を修得してもらい、その成果を母国に持ち帰り、母国の産業発展に寄与してもらう――これが、制度本来の趣旨でした。しかし、制度がスタートした当時の目的と、現在の運用実態との間には、少しずつズレが生じてきました。
現実には、人手不足が深刻な産業分野において、労働力の補完として技能実習制度が活用されてきた側面も否定できません。

このように、

  • 建前としての「国際貢献」
  • 実態としての「人材不足への対応」

という、ある意味でねじれた構造の中で制度が運用されてきた過程において、人権問題や不適切な管理、違法な運用といった問題が社会的に強く指摘されるようになりました。

こうした背景を踏まえ、
**時代の要請として生まれたのが「育成就労制度」**であると言えるでしょう。
技能の修得と就労を、より現実に即した形で整理し直す――
その必要性が、いま強く求められるようになってきたのです。

技能実習修了後の「二つの進路」

技能実習生の方々は、実習期間を終えた後、主に次の二つの選択肢を持つことになります。

  1. 母国へ帰国し、習得した技能を活かして産業発展に貢献する
  2. 日本に残り、「特定技能1号」へ在留資格を移行し、最長5年間就労する

近年、後者を選択する方が着実に増えており、
特定技能1号の在留者数が増加している大きな要因の一つと考えられています。

2027年開始「育成就労制度」と国の受入れ見込み

2027年4月1日から、いよいよ育成就労制度が施行されます。
これに伴い、技能実習制度は経過措置期間を経て、2030年頃までに発展的に終了する予定です。

国の想定では、令和10年度末までの受入れ見込数は約123万人

  • 特定技能外国人:約80万5,700人
  • 育成就労外国人:約42万6,200人

育成就労制度は、特定技能への移行を前提とした制度設計となっているため、
今後、特定技能外国人の数はさらに増加していくことが予想されています。

特定技能制度における「特定産業分野」の位置づけの変遷

1.制度創設時(2019年4月1日施行)

特定技能制度は、2019年4月1日施行の出入国管理及び難民認定法改正により創設されました。
この時点では、特定技能1号の受入れ分野は12分野に限定されていました。

この制度設計の基本的考え方は、次の通りでした。

  • 国内人材の確保を行ってもなお人手不足が深刻であること
  • 生産性向上・国内人材確保等の取組を行っていること
  • 当該分野において外国人が即戦力として就労可能であること

つまり、**「深刻な人手不足に直面している産業分野に限定して、一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れる制度」**というのが、
2019年4月時点の制度趣旨ということになります。

2.分野追加・再編(2022年改正)

その後、制度運用の実態や人手不足の拡大を受け、
2022年(令和4年)に関係省令・告示の改正が行われました。

この改正により、

  • 既存分野の整理・統合
  • 新たな業務区分の追加

が行われ、受入れ分野は14分野となりました(※2022年改正省令・告示は段階的に施行)。

この時点で制度は、単なる「人手不足対策」から、

  • 技能実習修了者の受け皿
  • 中長期的な就労・定着を見据えた制度

へと、性格が変化し始めたと言えます。

3.2024~2025年制度再設計(育成就労制度との接続)

さらに大きな転換点となったのが、
**2024年の入管法等改正(公布:2024年、施行:2027年予定のものを含む制度再編)**です。

この流れの中で、

  • 技能実習制度を発展的に解消し
  • 新たに「育成就労制度」を創設
  • 育成就労から特定技能1号・2号へ円滑に移行させる

という制度体系の再構築が進められました。

これに合わせて、

  • 特定技能の産業分野は
    **「育成就労制度との連続性を前提に再整理」**され
  • 業務内容・技能評価の整理・細分化が実施されました。

その結果、
2025年時点では特定技能の対象分野は19分野に拡大しています。

4.現在の特定技能「分野」の正確な位置づけ(重要)

以上を踏まえると、現在の特定技能分野については、次のような解釈になります。

特定技能の「分野」とは、
出入国管理及び難民認定法及び関係省令・告示に基づき、
人材確保が困難であることが制度上確認され、かつ育成就労制度からの円滑な移行を前提として整理された産業分野であり、
当該分野において一定の技能水準が制度的に担保された外国人の就労を認める枠組みである。

