自筆証書遺言・公正証書遺言・遺産分割協議書の違いと書き方例|福井の行政書士が解説
遺言書と遺産分割協議書は何が違うのか
相続対策を考えるとき、多くの方が迷われるのが、自筆証書遺言、公正証書遺言、そして遺産分割協議書の違いです。
いずれも相続財産の承継に関わる重要な書類ですが、作成するタイミングも、作成者も、法的な意味も異なります。
- 自筆証書遺言:本人が生前に自分で作成する遺言書
- 公正証書遺言:公証人が関与して生前に作成する遺言書
- 遺産分割協議書:相続開始後に相続人全員で作成する合意書
遺言書は、亡くなる方ご本人の意思を残す書類です。
一方、遺産分割協議書は、亡くなった後に相続人全員で「誰が何を相続するか」を話し合って決める書類です。
この記事では、福井県で相続・遺言相談を受ける行政書士の視点から、自筆証書遺言、公正証書遺言、遺産分割協議書の違いと基本例を、実務で参考にしやすい形で解説します。
1. 自筆証書遺言とは
自筆証書遺言とは、遺言者本人が、遺言書の全文・日付・氏名を自書し、押印して作成する遺言書です。
民法968条では、自筆証書遺言について、遺言者が全文、日付、氏名を自書し、押印しなければならないと定めています。ただし、財産目録については自書でなくてもよい扱いがあります。
自筆証書遺言のメリット
- 費用を抑えられる
- 思い立ったときに作成できる
- 内容を秘密にしやすい
- 証人が不要
自筆証書遺言の注意点
- 形式不備で無効になる可能性がある
- 財産の記載が曖昧だと手続きで困る
- 自己保管では紛失・改ざん・隠匿のリスクがある
- 法務局保管制度を利用しない場合、家庭裁判所の検認が必要
裁判所は、遺言書を保管している人や発見した相続人は、遺言者の死亡後、遅滞なく家庭裁判所に提出して検認を請求しなければならないと案内しています。ただし、公正証書遺言や法務局保管制度を利用した自筆証書遺言は検認不要です。
自筆証書遺言の基本例
以下は、配偶者に自宅不動産を、長男に預貯金を相続させるシンプルな例です。
遺言書
私は、私の死亡後、私の有する財産について、次のとおり遺言する。
第1条
私は、私の所有する下記不動産を、妻 中●●子(昭和35年●月1日生)に相続させる。
所在 福井県○○市〇〇町〇丁目
地番 〇番〇
地目 宅地
地積 〇〇〇平方メートル
所在 福井県○○市〇〇町〇丁目〇番地〇
家屋番号 〇番〇
種類 居宅
構造 木造瓦葺2階建
床面積 1階〇〇平方メートル、2階〇〇平方メートル
第2条
私は、下記預貯金を、長男 中●●郎(昭和60年●月1日生)に相続させる。
〇〇銀行 〇〇支店 普通預金 口座番号 1○○○○7
第3条
本遺言に記載のない財産については、妻 中●●子に相続させる。
第4条
私は、本遺言の遺言執行者として、長男 中●●郎を指定する。
令和〇年〇月〇日
福井県○○市〇〇町〇丁目〇番〇号
遺言者 中●●郎 印
自筆証書遺言の実務ポイント
- 日付は「令和〇年〇月〇日」と明確に書く
- 「吉日」は避ける
- 不動産は登記事項証明書どおりに記載する
- 預金は金融機関名・支店名・口座種別・口座番号を書く
- 遺言執行者を指定しておくと手続きが進めやすい
2. 公正証書遺言とは
公正証書遺言とは、公証人が関与して作成する遺言書です。
遺言者が公証人に内容を伝え、公証人が法律に沿って文書化します。
公正証書遺言では証人2名の立会いが必要です。日本公証人連合会は、公正証書遺言について、家庭裁判所の検認が不要であり、証人2名の立会いが必要であると説明しています。
公正証書遺言のメリット
- 形式不備による無効リスクが低い
- 原本が公証役場で保管される
- 紛失・改ざん・隠匿の心配が少ない
- 家庭裁判所の検認が不要
- 相続開始後の手続きが進めやすい
公正証書遺言の注意点
- 公証人手数料がかかる
- 証人2名が必要
- 事前に戸籍や不動産資料などの準備が必要
- 内容を完全に秘密にすることは難しい
日本公証人連合会は、公正証書遺言作成に必要な資料として、遺言者と相続人との続柄が分かる戸籍謄本、不動産が含まれる場合の固定資産評価証明書や登記事項証明書などを案内しています。
公正証書遺言の基本例
以下は、公正証書遺言の内容イメージです。実際には公証人が正式な文案を作成します。
令和〇年第〇号
遺言公正証書
本公証人は、遺言者 中●●郎の嘱託により、証人 中●●郎及び山●●郎の立会いのもと、遺言者の口述を筆記し、次のとおりこの証書を作成する。
第1条
遺言者は、遺言者所有の下記不動産を、妻 中●●子に相続させる。
所在 福井県○○市〇〇町〇丁目
地番 〇番〇
地目 宅地
地積 〇〇〇平方メートル
所在 福井県○○市〇〇町〇丁目〇番地〇
家屋番号 〇番〇
種類 居宅
構造 木造瓦葺2階建
床面積 1階〇〇平方メートル、2階〇〇平方メートル
第2条
遺言者は、下記預貯金を、長男 中●●郎に相続させる。
〇〇銀行 〇〇支店 普通預金 口座番号 1○○○7
第3条
遺言者は、前各条に記載した財産以外の一切の財産を、妻 中●●子に相続させる。
第4条
遺言者は、本遺言の遺言執行者として、長男 中●●郎を指定する。
本旨外要件
住所 福井県○○市〇〇町〇丁目〇番〇号
職業 会社役員
遺言者 中●太郎
昭和〇年〇月〇日生
