経理・総務・財務の業務効率化|人手不足を仕組みで解決する方法
経理・総務・財務の業務効率化
人手不足を「頑張り」ではなく「仕組み」で解決する方法
「毎月、同じ資料を作るために何時間もかかっている」 「売上や入金の数字を、複数のExcelへ何度も転記している」 「担当者にしか分からない仕事が多く、休まれると業務が止まってしまう」。 こうした悩みは、企業規模や業種を問わず、多くの会社で起きています。 本記事では、経営者や経理・総務・財務担当者に向けて、 日常業務を無理なく効率化し、経営判断にも役立つ仕組みへ変える方法を解説します。
1.忙しいのに、なぜ仕事が減らないのか
経理や総務の現場では、毎日きちんと仕事をしているにもかかわらず、 月末や決算期になると残業が増えることがあります。 その原因は、担当者の能力不足ではありません。 多くの場合、長年続けてきた業務の流れそのものに問題があります。
例えば、店舗や営業所からFAXやメールで届いた報告書を見ながらExcelへ入力し、 そのExcelから会議資料へ数字を転記し、さらに会計ソフトへ同じ内容を入力する。 このような業務では、一つの数字を二度、三度と人が入力しています。
同じ情報を繰り返し入力すれば、それだけ時間がかかります。 入力ミスや転記漏れも起こりやすくなります。 間違いを防ぐための確認作業が増え、その確認作業を確認する人まで必要になります。 結果として、担当者は忙しいのに、会社全体の生産性は上がりません。
よく見られる非効率な業務
- 同じ数字を複数のExcelやシステムへ入力している
- FAXや紙の帳票を見ながら手作業で転記している
- 月末になるまで売上や利益の状況が分からない
- 担当者ごとに異なる形式の資料を作成している
- 過去のファイルをコピーして毎月の資料を作っている
- 業務手順が担当者の頭の中にしか残っていない
- Excelの数式やマクロが壊れても修正できる人がいない
業務効率化の第一歩は、担当者に「もっと早く処理してほしい」と求めることではありません。 誰が行っても同じ結果になるように、業務の流れを整理することです。
2.業務効率化は、いきなりシステムを導入することではない
業務効率化やDXという言葉を聞くと、 高額なシステムを導入したり、最新のAIを使ったりすることを想像する方も多いでしょう。 しかし、システムを入れただけで業務が効率化するわけではありません。
現在の業務に重複や無駄が残ったままシステム化すると、 非効率な仕事をそのままデジタルに置き換えるだけになります。 入力項目が多すぎる、確認手順が複雑である、 誰も使っていない帳票を作り続けているといった問題は、 システム導入前に見直さなければなりません。
業務改善は、次の順番で進めることが大切です。
- 現在行っている業務を洗い出す
- 誰が、いつ、何のために行っているかを確認する
- 重複入力、待ち時間、不要な確認作業を見つける
- 業務の手順と帳票をできるだけ統一する
- 人が行う仕事と、自動化する仕事を分ける
- 必要に応じてシステムやAIを導入する
特に重要なのは、「その資料は本当に必要なのか」 「その入力は何の判断に使われているのか」と問い直すことです。 以前は必要だった資料でも、現在は誰も見ていないことがあります。 慣習だけで続けている業務をやめることも、立派な効率化です。
3.経理・総務・財務で効率化しやすい業務
売上管理と日報集計
店舗、営業所、現場ごとに作成された日報を、本部担当者が集計する仕事は、 自動化による効果が出やすい業務です。 日付、部門、売上区分、客数などの入力形式を統一すれば、 日別、月別、店舗別の集計表を自動で作成できます。
集計結果をグラフで表示すれば、売上の増減だけでなく、 客数、客単価、曜日別の傾向なども確認できます。 単に集計時間を短縮するだけでなく、 入力した情報を経営判断に使えるデータへ変えられます。
請求書発行と入金確認
請求書の作成、送付、入金確認、未入金先への連絡を別々の表で管理している場合、 抜けや遅れが起こりやすくなります。 顧客情報、請求内容、入金予定日、入金状況を一つの仕組みで管理すれば、 未入金先や入金期限を一覧で確認できます。
請求書番号や取引先名を毎回手入力する必要もなくなり、 請求漏れや二重請求の防止につながります。 資金繰りを考えるうえでも、 「いつ、いくら入金される予定か」が早く分かることは重要です。
