外国人との共生は日本を救うのか?

~越前市から考える地域再生と多文化共生~

はじめに

人口減少・少子高齢化の波が、いよいよ地方にも深刻な影響を及ぼし始めています。私が行政書士として活動する福井県越前市でも、地域の人手不足や空き家の増加、商店街のシャッター化など、かつては都会の話だった問題が日常の光景になってきました。

そんな中で注目されているのが「外国人との共生」です。外国人労働者やその家族が地域に根づくことで、経済活動の維持だけでなく、地域の活性化にもつながるのではないか——そんな期待の声が高まっています。

では本当に、外国人との共生は日本、そして越前市を救うのでしょうか? 行政書士として、外国人の在留資格や生活支援に関わっていく立場から、この問いに向き合ってみたいと思います。

越前市の現状と外国人住民の動向

福井県越前市は、製造業を中心に地域経済が成り立っており、技能実習生や特定技能の外国人が多く働いています。特にベトナム人・インドネシア人の若者の姿を、工場や飲食店などで見かけることも増えてきました。

2020年頃から急速に外国人の定住傾向が高まり、令和に入ってからは技能実習から特定技能、さらに定住者・永住者への切り替えを希望するケースも見られます。背景には「日本で暮らし続けたい」という意思の強さと、日本の側の「人手が足りないから続けてほしい」というニーズがあります。

しかし、行政の制度設計や地域の受け入れ態勢は、まだまだ十分とは言えません。

行政書士として感じる「制度と現場」のギャップ

行政書士の立場で日々直面するのは、「外国人が日本で暮らしていくためのハードル」の多さです。

例えば、

  • 技能実習から特定技能へ変更したいが、要件が複雑で企業が対応できない
  • 日本人の配偶者として在留資格を得たが、日本語が話せず支援が届かない
  • 子どもが日本で生まれたが、保育所や学校で孤立している
  • 長期的に日本で暮らす意思があるが、永住許可の要件が厳しい

といった、制度の「壁」によって、本人だけでなく雇用主や地域社会も困惑する場面が少なくありません。

また、「受け入れれば終わり」ではなく、その後の生活支援、教育、地域住民との関係構築といった「共生」の課題は、行政だけでは手が回らないのが実情です。

共生が地域に与えるプラス効果

一方で、私が見てきた現場では、外国人が地域に定着することで生まれるプラスの変化も確かに存在します。

  • 空き家に住んでくれることで、地域に灯りが戻る
  • 保育園や小学校の児童数がわずかでも増え、統廃合の危機を回避できる
  • 異文化交流イベントや祭りに参加してくれることで、地域が活気づく
  • 食文化や言語に触れることで、子どもたちが多様性に自然と親しめる

これらはすべて、地域の「人の流れ」を維持・再生するための重要なエネルギーになります。

越前市でも、国際交流をテーマにしたイベントや、地域のNPOと連携した日本語教室など、草の根的な取り組みが始まっています。行政書士としても、こうした流れを制度面から支える役割が求められており、国際交流会館や市役所の相談コーナーなどで相談業務に携わることから相談案件も増加傾向にあります。

「共生」とは一方的な我慢ではない

共生という言葉には、「我慢」や「負担」をイメージする方も多いかもしれません。

「日本の文化に合わない」「マナーが違う」「言葉が通じない」——そうした違和感やトラブルは、確かに存在します。しかし、これは日本人同士であっても起こる問題です。文化の違いを乗り越えるのではなく、「違いがある」ことを前提に関係を築くことが、共生の第一歩です。

大切なのは、「日本のやり方に従わせる」のではなく、「どうすればお互いにとって心地よいルールを作れるか」という視点を持つことだと考えます。いずれにしても、双方に相当の忍耐力が求められていることも実情です。

行政書士としてできること

行政書士は、「在留資格」「雇用契約」「住居契約」「家族の呼び寄せ」など、多くの場面で外国人の人生に関わる仕事です。また、事業主側の法的な整備や外国人労働者受け入れ体制の構築支援も行います。

行政手続きのサポートにとどまらず、制度の背景や目的を伝え、誤解を解き、相互理解を促すこと——それが、今後の行政書士に求められる本質的な役割だと私は考えています。

「書類を出せば終わり」ではなく、「人と人との橋渡しをする存在」へ。それこそが、共生社会における行政書士の未来像です。

おわりに

外国人との共生が日本を救うか——この問いに私は、「Yes」と答えたいと思います。

もちろん、単純な労働力として外国人を扱えば、いずれひずみが生じます。しかし、制度と人の間に立ち、行政や企業、地域と連携しながら「暮らし」を整えていくことで、日本の地方に新しい息吹をもたらすことは可能です。

越前市から始まる小さな共生の試みが、やがて日本全体の未来を変える——そんな時代がもう始まっているのではないでしょうか。

行政書士として、私はこれからもその一翼を担っていきたいと考えています。

行政書士中川まさあき事務所(福井県越前市)