上記遺言者は、本公証人及び証人の面前で本証書の内容を確認し、署名押印した。
公正証書遺言が向いている方
- 不動産を所有している方
- 相続人が複数いる方
- 再婚・前婚の子がいる方
- 会社経営者・個人事業主の方
- 将来の争いをできるだけ防ぎたい方
- 確実性を重視したい方
3. 遺産分割協議書とは
遺産分割協議書とは、相続開始後に、相続人全員で遺産の分け方を話し合い、その合意内容を書面にしたものです。
遺言書がない場合や、遺言書に記載されていない財産がある場合に作成されます。
遺産分割協議書には、相続人全員の署名と実印押印を行い、印鑑証明書を添付するのが一般的です。
遺産分割協議書が必要になる場面
- 遺言書がない場合
- 遺言書に記載されていない財産がある場合
- 相続人全員で遺言と異なる分け方に合意した場合
- 不動産の相続登記をする場合
- 金融機関の相続手続きをする場合
遺産分割協議書の基本例
遺産分割協議書
被相続人 中●●郎(令和〇年〇月〇日死亡、本籍 福井県○○市〇〇町〇丁目〇番地)の相続について、相続人全員は、被相続人の遺産を次のとおり分割することに合意した。
第1条
相続人 中●●子は、次の不動産を取得する。
所在 福井県○○市〇〇町〇丁目
地番 〇番〇
地目 宅地
地積 〇〇〇平方メートル
所在 福井県○○市〇〇町〇丁目〇番地〇
家屋番号 〇番〇
種類 居宅
構造 木造瓦葺2階建
床面積 1階〇〇平方メートル、2階〇〇平方メートル
第2条
相続人 中●●郎は、次の預貯金を取得する。
〇〇銀行 〇〇支店 普通預金 口座番号 1○○○○7
第3条
相続人 中●●郎は、次の預貯金を取得する。
△△銀行 △△支店 普通預金 口座番号 7○○○1
第4条
本協議書に記載のない遺産及び後日判明した遺産については、相続人全員で別途協議する。
以上のとおり、相続人全員による遺産分割協議が成立したので、本書を作成し、各相続人が署名押印のうえ、各1通を保有する。
令和〇年〇月〇日
住所 福井県○○市〇〇町〇丁目〇番〇号
相続人 中●●子 実印
住所 福井県○○市〇〇町〇丁目〇番〇号
相続人 中●●郎 実印
住所 福井県○○市〇〇町〇丁目〇番〇号
相続人 中●●郎 実印
遺産分割協議書の実務ポイント
- 相続人全員で協議する
- 全員の署名・実印押印が必要
- 印鑑証明書を添付する
- 不動産は登記事項証明書どおりに記載する
- 預金は金融機関名・支店名・口座種別・口座番号を記載する
- 後日判明した財産の扱いも定めておく
自筆証書遺言・公正証書遺言・遺産分割協議書の比較
| 項目 | 自筆証書遺言 | 公正証書遺言 | 遺産分割協議書 |
|---|---|---|---|
| 作成時期 | 生前 | 生前 | 相続開始後 |
| 作成者 | 遺言者本人 | 公証人 | 相続人全員 |
| 証人 | 不要 | 2名必要 | 不要 |
| 検認 | 原則必要 | 不要 | 不要 |
| 保管 | 自己保管または法務局 | 公証役場 | 相続人が保管 |
| 費用 | 低い | 公証人手数料あり | 専門家依頼時は費用あり |
| 安全性 | 保管方法により差がある | 高い | 相続人全員の合意が前提 |
どの書類を選ぶべきか
まず相続対策を始めたい方
自筆証書遺言でもよいですが、形式不備を防ぐため専門家チェックがおすすめです。
不動産や事業承継がある方
公正証書遺言が向いています。
すでに相続が発生している方
遺言書がなければ、相続人全員で遺産分割協議書を作成します。
争いを避けたい方
公正証書遺言と遺言執行者の指定を検討すると安心です。
行政書士に相談するメリット
遺言書や遺産分割協議書は、書式だけを真似すればよいものではありません。
相続人関係、財産内容、不動産の表示、遺留分、税務、登記手続きまで見据えて作成する必要があります。
行政書士は、次のような支援が可能です。
- 相続人調査
- 戸籍収集
- 財産目録作成
- 自筆証書遺言の文案作成支援
- 公正証書遺言の準備支援
- 公証役場との調整
- 遺産分割協議書作成支援
- 司法書士・税理士・弁護士との連携
特に福井県では、実家の土地建物、農地、山林、事業用不動産など、相続で分けにくい財産が含まれるケースが多くあります。
早めに書類を整えておくことで、家族の負担を大きく減らすことができます。
まとめ|遺言書と遺産分割協議書は目的が違います
自筆証書遺言、公正証書遺言、遺産分割協議書は、いずれも相続に関わる重要書類です。
ただし、それぞれの役割は異なります。
- 自筆証書遺言は、手軽に作れるが形式不備に注意
- 公正証書遺言は、安全性・確実性が高い
- 遺産分割協議書は、相続開始後に相続人全員で作成する
- 不動産がある場合は、正確な表示が重要
- 遺言執行者を指定すると手続きが進めやすい
相続対策で大切なのは、単に書類を作ることではありません。
残された家族が迷わず、争わず、安心して手続きを進められるように準備することです。
福井県全域対応|遺言書作成・遺産分割協議書作成のご相談受付中
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執筆・監修:中川正明(特定行政書士/申請取次行政書士/宅地建物取引士)|福井県越前市