経費精算と証憑管理
紙の領収書を台紙へ貼り、申請書へ記入し、 上司が押印した後に経理担当者が会計ソフトへ入力する流れには、 多くの手作業があります。 申請内容をデータで受け取り、領収書画像と一緒に管理すれば、 確認や検索がしやすくなります。
勤怠・休暇・届出管理
出勤簿、残業申請、有給休暇、各種届出を紙や個別のExcelで管理している会社では、 月末の確認作業に時間がかかります。 申請方法と承認手順を統一し、一覧で確認できるようにするだけでも、 総務担当者の負担は大きく減ります。
会議資料と経営報告
売上、原価、人件費、資金繰りなどのデータを毎月集めて会議資料を作る作業も、 効率化の対象になります。 元となるデータを整理し、決まった形式で蓄積すれば、 月次資料やグラフを自動で更新できます。
担当者は資料を作ることに時間を使うのではなく、 「なぜ利益が減ったのか」 「どの部門を改善すべきか」 「来月の資金は足りるのか」を考えることに時間を使えるようになります。
4.AIを使ってFAXやPDFの入力作業を減らす
業務効率化の選択肢として、AIによる文書読取も現実的になっています。 紙の帳票、FAX、PDF、画像などに記載された内容をAIで読み取り、 必要な項目をデータ化する仕組みです。
FAX・PDFを受信 → AIが内容を読み取る → 確認画面で修正する → システムへ登録 → 自動集計・グラフ表示
例えば、各店舗から送られてくる売上日報について、 店舗名、日付、売上金額、客数などをAIで読み取れば、 担当者が一項目ずつ入力する時間を減らせます。
ただし、AIが読み取った内容を無確認で登録することはおすすめできません。 手書き文字、FAXのかすれ、帳票形式の違いなどにより、 読取結果が誤る可能性があるからです。
実務では、AIが読み取った結果をいったん確認画面に表示し、 人が店舗名、日付、金額、件数を確認・修正してから登録する仕組みが安全です。 AIにすべてを任せるのではなく、 AIと人がそれぞれ得意な部分を分担することが重要です。
5.入力したデータを、経営判断に役立てる
業務システムの価値は、入力時間を減らすことだけではありません。 日々蓄積したデータを整理し、会社の状態を見えるようにすることにあります。
売上管理を例にすると、単なる月間売上の合計だけでなく、 次のような情報を確認できる仕組みが考えられます。
- 店舗別、部門別、商品別の売上
- 日別、月別、曜日別の売上推移
- 客数と客単価の変化
- 平日と休日の比較
- 前年同月との比較
- 直近12か月の売上を合計する移動年計
- 時間帯別の来店数や利用件数
特に移動年計は、季節による売上の変動をならし、 長期的に業績が上向いているのか、下向いているのかを確認するのに役立ちます。 月単位の数字だけでは見落としやすい変化を把握できます。
また、売上を客数で割った客単価を確認すれば、 売上が増えた理由が「お客様が増えたから」なのか、 「一人当たり、または一組当たりの利用額が増えたから」なのかを判断できます。
数字を入力して終わりにするのではなく、 原因を考え、次の行動につなげられる状態にすることが、 財務や経理の情報を経営に生かすということです。
6.既製品が合わない場合は、会社に合わせたシステムを作る
業務を効率化する方法として、市販のクラウドサービスを導入する選択肢があります。 多くの会社で利用されているサービスは、導入しやすく、 法改正や機能更新にも対応しているという利点があります。
一方で、既製品がすべての会社に合うわけではありません。 必要のない機能が多い、入力項目を変更できない、 現在の帳票と合わない、複数のサービスへ同じ情報を入力しなければならないなど、 業務とのずれが生じることがあります。
そのような場合は、会社の業務に合わせた小規模なシステムを開発する方法があります。 大規模な基幹システムでなくても、 特定の業務に絞ったシンプルな仕組みで十分なことも少なくありません。
例えば、ブラウザでHTMLファイルを開くだけで利用できる売上管理システムであれば、 専用ソフトをインストールせずに運用できます。 日々の売上や客数を入力し、期間集計、売上推移、客単価、 時間帯別実績、移動年計などを画面上で確認することも可能です。
