寄与分と特別の寄与の違いを行政書士が解説|民法904条と1050条の比較
寄与分と特別の寄与の違いを行政書士が解説
— 民法904条と1050条の比較 —
相続に関する相談の中で、しばしば「寄与分」と「特別の寄与」という言葉が登場します。 一見似たような制度ですが、実は対象者・請求権・法的効果が大きく異なります。 本記事では、民法第904条の2と第1050条をもとに、両者の違いをわかりやすく整理します。
1. 寄与分とは(民法第904条の2)
寄与分とは、共同相続人の中で、被相続人の財産の維持または増加に特別な貢献をした人に、相続分を上乗せして認める制度です。
民法第904条の2(寄与分) 抜粋
共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供、財産上の給付、療養看護その他の方法により、被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした者があるときは、協議で定めた寄与分をその者の相続分に加えることができる。
たとえば、相続人の一人が長年にわたり家業を支えたり、親の介護をして財産の減少を防いだような場合に、「寄与分」を認めて相続分を多くすることができます。
寄与分のポイント
- 対象者:共同相続人に限られる
- 請求方法:相続人間の協議または家庭裁判所の調停・審判
- 効果:相続分が増える(財産の取り分が多くなる)
2. 特別の寄与とは(民法第1050条)
一方の特別の寄与は、平成30年(2018年)の民法改正で新設された制度です。 被相続人の親族(たとえば、相続人でない嫁・婿など)が、無償で療養看護などを行い、財産の維持や増加に貢献した場合に、特別寄与料を請求できる仕組みです。
民法第1050条(特別の寄与) 抜粋
被相続人に対し無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより、被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした被相続人の親族は、相続の開始後、相続人に対し特別寄与料の支払を請求することができる。
たとえば、亡くなった方の介護を長年担ってきた長男の妻(嫁)は、従来は法定相続人でないため報われませんでしたが、この制度により、特別寄与料を相続人に請求できるようになりました。
特別の寄与のポイント
- 対象者:被相続人の親族(相続人でない者を含む)
- 請求方法:相続人に対して金銭(特別寄与料)の支払いを請求
- 効果:相続分ではなく、金銭請求権として発生
3. 寄与分と特別の寄与の違いを比較
| 比較項目 | 寄与分(民法904条の2) | 特別の寄与(民法1050条) |
|---|---|---|
| 対象者 | 共同相続人に限る | 被相続人の親族(相続人以外も可) |
| 貢献内容 | 事業への労務、財産提供、療養看護など | 無償での療養看護や労務提供 |
| 効果 | 相続分が増える(取り分が増加) | 相続人に対して金銭を請求できる |
| 請求時期 | 遺産分割の際に協議・申立て | 相続開始後、相続人へ請求 |
| 調整の仕方 | 相続分に「上乗せ」して配分 | 特別寄与料を相続財産から控除して支払い |
ポイントまとめ:
寄与分は「相続人の中での調整」、特別の寄与は「相続人以外の親族への報い」。 つまり、対象者と請求の仕方が根本的に異なるのです。
4. 実務上の留意点
- 寄与分も特別寄与も、実際には証拠(介護記録・出費明細・証言など)が重要です。
- 特別寄与料を請求する場合は、相続人との話し合いがまとまらないときに家庭裁判所で調停を申し立てることができます。
- 請求できるのは相続開始後であり、時効は3年とされています。
寄与分・特別の寄与は、家族間の努力を公正に評価するための制度です。
ただし、実際の計算や証明は複雑なため、行政書士・弁護士・税理士など専門家の助言を得て進めることが大切です。
※本記事は民法第904条の2および第1050条に基づき作成しています。
寄与分・特別寄与料の具体的な請求や協議については、専門家へご相談ください。
以下省略
