
建設業許可要件の内、常勤役員等(経営業務の管理責任者等)の要件は、建設業法第7条1項に規定され、さらに建設業施行規則第7条において国土交通省令で定める基準としてその基準を細かく規定しています。
まず、建設業法7条において、法人の場合と個人の場合に分けて定義付けされています。①法人(会社)の場合は、常勤役員であるものの内の一人が、②個人の場合は、その代表者やその支配人(会社法に個人経営において支配人として登記できる規定がある)の内の一人が、許可を受けようとする建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する必要がある。ということが要件となっています。ここでの留意点は、許可を受けようとする建設業に関しての経営業務の管理責任者としての経験が必要ということであって、例えば、電気工事業での経営業務経験を違う業種の工事の経営業務経験にあてはめることは出来ないのが原則(例外有:業務の間に関連性が認められる場合は適確性が認められる場合もある。)ということになるので注意が必要といえます。
建設業法
(許可の基準)
第7条
国土交通大臣又は都道府県知事は、許可を受けようとする者が次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならない。1.法人である場合においてはその役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいう。以下同じ。)のうち常勤であるものの一人が、個人である場合においてはその者又はその支配人のうち一人が次のいずれかに該当する者であること。
イ,許可を受けようとする建設業に関し五年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者
建設業法 第7条 抜粋
建設業法施行規則
第七条法第七条第一号の国土交通省令で定める基準は、次のとおりとする。
一次のいずれかに該当するものであること。
イ常勤役員等のうち一人が次のいずれかに該当する者であること。
(1)建設業に関し五年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者
(2)建設業に関し五年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る。)として経営業務を管理した経験を有する者
(3)建設業に関し六年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験を有する者
ロ常勤役員等のうち一人が次のいずれかに該当する者であつて、かつ、財務管理の業務経験(許可を受けている建設業者にあつては当該建設業者、許可を受けようとする建設業を営む者にあつては当該建設業を営む者における五年以上の建設業の業務経験に限る。以下このロにおいて同じ。)を有する者、労務管理の業務経験を有する者及び業務運営の業務経験を有する者を当該常勤役員等を直接に補佐する者としてそれぞれ置くものであること。
(1)建設業に関し、二年以上役員等としての経験を有し、かつ、五年以上役員等又は役員等に次ぐ職制上の地位にある者(財務管理、労務管理又は業務運営の業務を担当するものに限る。)としての経験を有する者
(2)五年以上役員等としての経験を有し、かつ、建設業に関し、二年以上役員等としての経験を有する者
ハ国土交通大臣がイ又はロに掲げるものと同等以上の経営体制を有すると認定したもの。
建設業法施行規則
以上から、経営業務の管理責任者等を整理してまとめると以下のようになります。
常勤役員等のうち一人が次のいずれかに該当する者であること(施行規則7条1号イ)
1)建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者
【該当例】
●建設業を営む法人の役員等(持分会社の業務を執行する社員、株式会社の取締役、指名委員会等設置会社の執行役、組合等の理事等)のとして5年以上の在任期間が謄本等で確認できる場合等
●長期に渡り500万円以下の建設工事を行ってきた個人事業主等で、工事履歴等によりその経験が確認できる場合等
2)建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る。)として経営業務を管理した経験を有する者
【該当例】
●個人商店などで、支配人として登記され5年以上の在任期間が確認できる場合等
●5年以上営業取引上対外的に責任を有する地位(支店長、所長、支配人)にあって、経営業務の執行の経験を有する場合等
●取締役会設置会社である株式会社の場合で、定款に執行役員などの制度の定めがあり、その規定にそって、取締役会決議により特定の者を執行役員として任命し、具体的に権限委譲に関する取締役会決議がなされ、社内的にも組織図などにより指揮命令系統が明確に確認でき、かつ、5年以上の経営業務経験が証明できる場合等
3)建設業に関し6年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務の管理責任者を補助する業務に従事した経験を有する者
【該当例】
●親子経営の建設業を営んでいるような場合で、代表者の妻が、契約書・見積書等作成、資金繰りなど総合的なサポートを6年以上経験して経営業務の管理責任者を補助する業務に従事したと認められる場合等
常勤役員等のうち一人が次のいずれかに該当する者であって、かつ、財務管理の業務経験(許可をうけている建設業者にあっては当該建設業者、許可を受けようとする建設業を営む者にあっては当該建設業を営む者における5年以上の建設業の業務経験に限る。以下このロにおいて同じ。)を有する者、労務管理の業務経験を有する者及び業務運営の業務経験を有する者を、当該常勤役員等を直接補佐する者としてそれぞれ置くものであること (施行規則7条1号ロ)
1)建設業に関し2年以上役員等としての経験を有し、かつ、5年以上役員等又は役員等に次ぐ職制上の地位にある者(財務管理、労務管理又は業務運営の業務を担当するものに限る。)としての経験を有する者
【該当例】
●その建設会社で、2年以上常勤取締役として在任していることが謄本等で確認できる場合で、その者が、役員となる以前に総務部長として業務運営の業務を担当していた期間を含め通算5年以上、財務管理、労務管理、業務運営のいずれかの経験が確認できる場合で、かつ、財務管理・労務管理・業務運営のそれぞれのサポーター役が自社で5年以上の経験がある人で構成されるチームとして存在する場合等
2)5年以上役員等としての経験を有し、かつ、建設業に関し、2年以上役員等としての経験を有する者
【該当例】
●その建設会社で、2年以上常勤取締役として在任していることが謄本等で確認できる場合で、その者が、建設業とは全く縁のない不動産会社の常勤取締役として在任していたことを含め通算して5年以上役員経験が謄本等で確認できるような場合で、かつ、財務管理・労務管理・業務運営のそれぞれのサポーター役が自社で5年以上の経験がある人で構成されるチームとして存在する場合等
国土交通大臣がイ又はロに掲げるものと同等以上の経営体制を有すると認定したもの(施行規則7条1号ハ)
施行規則7条1号イとロのいずれにも該当しないが、国土交通大臣が特に認定した場合はこのハに該当することになる。
【想定される例】
●M&Aなどによる新会社のような場合等
●海外で建設業の豊富な実績があるが、日本の建設業法の経営要件に直接該当しない場合。外国法人が日本法人を設立し、現地法人の経営陣が適切に経営管理を行う体制を整えている場合等
●公共事業の受注実績が多く、公共機関から経営能力の高さを認定されているような場合等
その他、国土交通大臣が認定した場合等