「在留資格の変更、在留期間の変更」と「上陸許可条件」

在留資格の変更、在留期間の変更

在留資格の変更や在留期間の変更許可については、下記の「在留資格の変更、在留期間の変更許可のガイドライン」において、①在留資格該当性(客観的類型的判断)と、②上陸基準適合性または上陸基準省令適合性(客観的個別的判断)に加えて、③適当と認める相当の理由があるか否かの判断広義の相当性)を含めて総合的に判断するとしています。総合的に判断するという中身は、全てが適合していても不許可となることを否定するものではない点に留意が必要です。また、この「広義の相当性」は、さらに、下記の項目を「狭義の相当性」としてガイドラインに細分化され明記されています。これを根拠づける法令は、入管法第20条第3項、第21条3項がそれにあたりますので引用条文を参照ください。

【狭義の相当性】

  • 現に有する在留資格に応じた活動を行っていたこと
  • 素行が不良でないこと
  • 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
  • 雇用・労働条件が適正であること
  • 納税義務を履行していること
  • 入管法に定める届出等の義務を履行していること

「在留資格の変更、在留期間の変更許可のガイドライン」

在留資格の変更及び在留期間の更新は、出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)により、法務大臣が適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り許可することとされており、この相当の理由があるか否かの判断は、専ら法務大臣の自由な裁量に委ねられ、申請者の行おうとする活動、在留の状況、在留の必要性等を総合的に勘案して行っているところ、この判断に当たっては、以下のような事項を考慮します。
 ただし、以下の事項のうち、の在留資格該当性については、許可する際に必要な要件となります。また、の上陸許可基準については、原則として適合していることが求められます3以下の事項については、適当と認める相当の理由があるか否かの判断に当たっての代表的な考慮要素であり、これらの事項にすべて該当する場合であっても、すべての事情を総合的に考慮した結果、変更又は更新を許可しないこともあります。
 なお、社会保険への加入の促進を図るため、平成22(2010)年4月1日から申請時に窓口において健康保険証の提示を求めています。
(注)令和6年12月2日、健康保険証の発行が廃止されることから、同日以降、健康保険証を所持していない者については、スマートフォン等によるマイナポータルの「資格情報」画面の提示、「資格情報のお知らせ」又は「資格確認書」の提示を求めます。
 なお、健康保険証等を提示できないことで在留資格の変更又は在留期間の更新を不許可とすることはありません。

1 行おうとする活動が申請に係る入管法別表に掲げる在留資格に該当すること
 申請人である外国人が行おうとする活動が、入管法別表第一に掲げる在留資格については同表の下欄に掲げる活動、入管法別表第二に掲げる在留資格については同表の下欄に掲げる身分又は地位を有する者としての活動であることが必要となります。

2 法務省令で定める上陸許可基準等に適合していること
 法務省令で定める上陸許可基準は、外国人が日本に入国する際の上陸審査の基準ですが、入管法別表第1の2の表又は4の表に掲げる在留資格の下欄に掲げる活動を行おうとする者については、在留資格変更及び在留期間更新に当たっても、原則として上陸許可基準に適合していることが求められます。 
 また、在留資格「特定活動」については「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の規定に基づき同法別表第一の五の表の下欄に掲げる活動を定める件」(特定活動告示)に該当するとして、在留資格「定住者」については「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の規定に基づき同法別表第二の定住者の項の下欄に掲げる地位を定める件」(定住者告示)に該当するとして、上陸を許可され在留している場合は、原則として引き続き同告示に定める要件に該当することを要します  。
 ただし、申請人の年齢や扶養を受けていること等の要件については、年齢を重ねたり、扶養を受ける状況が消滅する等、我が国入国後の事情の変更により、適合しなくなることがありますが、このことにより直ちに在留期間更新が不許可となるものではありません。

3 現に有する在留資格に応じた活動を行っていたこと
  申請人である外国人が、現に有する在留資格に応じた活動を行っていたことが必要です。例えば、失踪した技能実習生や、除籍・退学後も在留を継続していた留学生については、現に有する在留資格に応じた活動を行わないで在留していたことについて正当な理由がある場合を除き、消極的な要素として評価されます。

