育成就労制度とは何か
―「実習」から「育成」へ。本気で人と向き合う制度への転換―
これまでの技能実習制度は、建前としては「国際貢献(技術移転)」を掲げながら、実際には人手不足を補うための労働力確保制度として運用されてきました。
この目的と実態の乖離が、長年にわたり大きな問題として指摘されてきたのは、皆さんもご承知のとおりです。
2027年4月1日施行予定の育成就労制度は、こうした反省を踏まえ、
制度の目的をはっきりと 「人材育成」と「人材確保」 に置き直しました。
これは単なる名称変更ではありません。
外国人材を「一時的な労働力」ではなく、日本社会を支える仲間として育て、定着してもらうという、国の明確な意思表示だと私は受け止めています。
1.制度の骨格がこう変わる
■「職種・作業」から「分野・業務区分」へ
これまでの技能実習では、非常に細かい職種・作業単位で就労内容が縛られていました。
育成就労制度ではこれを見直し、**特定技能制度と整合性のある「分野・業務区分」**という、より広い枠組みでの就労が可能になります。
これにより、現場の実態に即した柔軟な配置や育成がしやすくなります。
■「1号~3号」区分の廃止と、3年間の通算計画
技能実習にあった段階的な号数区分は廃止され、
育成就労期間は通算3年と一本化されます。
受け入れにあたっては、
・どのように育成するのか
・どの段階で何を身につけてもらうのか
を明確にした育成就労計画を作成し、外国人育成就労機構の認定を受ける必要があります。
■特定技能へのスムーズな移行
育成就労の3年間は、ゴールが明確です。
期間中に
・特定技能1号評価試験
・日本語能力A2相当
の合格を目指し、特定技能への移行を前提とした道筋が制度として整えられました。
永住も視野に入れた、長期就労の「正規ルート」がここで初めて制度化されたと言えるでしょう。
2.外国人本人に求められる要件と日本語能力
■素行・健康状態の要件
育成就労では、18歳以上で健康であることに加え、
**「素行が善良であること」**が明確な要件として位置づけられました。
監理型の場合、この確認は送出機関が担います。
制度全体として、「誰でも来られる」仕組みではなくなっています。
■日本語能力は“努力目標”ではなく“制度の柱”
今回の改正で、最も重みがあるのが日本語能力の段階的向上です。
- 就労開始前
A1相当(N5程度)の試験合格、または100時間以上のA1講習受講が必須。 - 就労中
A2目標講習(100時間以上)の受講機会を、受け入れ企業が提供する義務。 - 終了時
特定技能1号移行を見据え、A2相当(N4程度)合格を目標。
オンライン受講も可能ですが、双方向でのやり取りなど、質が担保された講習であることが条件です。
3.大きな転換点「本人意向の転籍」
技能実習制度で最も問題視されてきたのが、自己都合転籍の原則禁止でした。
育成就労制度では、一定条件のもとで本人意向による転籍が認められます。
■転籍が可能となる条件
- 同一の業務区分内であること
- 分野ごとに定められた 1年以上2年以下の制限期間を経過していること
- 一定水準の技能・日本語能力を有していること
- 転籍先が「優良」な受入れ機関であること
■引き抜き防止と費用の公平性
民間職業紹介事業者の関与は禁止され、
紹介はハローワークや監理支援機関が担います。
また、転籍先企業は、転籍元企業が負担した初期費用の一部を、就労期間に応じて按分支払う仕組みが導入されます。
4.受け入れ企業に求められる覚悟
育成就労制度は、企業側にもより高い倫理性と体制整備を求めています。
■待遇面の厳格化
・日本人と同等以上の報酬
・転籍制限期間が1年超の場合、昇給等の待遇改善
・適切な宿泊施設の確保
・入国後講習期間中の手当支給
・監理支援費を外国人本人に負担させない
■指導・相談体制の義務化
各事業所には以下の配置が必須です。
・育成就労責任者(常勤・講習修了者)
・育成就労指導員(経験5年以上の常勤)
・生活相談員(常勤)
さらに、
・行方不明者を出していないか
・日本人労働者を解雇していないか
・法令遵守状況
が厳しく確認されます。
5.監理支援機関の要件も大幅強化
監理支援機関(旧監理団体)も、「数」ではなく**「質」**が問われます。
・債務超過がないこと
・原則2者以上の企業を監理
・常勤役職員1人あたり
- 担当企業8者未満
- 外国人数40人未満
・弁護士や社労士等による外部監査の義務化
・送出機関からのキックバック等の禁止
6.人数枠と地方への配慮
■基本の人数枠
常勤職員数に応じた上限設定
(例:30人以下の企業=3人)
・優良企業:基本枠の2倍
■地方への特別配慮(重要)
指定区域(地方)の優良企業が、
優良な監理支援機関の支援を受ける場合、
人数枠は基本枠の3倍まで拡大されます。
指定区域には、
・8都府県(東京・神奈川等)の過疎地域
・それ以外の道県
が含まれます。
7.送出機関の透明化と費用規制
外国人が多額の借金を背負って来日する問題に対し、
送出機関への規制も強化されます。
・外国人が支払う費用総額は
「日本での月給2か月分」以内(残業代除く)
・算出基準の公開義務
・不適切な利益供与を受ける機関の排除
8.新設される「企業内転勤2号」
育成就労とは別に、
海外子会社等からの転勤を想定した
**「企業内転勤2号」**が新設されます。
・育成就労計画の認定不要
・対象分野の制限なし
・常勤職員20人以上などの要件あり
おわりに
育成就労制度が目指すのは、
外国人を「使い切る」制度ではありません。
「育て、共に働き、長く支え合う」。
制度全体が、その方向へと大きく舵を切りました。
例えるなら、
技能実習が「短期の武者修行」だったとすれば、
育成就労は
**「日本というチームのレギュラーを目指す育成キャンプ」**です。
キャンプで基礎(日本語・技能)を固めた人材が、
特定技能という舞台で長く活躍する。
そんな未来を本気で描いた制度だと感じています。
施行は2027年4月1日予定。
今から正しく理解し、準備を始めることが、
これからの多文化共生社会における企業成長の鍵になるでしょう。
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※本記事は提供資料を基に作成しています。
制度の詳細は今後の省令・告示で変更される可能性があるため、
実務に際しては最新の公的情報をご確認ください。