もはや単純に
「深刻な人手不足に直面している分野だから」
という説明だけでは不十分で、

  • 制度間の接続(育成就労 → 特定技能)
  • 業務内容の明確化・再編
  • 長期就労・定着を見据えた設計

を含む、**制度的・構造的な整理の結果としての「分野」**である点がポイントとなります。

「分野」「業務区分」「職種」「作業名」が混同して分かりにくくなる理由

ここで、多くの企業や支援担当者が戸惑うポイントがあります。

  • 技能実習制度:職種・作業
  • 特定技能制度:分野業務区分
  • 育成就労制度:分野(特定技能と共通概念)※但し、一部分野は特定技能のみ対象で、育成就労は対象外のものもあります。

制度ごとに用語や考え方が異なるため、
「同じ仕事なのに、制度が変わると呼び方も考え方も変わる」
という状況が生まれています。

今後、育成就労制度への移行により、
特定技能制度と育成就労制度では「分野」が共通概念として運用されることが想定されています。

この移行期こそ、
✔ 制度を正しく理解する
✔ 自社業務がどの分野に該当するのか整理する
✔ 将来を見据えた受入れ計画を立てる

ことが、これまで以上に重要になってきます。

制度を「知る」ことが、経営の安心につながる

外国人材の受入れ制度は、今まさに大きな転換期にあります。
制度の名称や区分に振り回されるのではなく、
**「何のための制度なのか」「どこへ向かおうとしているのか」**を理解することが、経営の安心につながります。