また、過去にMicrosoft Accessで管理していたデータをCSV形式で取り込み、 新しい仕組みに引き継ぐことも考えられます。 古いシステムに蓄積された情報を捨てるのではなく、 活用しながら段階的に移行できます。
ご提案できるシステムの例
- 売上・客数・客単価管理システム
- 顧客・案件・契約期限管理システム
- 請求・入金・未収金管理システム
- 経費・予算・資金繰り管理システム
- 勤怠・休暇・届出管理システム
- 在庫・発注・納品管理システム
- 許認可・更新期限・提出書類管理システム
- 外国人材・在留期限・支援記録管理システム
- FAX・PDF・画像のAI読取システム
- 経営会議用ダッシュボード
大切なのは、最初から多くの機能を盛り込まないことです。 まず、最も時間がかかっている業務や、 ミスが発生しやすい業務を一つ選びます。 そこで効果を確認してから、必要に応じて対象を広げる方が、 費用と現場の負担を抑えられます。
7.システム開発の前に確認したいこと
システムは、作れば必ず使われるわけではありません。 現場の担当者が迷わず使えること、 入力や確認の手間が本当に減ることが必要です。
開発前には、少なくとも次の点を確認します。
- 現在、誰がどのような手順で処理しているか
- 一か月に何件、何時間かかっているか
- どのようなミスや手戻りが起きているか
- 入力した情報を誰が何に利用しているか
- 既存のExcel、CSV、Accessなどを引き継ぐ必要があるか
- 一人で使うのか、複数拠点や複数担当者で使うのか
- バックアップや権限管理をどこまで必要とするか
一台のパソコンだけで使う簡易的な仕組みと、 複数拠点から同時に利用するクラウド型システムでは、 必要な構成や費用が異なります。 将来の運用も含めて整理することが大切です。
8.業務効率化の目的は、人を減らすことではない
業務効率化というと、人員削減のための取り組みだと受け取られることがあります。 しかし、本来の目的は、限られた人材と時間を、 より価値の高い仕事へ振り向けることです。
数字の転記や単純集計を減らせば、 経理担当者は異常値の確認、資金繰りの検討、利益改善の提案に時間を使えます。 総務担当者は、書類整理だけでなく、 従業員が働きやすい環境づくりに取り組めます。
経営者にとっても、必要な数字を早く確認できるようになれば、 経験や勘だけに頼らず、客観的な情報をもとに判断できます。 問題が大きくなってから気づくのではなく、 小さな変化の段階で対応できるようになります。
そして、業務が特定の担当者だけに依存しなくなれば、 休暇や退職の際にも会社の業務が止まりにくくなります。 業務効率化は、担当者を楽にするだけでなく、 会社の継続性を高める取り組みでもあります。
9.まずは小さな業務から始める
業務改善は、一度にすべてを変える必要はありません。 むしろ、最初から全社的な改革を進めようとすると、 現場の抵抗が強くなり、途中で止まる可能性があります。
まずは、「毎月半日かかっている集計」 「入力ミスが多い帳票」 「担当者しか作れない資料」など、 効果を確認しやすい業務を一つ選びます。
現状の作業時間を確認し、改善後にどのくらい短縮されたかを測定します。 月に10時間減らせれば、年間では120時間です。 その時間を顧客対応、営業、資金繰り、社内改善に使うことができます。
小さな成功を積み重ねることで、 現場にも「改善すれば仕事が楽になる」という実感が生まれます。 それが次の改善へ進む力になります。
まとめ
経理、総務、財務の業務には、 長年の慣習や担当者の努力によって支えられている仕事が数多くあります。 しかし、人手不足が進む中で、 これまでと同じ方法を続けることには限界があります。
必要なのは、担当者に一層の努力を求めることではありません。 業務を見える化し、不要な作業をなくし、 重複入力や転記を減らす仕組みをつくることです。
Excelの整理だけで改善できることもあれば、 AIによる文書読取や、会社独自の業務システムが必要なこともあります。 大切なのは、流行の技術を導入することではなく、 自社の業務と課題に合った方法を選ぶことです。
現場の業務を理解したうえで、 財務、経理、総務、経営の視点から改善を考えることで、 単なる作業時間の短縮にとどまらず、 経営に役立つ仕組みへ変えていくことができます。
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