【行政書士が解説/試験にも直結】
衆議院解散・総選挙・首相指名までの法的構造
― 行政書士試験の重要論点として押さえるべき「統治機構」の核心 ―
※本稿は、
「高市早苗首相が、令和8年1月14日夕、首相官邸で与党幹部と会談し、同年1月23日に召集される通常国会で早期に衆議院解散を行う意向を伝えた」
という報道を素材に、衆議院解散の法的根拠、誰が解散を行い、誰がその権限を持つのか、解散後の総選挙、内閣総理大臣が任命されるまでの流れを、憲法・国会法・公職選挙法の条文に即して整理するものです。
あわせて本稿では、
👉 これらの論点が「行政書士試験(憲法・統治機構分野)」において、なぜ重要なのか
という視点も明示します。
政治ニュースの解説であると同時に、受験生・実務家双方に役立つ制度整理としてお読みください。
1.なぜこのテーマは行政書士試験の重要論点なのか
行政書士試験の憲法分野、とりわけ統治機構では、毎年のように次の点が問われます。
- 天皇の国事行為とは何か
- 行政権は誰に属するのか
- 内閣総理大臣はどのように選ばれるのか
- 衆議院解散の法的性質は何か
これらはすべて、衆議院解散という一つのテーマの中に集約されています。
つまり本テーマは、
「統治機構を点ではなく、流れとして理解しているか」
を試す、行政書士試験における最重要論点の一つなのです。
2.衆議院解散の法的根拠 ― 日本国憲法はどう定めているか
衆議院解散について、まず押さえるべき条文は次の二つです。
(1)憲法第7条 ― いわゆる「7条解散」
日本国憲法 第7条
天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために左の国事行為を行ふ。
三 衆議院を解散すること。
ここから導かれる試験的ポイントは明確です。
- 衆議院解散は天皇の国事行為
- ただし、内閣の助言と承認が不可欠
- 天皇に政治的裁量はない
👉 「天皇=行為主体」「政治判断なし」
これは、試験で狙われやすい定型論点です。
(2)憲法第69条 ― 不信任決議と解散・総辞職
日本国憲法 第69条
内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。
ここでは、
- 解散は「自動」ではない
- 解散か総辞職かを選ぶのは内閣
という点が重要です。
行政書士試験では、
👉 「69条があっても、解散権限の主体は変わらない」
という理解が求められます。
3.誰が衆議院を解散するのか ― 行為主体と権限主体の分離
ここは、試験でも実務でも混乱しやすい最重要ポイントです。
(1)解散という「行為」を行うのは誰か
👉 天皇です。
根拠は、憲法第7条。
この点は、本試験問題でも繰り返し問われています。
(2)解散を「決める権限」を持つのは誰か
次に問われるのが、実質的な決定権者です。
日本国憲法 第65条
行政権は、内閣に属する。
衆議院解散は、国政運営に関わる高度な政治判断であり、行政権の一部です。
よって、解散を決める権限は内閣にあります。
さらに、
日本国憲法 第66条 第1項
内閣は、法律の定めるところにより、その首長として内閣総理大臣を置く。
内閣の首長は内閣総理大臣。
したがって、実務上は首相主導で解散判断がなされることになります。
(3)試験で使える一発整理(超重要)
| 観点 | 主体 | 根拠条文 |
|---|---|---|
| 解散を決める | 内閣(実質:首相) | 憲法65条・66条 |
| 解散を行う | 天皇 | 憲法7条 |
| 天皇の性質 | 政治責任なし・形式行為 | 憲法4条・7条 |
👉 「天皇が解散を行い、内閣が責任を負う」
これは行政書士試験の模範整理です。
4.通常国会召集と「召集直後の解散」
(1)通常国会の召集根拠
日本国憲法 第52条
国会の常会は、毎年一回これを召集する。
国会法 第10条
常会は、毎年一月中に召集するのを常例とする。
(2)召集直後の解散は可能か
結論:可能です。
- 通常国会を何日以上開くべき、という規定は存在しない
- よって、召集直後の解散を禁じる法令はない
この点も、試験で「正誤問題」として出やすい論点です。
5.衆議院解散後、総選挙までの法的枠組み
(1)憲法第54条 ― 総選挙と国会召集の期限
日本国憲法 第54条 第1項
衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から三十日以内に、国会を召集しなければならない。
ここは、
- 「以内」という上限規定
- 下限は定められていない
という点が試験的に重要です。
(2)公示期間12日は短縮不可(頻出論点)
衆議院総選挙については、
- 選挙期日の少なくとも12日前に公示
という公職選挙法上の強行規定があります。
👉 この12日は短縮不可
ここを誤ると、憲法54条との関係で混乱し、試験でも失点しやすくなります。
6.地方選挙との違い ― ここも試験頻出
(1)地方選挙には原則「解散」がない
地方自治体では、
- 首長
- 地方議会
ともに、任期満了選挙が原則です。
国政のような自由な解散制度は存在しません。
(2)衆議院総選挙は「政権選択選挙」
衆議院では、
- 解散
- 総選挙
- 首班指名
が一体となり、政権そのものを選択します。
👉 国政と地方の制度的差異は、行政書士試験でも定番テーマです。
7.総選挙後、内閣総理大臣はどう決まるのか
(1)首相指名は国会が行う
日本国憲法 第67条 第1項
内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。
この指名は、他のすべての案件に先だつて、これを行ふ。
👉 首班指名は最優先案件
これも試験頻出条文です。
(2)衆議院の優越
日本国憲法 第67条 第2項
両議院の議決が異なった場合には、衆議院の議決が国会の議決となる。
この規定があるため、
衆議院総選挙=政権選択
となります。
(3)天皇による任命
日本国憲法 第6条 第1項
天皇は、国会の指名に基づいて、内閣総理大臣を任命する。
8.まとめ ― 実務にも試験にも通用する理解とは
衆議院解散という一つのテーマには、
- 天皇の国事行為
- 内閣の行政権
- 国会の優越構造
- 選挙制度
- 首班指名
という、行政書士試験・憲法分野の重要論点がすべて含まれています。
ニュースを素材にしながら条文に立ち返ることで、
- 試験対策としての理解
- 実務家としての説明力
の両方を高めることができます。
特定行政書士として、そして受験指導にも関わってきた立場から、
「統治機構は暗記ではなく、流れで理解する」
ことの大切さを、今後も発信していきたいと思います。
