建設業許可における「常勤性」と「兼任」の考え方
—ひとり親方の場合はどうなる?—
建設業許可要件のうち、「人」に関する要件としては次の項目が求められます。
- ① 誠実性を有していること
- ② 欠格要件に該当しないこと
- ③ 経営業務の管理を適切に行える者が常勤していること(経営管理責任者)
- ④ 営業所ごとに専任技術者を置いていること
①②の説明は省略し、ここでは特に複雑になりがちな③と④について整理します。
ひとり親方の場合、③と④を兼ねられるのか?
結論としては、一定の条件を満たす場合は兼任が認められます。
ただし、ポイントとなるのは次の点です。
■ 営業所は「主たる営業所」1か所であること
多くのひとり親方の場合、主たる営業所は本店所在地と一致します。
そして、営業所が1か所だけであれば、その営業所において
- ③ 常勤役員等(経営管理責任者)
- ④ 専任技術者
この両方を兼ねることが可能です。
逆に、従たる営業所がある場合は兼任不可となり、一人では満たせません。
「常勤性」とは何か?—現場に出ずっぱりでも大丈夫?
ひとり親方の方から最も多い質問が、
「現場に出ていて事務所にほとんどいないけれど、常勤扱いになるの?」
という点です。
この点については、行政側の考え方としては
「常勤=毎日営業所にいること」ではありません。
建設業の事業運営において、
営業所を基点として活動していること、そこに常勤の実態があること
これが判断基準となります。
したがって、現場へ直行直帰が多くても、事務所が活動の中心として機能しているのであれば、常勤性が否定されるわけではありません。
他業種との兼任はできるのか?
もう一つ、よく誤解が生じやすいのが「兼任」です。
特に、
- 建築士事務所
- 宅地建物取引業
- その他の許認可を伴う業種
これらと建設業を同じ営業所で行う場合、兼任がどう扱われるかは判断が難しいところです。
■ 基本原則:建設業からみて「同一法人・同一営業所」なら兼任可能
例として、建築士事務所を兼ねている場合は、管理建築士は専任制まで求められないため、建設業の専任技術者と兼任することができます。
■ ただし、宅建業法の「専任の宅地建物取引士」は別
宅建業では専任制が強く求められるため、原則兼任は不可です。
しかし一方で、行政庁によっては、
他業務の従事割合が少なく、実質的に専任と認められる場合には例外的に兼任可とするケースもある
このように、「建設業から見ればOKでも、宅建から見るとNG」ということが起こるため、双方の法律を照らし合わせる必要があります。
ネット上でも「兼任は絶対ダメ」「全然問題ない」など両方の意見が見られますが、これは個別事情で判断が分かれるためです。
結論:許認可は「原則・例外・例外の例外」が当たり前
建設業許可に限らず、許認可には「常勤」「専従」「兼任」「専任」など、似たようでいて違う用語が多く登場します。
また、「主たる営業所」「従たる営業所」「本社」「本店所在地」なども絡み、解釈が非常に複雑になります。
そのため、一概に「できる/できない」と言い切れないケースが多いのです。
判断に迷うときは、行政の窓口へ確認するだけでなく、許認可を専門とする行政書士への事前相談がもっとも確実です。
特にひとり親方の許可取得は、要件の読み違いによる不許可リスクが大きいため、慎重な準備が必要となります。
許認可は複雑ですが、きちんと整理すれば必ず突破できます。
わからないことがあれば、どうか一人で悩まずにご相談ください。