4 素行が不良でないこと
 素行については、善良であることが前提となり、良好でない場合には消極的な要素として評価され、具体的には、退去強制事由に準ずるような刑事処分を受けた行為、不法就労をあっせんするなど出入国在留管理行政上看過することのできない行為を行った場合は、素行が不良であると判断されることとなります。

5 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
 申請人の生活状況として、日常生活において公共の負担となっておらず、かつ、その有する資産又は技能等から見て将来において安定した生活が見込まれること(世帯単位で認められれば足ります。)が求められますが、仮に公共の負担となっている場合であっても、在留を認めるべき人道上の理由が認められる場合には、その理由を十分勘案して判断することとなります。

6 雇用・労働条件が適正であること
 我が国で就労している(しようとする)場合には、アルバイトを含めその雇用・労働条件が、労働関係法規に適合していることが必要です。
 なお、労働関係法規違反により勧告等が行われたことが判明した場合は、通常、申請人である外国人に責はないため、この点を十分に勘案して判断することとなります。

7 納税義務等を履行していること
 納税の義務がある場合には、当該納税義務を履行していることが求められ、履行していない場合には消極的な要素として評価されます。例えば、納税義務の不履行により刑を受けている場合は、納税義務を履行していないと判断されます。
 なお、刑を受けていなくても、高額の未納や長期間の未納などが判明した場合も、悪質なものについては同様に取り扱います。 
 また、国民健康保険料など、法令によって納付することとされているものについて、高額の未納や長期間の未納などが判明した場合も、悪質なものについては同様に取り扱います。

8 入管法に定める届出等の義務を履行していること
 入管法上の在留資格をもって我が国に中長期間在留する外国人の方は、入管法第 19条の7から第19条の13まで、第19条の15及び第19条の16に規定する在留カードの記載事項に係る届出、在留カードの有効期間更新申請、紛失等による在留カードの再交付申請、在留カードの返納、所属機関等に関する届出などの義務を履行していることが必要です。
<中長期在留者の範囲>
 入管法上の在留資格をもって我が国に中長期間在留する外国人で、次の(1)~(5)の いずれにも該当しない人
(1) 「3月」以下の在留期間が決定された人
(2) 「短期滞在」の在留資格が決定された人
(3) 「外交」又は「公用」の在留資格が決定された人
(4)  (1)~(3)の外国人に準じるものとして法務省令で定める人
(5)  特別永住者

入出国在留管理庁のホームページより引用

入管法

(在留資格の変更)
第二十条在留資格を有する外国人は、その者の有する在留資格(これに伴う在留期間を含む。以下第三項まで及び次条において同じ。)の変更(高度専門職の在留資格(別表第一の二の表の高度専門職の項の下欄第一号イからハまでに係るものに限る。)を有する者については、法務大臣が指定する本邦の公私の機関の変更を含み、特定技能の在留資格を有する者については、法務大臣が指定する本邦の公私の機関又は特定産業分野の変更を含み、特定活動の在留資格を有する者については、法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動の変更を含む。)を受けることができる。
2前項の規定により在留資格の変更を受けようとする外国人は、法務省令で定める手続により、法務大臣に対し在留資格の変更を申請しなければならない。ただし、永住者の在留資格への変更を希望する場合は、第二十二条第一項の定めるところによらなければならない。
3前項の申請があつた場合には、法務大臣は、当該外国人が提出した文書により在留資格の変更を適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り、これを許可することができる。ただし、短期滞在の在留資格をもつて在留する者の申請については、やむを得ない特別の事情に基づくものでなければ許可しないものとする。

入出国管理及び難民認定法より一部抜粋

入管法

(在留期間の更新)
第二十一条本邦に在留する外国人は、現に有する在留資格を変更することなく、在留期間の更新を受けることができる。
2前項の規定により在留期間の更新を受けようとする外国人は、法務省令で定める手続により、法務大臣に対し在留期間の更新を申請しなければならない。
3前項の規定による申請があつた場合には、法務大臣は、当該外国人が提出した文書により在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り、これを許可することができる。
4第二十条第四項及び第五項の規定は前項の規定による許可をする場合について、同条第六項の規定は第二項の規定による申請があつた場合について、それぞれ準用する。この場合において、同条第四項第二号及び第三号中「新たな在留資格及び在留期間」とあるのは、「在留資格及び新たな在留期間」と読み替えるものとする。

