福井県越前市で奮闘中の特定行政書士・申請取次行政書士です。各種許認可、相続、在留資格関連、会社経営、不動産のことでお悩みの方はお気軽にご相談ください。

「前例がない」と言われた時こそ、突破口が見えてきます

「前例がない」と言われた時こそ、突破口が見えてきます

「前例がない」と言われた時こそ、突破口が見えてきます

「前例がない」と言われた時こそ、突破口が見えてきます

行政手続や在留資格の相談をしていると、
ときどき耳にする言葉があります。

「それは前例がありませんね」

この一言を聞いた瞬間、相談者の表情が曇る場面を、私は何度も見てきました。
「やっぱり無理なのか」
「ここで終わりなのか」

しかし、私はこの言葉を聞いたとき、少し違う角度から考えるようにしています。

「前例がない」ということは、まだ誰も本気で整理し、説明し、挑戦していないだけかもしれない

実はここにこそ、突破口が隠れていることが少なくありません。

「前例がない」は「禁止」ではない

まず大切な前提として整理しておきたいことがあります。
「前例がない」という言葉は、必ずしも「できない」「違法である」という意味ではありません。

多くの場合、それは次のような状態を指しています。

  • 過去に同様の申請がほとんどなかった
  • 判断基準が明文化されていない
  • 担当者レベルでは即答しづらい

つまり、「判断材料が不足している」「慎重に見たい」というサインであることが多いのです。

ここを「ダメだ」と早合点してしまうか、
「では、どう説明すれば判断できるのか」と考えるかで、結果は大きく変わります。

制度は「想定外」を排除するためだけにあるのではない

行政制度は、過去の事例や社会状況をもとに作られています。
そのため、新しい働き方、新しいビジネスモデル、個別性の高い人生設計は、どうしても制度の想定外になりがちです。

しかし、制度の目的は「前例のないものを排除すること」ではありません。

本来の目的は、
秩序を守りながら、合理的で公正な判断を行うことです。

であれば、その目的に沿って説明できるのであれば、
前例がないこと自体が、即座にマイナスになるわけではないのです。

突破口は「事実の整理」にあります

前例がないケースで最も重要なのは、感情論でも勢いでもありません。
必要なのは、徹底した事実の整理です。

・実態として何が行われているのか
・報酬はどのように支払われているのか
・責任の所在はどこにあるのか
・継続性、安定性はあるのか

これらを一つひとつ丁寧に言語化し、
制度の趣旨と照らし合わせて説明していく。

派手さはありませんが、この地道な作業こそが、
「判断できる材料」を行政側に提供することにつながります。

「無理に通す」ことが目的ではない

ここで誤解してはいけないのは、
突破口を探すということは、「何が何でも通す」ことではない、という点です。

制度趣旨から明らかに外れている場合や、
リスクが高すぎる場合には、正直に「難しい」と伝える必要があります。

むしろ、前例がないからこそ、
より慎重に、より誠実に向き合う姿勢が求められます。

その上で、「それでも可能性があるかどうか」を冷静に検討する。
これが専門家としての役割だと、私は考えています。

相談者にとっての「希望」をどう扱うか

前例がないケースを相談される方は、たいてい切実です。
生活、仕事、家族、将来――何かを守りたい、つなぎたいという想いがあります。

その想いを、
「前例がないから無理です」の一言で切ってしまうのは簡単です。

しかし、それでは専門家に相談した意味がありません。

私はまず、
「なぜそうしたいのか」「何を実現したいのか」を丁寧に聞くようにしています。

その上で、できること・できないこと、リスク、代替案を含めて、正直に伝える。
希望を煽るのでも、絶望させるのでもなく、現実的な選択肢を一緒に考える。

前例は「誰かが作ってきたもの」

今でこそ「前例がある」と言われている制度や運用も、
最初から前例だったわけではありません。

誰かが悩み、考え、説明し、判断された結果として、
少しずつ積み上がってきたものです。

そう考えると、前例がないという状況は、
未来の前例になる可能性を秘めているとも言えます。

もちろん、すべてが前例になるわけではありません。
しかし、真摯に向き合ったプロセスは、決して無駄にはなりません。

「前例がない」と言われた時の向き合い方

もし、これから「前例がない」と言われる場面に出会ったら、
次の視点を思い出してみてください。

  • それは本当に「禁止」なのか
  • 判断するための材料は揃っているか
  • 制度の目的と照らして説明できているか
  • 無理をしていないか

そして、信頼できる専門家と一緒に、
一つずつ整理していくことが何より大切です。

おわりに

「前例がない」という言葉は、不安を生む一方で、
見方を変えれば、新しい道の入り口でもあります。

制度を大切にし、人を大切にし、
誠実に考え抜いた先にしか、突破口は見えてきません。

私はこれからも、
安易に否定せず、無理に楽観せず、
現実と希望の間で、一緒に考える行政書士でありたいと思っています。

「前例がない」と言われた時こそ、
立ち止まり、整理し、可能性を探る。
その姿勢が、次の一歩につながると信じています。

特定行政書士 中川正明

この記事をシェアする

記事一覧へ戻る

関連記事 Relation Entry