制度の整理や実務対応でお悩みの際は、
現場感覚と制度理解の両面から、丁寧に伴走する専門家に相談することも一つの選択肢です。

職種・作業別 在留資格「技能実習」に係る在留者数(令和6年末時点:456,595人)法務省ホームページより引用

分野(大分類)職種名作業名在留者数(作業別)在留者数(職種計)
1 農業・林業関係 (31,635人)耕種農業●施設園芸13,95025,640
畑作・野菜11,141
果樹549
畜産農業●養豚1,2395,995
養鶏2,083
酪農2,673
林業育林・素材生産作業00
2 漁業関係 (3,352人)漁船漁業●かつお一本釣り漁業3211,485
延縄漁業49
いか釣り漁業110
まき網漁業555
ひき網漁業247
刺し網漁業35
定置網漁業118
かに・えびかご漁業49
棒受網漁業△1
養殖業●ほたてがい・まがき養殖1,8671,867
3 建設関係 (106,568人)さく井パーカッション式さく井工事116504
ロータリー式さく井工事388
建築板金ダクト板金9882,574
内外装板金1,586
冷凍空気調和機器施工冷凍空気調和機器施工945945
建具製作木製建具手加工318318
建築大工大工工事4,5194,519
型枠施工型枠工事13,15713,157
鉄筋施工鉄筋組立て10,74310,743
とびとび30,62730,627
石材施工石材加工248493
石張り245
タイル張りタイル張り893893
かわらぶきかわらぶき500500
左官左官3,7993,799
配管建築配管3,3634,318
プラント配管955
熱絶縁施工保温保冷工事1,6181,618
内装仕上げ施工プラスチック系床仕上げ工事5005,873
カーペット系床仕上げ工事216
鋼製下地工事852
ボード仕上げ工事3,519
カーテン工事786
サッシ施工ビル用サッシ施工529529
防水施工シーリング防水工事3,9993,999
コンクリート圧送施工コンクリート圧送工事919919
ウェルポイント施工ウェルポイント工事3737
表装壁装905905
建設機械施工●押土・整地39918,954
積込み878
掘削13,004
締固め4,673
築炉築炉344344
4 食品製造関係 (92,627人)缶詰巻締●缶詰巻締601601
食鳥処理加工業●食鳥処理加工4,5504,550
加熱性水産加工食品製造業●節類製造5556,336
加熱乾製品製造1,076
調味加工品製造4,627
くん製品製造78
非加熱性水産加工食品製造業●塩蔵品製造7,29116,511
乾製品製造2,354
発酵食品製造938
調理加工品製造550
生食用加工品製造5,378
水産練り製品製造かまぼこ製品製造1,4601,460
牛豚食肉処理加工業●牛豚部分肉製造3,5113,541
牛豚精肉商品製造△30
ハム・ソーセージ・ベーコン製造ハム・ソーセージ・ベーコン製造2,6922,692
パン製造パン製造6,3456,345
そう菜製造業●そう菜加工45,43545,435
農産物漬物製造業●△農産物漬物製造765765
医療・福祉施設給食製造●△医療・福祉施設給食製造4,3914,391
5 繊維・衣服関係 (26,086人)紡績運転●前紡工程76772
精紡工程228
巻糸工程31
合ねん糸工程437
織布運転●準備工程1821,264
製織工程1,065
仕上工程17
染色糸浸染187715
織物・ニット浸染528
ニット製品製造靴下製造265354
丸編みニット製造89
たて編ニット生地製造●たて編ニット生地製造186186
婦人子供服製造婦人子供既製服縫製17,06817,068
紳士服製造紳士既製服製造1,2361,236
下着類製造●下着類製造974974
寝具製作寝具製作435435
カーペット製造●△織じゅうたん製造1189
タフテッドカーペット製造22
ニードルパンチカーペット製造166
帆布製品製造帆布製品製造962962
布はく縫製ワイシャツ製造242242
座席シート縫製●自動車シート縫製1,6891,689
6 機械・金属関係 (60,781人)鋳造鋳鉄鋳物鋳造2,4143,487
非鉄金属鋳物鋳造1,073
鍛造ハンマ型鍛造125405
プレス型鍛造280
ダイカストホットチャンバダイカスト1441,683
コールドチャンバダイカスト1,539
機械加工普通旋盤2,06510,956
フライス盤1,747
数値制御旋盤3,887
マシニングセンタ3,257
金属プレス加工金属プレス9,0829,082
鉄工構造物鉄工5,5605,560
工場板金機械板金4,0514,051
めっき電気めっき2,4042,975
溶融亜鉛めっき571
アルミニウム陽極酸化処理陽極酸化処理440440
仕上げ治工具仕上げ2782,332
金型仕上げ296
機械組立仕上げ1,758
機械検査機械検査6,2906,290
機械保全機械系保全1,9311,931
電子機器組立て電子機器組立て8,1218,121
電気機器組立て回転電機組立て3422,292
変圧器組立て75
配電盤・制御盤組立て1,187
開閉制御器具組立て323
回転電機巻線製作365
プリント配線板製造プリント配線板設計71,104
プリント配線板製造1,097
アルミニウム圧延・押出製品製造●△引抜加工228
仕上げ26
金属熱処理業●全体熱処理2544
表面熱処理(浸炭・浸炭窒化・窒化)9
部分熱処理(高周波熱処理・炎熱処理)10
7 その他 (127,617人)家具製作家具手加工2,3332,333
印刷オフセット印刷1,3151,753
グラビア印刷●△438
製本製本1,9791,979
プラスチック成形圧縮成形1,78020,066
射出成形16,326
インフレーション成形727
ブロー成形1,233
強化プラスチック成形手積み積層成形898898
塗装建築塗装3,82014,471
金属塗装6,211
鋼橋塗装648
噴霧塗装3,792
溶接●手溶接3,78523,065
半自動溶接19,280
工業包装工業包装16,42316,423
紙器・段ボール箱製造印刷箱打抜き7082,388
印刷箱製箱468
貼箱製造220
段ボール箱製造992
陶磁器工業製品製造●機械ろくろ成形57262
圧力鋳込み成形54
パッド印刷151
自動車整備●自動車整備5,8185,818
ビルクリーニングビルクリーニング8,2278,227
介護●介護20,06520,065
リネンサプライ●△リネンサプライ仕上げ2,9712,971
コンクリート製品製造●コンクリート製品製造2,2262,226
宿泊●△接客・衛生管理2,4032,403
RPF製造●RPF製造143143
鉄道施設保守整備●軌道保守整備114114
ゴム製品製造●△成形加工1,3151,695
押出し加工210
混練り圧延加工121
複合積層加工49
鉄道車両整備●走行装置検修・解ぎ装1818
空気装置検修・解ぎ装0
木材加工●△機械製材299299
8 主務大臣が告示で定める職種 (106人)空港グランドハンドリング●航空機地上支援0105 (※)
航空貨物取扱55
客室清掃△50
ボイラーメンテナンス●△ボイラーメンテナンス11
9 非移行対象職種 (7,823人)該当なし該当なし7,823

※本記事は制度の概要と背景を一般的に解説したものです。具体的な在留資格の取得・変更は、最新の公表情報と個別事情に基づいて確認してください。

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特定行政書士 中川正明

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