入出国管理及び難民認定法より一部抜粋

上陸許可の条件

以上が、在留資格の変更や在留期間の変更許可をうけるための条件を考慮するにあたっての法的判断の特徴といえますが、では次にこれを在留資格認定証明書をもって新たに上陸許可を受けるための条件と比較した場合には、その特徴に違いがあることが入管法7条より読み取れとれます。

  • 有効な旅券を所持していること
  • 査証が免除されている場合を除き、旅券に有効な査証をうけていること
  • わが国において行おうとするものとして申請されて活動が虚偽のものでないこと
  • 在留資格該当性、上陸基準適合性(基準省令適合性)のいずれをも有すること
  • 申請された在留期間が法務省令の規定に適合すること
  • 上陸拒否事由に該当しなかったこと・退去強制事由に該当しないこと

以上を満たせば、上陸許可を受けることができるということになり、その法的判断としては、在留資格の変更及び在留期間の更新の条件の場合とは違い、「広義の相当性」や「狭義の相当性」は条文上読み取れないことから、後者の場合に関しては、原則としていずれの「相当性」も考慮されないということになります。

(入国審査官の審査)
第七条入国審査官は、前条第二項の申請があつたときは、当該外国人が次の各号(第二十六条第一項の規定により再入国の許可を受けている者又は第六十一条の二の十五第一項の規定により交付を受けた難民旅行証明書を所持している者については、第一号及び第四号)に掲げる上陸のための条件に適合しているかどうかを審査しなければならない。
一その所持する旅券及び、査証を必要とする場合には、これに与えられた査証が有効であること。
申請に係る本邦において行おうとする活動が虚偽のものでなく、別表第一の下欄に掲げる活動(二の表の高度専門職の項の下欄第二号に掲げる活動を除き、五の表の下欄に掲げる活動については、法務大臣があらかじめ告示をもつて定める活動に限る。)又は別表第二の下欄に掲げる身分若しくは地位(永住者の項の下欄に掲げる地位を除き、定住者の項の下欄に掲げる地位については、法務大臣があらかじめ告示をもつて定めるものに限る。)を有する者としての活動のいずれかに該当しかつ、別表第一の二の表及び四の表の下欄に掲げる活動を行おうとする者については我が国の産業及び国民生活に与える影響その他の事情を勘案して法務省令で定める基準に適合すること(別表第一の二の表の特定技能の項の下欄第一号に掲げる活動を行おうとする外国人については、一号特定技能外国人支援計画が第二条の五第六項及び第七項の規定に適合するものであることを含む。)。
申請に係る在留期間が第二条の二第三項の規定に基づく法務省令の規定に適合するものであること。
四当該外国人が第五条第一項各号のいずれにも該当しないこと(第五条の二の規定の適用を受ける外国人にあつては、当該外国人が同条に規定する特定の事由によつて同項第四号、第五号、第七号、第九号又は第九号の二に該当する場合であつて、当該事由以外の事由によつては同項各号のいずれにも該当しないこと。以下同じ。)。
2前項の審査を受ける外国人は、同項に規定する上陸のための条件に適合していることを自ら立証しなければならない。この場合において、別表第一の二の表の高度専門職の項の下欄第一号イからハまで又は同表の特定技能の項の下欄第一号若しくは第二号に掲げる活動を行おうとする外国人は、前項第二号に掲げる条件に適合していることの立証については、次条第一項に規定する在留資格認定証明書をもつてしなければならない。
3法務大臣は、第一項第二号の法務省令を定めようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長と協議するものとする。
4入国審査官は、第一項の規定にかかわらず、前条第三項各号のいずれにも該当しないと認める外国人が同項の規定による個人識別情報の提供をしないときは、第十条の規定による口頭審理を行うため、当該外国人を特別審理官に引き渡さなければならない。

入出国管理及び難民認定法より一部抜粋

したがって、不幸にして何らかの事情により、在留資格の変更や在留期間の変更許可を認めてもらえなかった場合において、一度、本国へ帰還後、再度、在留資格認定証明書をもって新たに上陸許可を受けることができれば、やり直しがきくという考え方ができる余地があると解釈できることになります。

行政書士中川まさあき事務所