「2025年の崖」問題

かつて企業や個人が使うコンピュータが誤作動するのではないかという「2000年問題」(Y2K問題、ミレニアム・バグとも呼ばれた)というものがありましたが、今回は、「2025年の崖」問題として定義されている問題について記述したいと思います。

この「2025年の崖」問題と混同されがちなのが、単に「2025年問題」と呼ばれる問題です。
これは日本における高齢化社会の深刻な問題をさし、2025年には国民の5人に1人が後期高齢者となることから医療や介護の需要が急増することなどが懸念されています。

また、国会でも議論されている「年収の壁」(100万、103万、106万、130万、150万、178万、201万など)という問題もあります。今年は、「」という言葉が流行語にノミネートされそうな勢いで巷を駆け巡っているようにも感じますが、「2025年問題」と「年収の壁」の二つの問題は、いずれも「2025年の崖」問題とは別物になりますので区別して考えたいと思います。

2025年の崖」とは、経済産業省がDXレポートにまとめた~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~で示したことが始まりとされているようです。

このDXレポートによれば、「2025年の崖」は以下のように定義付けされています。

多くの経営者が、将来の成長、競争力強化のために、新たなデジタル技術を活用して新たなビジネス・モデルを創出・柔軟に改変するデジタル・トランスフォーメーション(=DX)の必要性について理解しているが・・・
・ 既存システムが、事業部門ごとに構築されて、全社横断的なデータ活用ができなかったり、過剰なカスタマイズがなされているなどにより、複雑化・ブラックボックス化
・ 経営者がDXを望んでも、データ活用のために上記のような既存システムの問題を解決し、そのためには業務自体の見直しも求められる中(=経営改革そのもの)、
現場サイドの抵抗も大きく、いかにこれを実行するかが課題となっている
→ この課題を克服できない場合、DXが実現できないのみでなく、2025年以降、最大現在2020年12兆円/年(現在の約3倍)の経済損失が生じる可能性(2025年の崖)。

経済産業省 DXレポートより引用

つまり、レガシーシステムの問題(古いシステムが複雑化し、維持・運用が困難になる)や、IT人材の不足の問題
(古いシステムを理解する技術者が退職することでシステム保守が困難になる)を解決できなければ2025年以降最大12兆円の損失を招きかねず、日本経済に大打撃を与えかねないという問題です。

これらの懸念を2025年の崖と呼んで定義されているのです。もっとも、このレポートは平成30年9月7日付となっており、今から遡ること7年前に策定された資料のため、AIの社会への浸透も進んでいることや、クラウド化の流れも今後どのように進むかという事も含め当時とはやや勝手が違ってきているかもしれません。

確かに、どの企業においても、それぞれの部署でそれぞれ違ったシステムを導入し、既に歯車が回転している状況下において、立ち止まって考えなおすということは至って困難なことなのかもしれません。

その様な状況を打開するため、補助金等の活用も考えられますが、何よりも、どこから、どのように手をつけていいかという点を専門的な立場で助言できるような機関が必要ではないかと思います。
その意味で、先般参加した講習で知った、ITコーディネータ資格というのは、今後ますます求められる資質といえるかもしれませんし、情報化支援協会などの機関はこのような時代には必然的に求められる機関と位置付けられると思います。

【出典:経済産業省ホームページより】

行政書士中川まさあき事務所