日本語能力の「N1~N5」と「A1~C2」は何が違う?初心者にも分かりやすく解説
外国人の採用や支援、日本語教育に関わっていると、 「この人はN3です」「日本語はA2レベルです」といった表現を目にすることがあります。 どちらも日本語能力を示しているように見えますが、 「N1~N5」と「A1~C2」は、同じ仕組みではありません。
N1、N2、N3、N4、N5は、主に「日本語能力試験」、通称JLPTで使われるレベルです。 一方、A1、A2、B1、B2、C1、C2は、CEFRという国際的な言語能力の枠組みで使われます。
この記事では、二つの形式が何を意味し、どこが違うのか、 外国人材の採用担当者や登録支援機関、監理団体、企業経営者の方にも 分かりやすいように解説します。
1.まず結論――二つの形式の最も大きな違い
二つの違いを簡単に表すと、次のようになります。
N1~N5:
日本語能力試験という「試験のレベル」を示す形式
A1~C2:
その言語を使って「何ができるか」を示す国際的な共通基準
JLPTは日本語に特化した試験です。 それに対してCEFRは、日本語だけではなく、英語、フランス語、ドイツ語など、 さまざまな言語に利用できる共通の物差しです。
そのため、N1とA1の数字を単純に比較してはいけません。 N1は最も難しく、N5が最もやさしいのに対し、 CEFRではA1が入門段階で、C2が最も高い段階です。 数字の並び方も、難易度の方向も異なっています。
| 形式 | 初級側 | 上級側 | 難易度の方向 |
|---|---|---|---|
| JLPT | N5 | N1 | 数字が小さくなるほど難しい |
| CEFR | A1 | C2 | A、B、Cの順に難しくなる |
2.N1~N5とは何か
N1~N5は、正式には「日本語能力試験(Japanese-Language Proficiency Test:JLPT)」 の認定レベルです。
JLPTは、日本語を母語としない人を対象として、 日本語の文字、語彙、文法、読解、聴解などの能力を測定し、 その能力を認定する試験です。
レベルは五段階に分かれており、最もやさしいのがN5、 最も難しいのがN1です。
N5――基本的な日本語をある程度理解できる
N5は、初歩的な日本語を学び始めた人のレベルです。 ひらがな、カタカナ、基本的な漢字で書かれた短い文を読んだり、 ゆっくり話される短い会話から必要な情報を聞き取ったりする力が求められます。
N4――基本的な日本語を理解できる
N4では、日常生活で使われる基本的な語彙や文法を理解し、 身近な内容の文章を読めることが求められます。 会話についても、ゆっくり話されれば、おおよその内容を理解できる段階です。
N3――日常的な日本語をある程度理解できる
N3は、初級と上級をつなぐ中間的なレベルです。 日常的な話題について書かれた文章を読んだり、 自然に近い速さの会話から概要を理解したりする力が必要になります。
N2――幅広い場面の日本語を理解できる
N2では、日常生活だけでなく、新聞や雑誌の記事、説明文、 ある程度まとまりのある会話などを理解する力が求められます。 日本の企業が外国人を採用する際に、応募条件として 「JLPT N2以上」を掲げる例も見られます。
N1――幅広い場面で使われる高度な日本語を理解できる
N1はJLPTの最上位です。 論理的で複雑な文章や抽象度の高い文章を読み、 話の構成や細かなニュアンスを理解する力が求められます。
ただし、N1に合格したからといって、 あらゆる場面で日本人と同じように会話できるとは限りません。 JLPTでは、語彙、文法、読解、聴解が中心となり、 面接形式の会話試験や作文試験は実施されていないためです。
3.A1~C2とは何か
A1~C2は、 CEFR(Common European Framework of Reference for Languages) という言語能力の共通参照枠で使われるレベルです。 日本語では一般に「ヨーロッパ言語共通参照枠」と呼ばれています。
CEFRは、もともと欧州評議会によって整備された枠組みですが、 現在ではヨーロッパの言語だけに限定されず、 世界のさまざまな言語教育や能力評価で利用されています。
CEFRの特徴は、単に試験問題に何点取れたかではなく、 その言語を使って、実際に何ができるかを重視していることです。 これを「Can-do」という考え方で表します。
例えば、「簡単な自己紹介ができる」「身近な話題について説明できる」 「専門的な議論に参加できる」といった、具体的な行動を基準にして 言語能力を整理します。
A1――入門段階
自分の名前、出身地、家族、住んでいる場所などについて、 ごく簡単な表現を使って伝えられる段階です。 相手がゆっくり、はっきり話してくれれば、簡単なやり取りができます。
A2――初級段階
買い物、仕事、家族、近所、日常生活など、 自分に直接関係する話題について、簡単な情報交換ができる段階です。 短く簡単な表現を使って、自分の状況や必要なことを説明できます。
B1――中級段階
仕事、学校、旅行などで日常的に起こる多くの場面に対応できます。 自分の経験、希望、計画を説明したり、身近な話題について 理由を付けて意見を述べたりできる段階です。
B2――中上級段階
具体的な話題だけでなく、ある程度抽象的な内容も理解できます。 母語話者とも比較的自然にやり取りでき、 自分の考えを詳しく説明したり、複数の選択肢の長所と短所を 論じたりすることができます。
C1――上級段階
複雑で長い文章を理解し、言外の意味もある程度読み取れます。 社会生活、学術、職業上の目的に応じて、言葉を柔軟かつ効果的に 使用できる段階です。
C2――熟達段階
読んだ内容や聞いた内容をほぼ無理なく理解し、 複数の情報を整理して、筋道立てて説明できます。 非常に複雑な状況でも、細かな意味の違いを表現できる段階です。
4.JLPTとCEFRの違いを比較
| 比較項目 | JLPTのN1~N5 | CEFRのA1~C2 |
|---|---|---|
| 基本的な性格 | 日本語能力試験の認定レベル | 言語能力を表す共通の枠組み |
| 対象言語 | 日本語 | 日本語を含むさまざまな言語 |
| 段階 | N5、N4、N3、N2、N1 | A1、A2、B1、B2、C1、C2 |
| 重視する点 | 語彙、文法、読解、聴解など | その言語を使って何ができるか |
| 話す力の扱い | 直接的な会話試験はない | 話す、聞く、読む、書く、やり取りなどを幅広く考える |
| 結果の性格 | 試験への合否と得点 | 能力を行動別・段階別に説明 |
5.N3なら必ずA2、N2なら必ずB1なのか
ここは、特に誤解が生じやすい部分です。
JLPTとCEFRには一定の対応関係が示されるようになりましたが、 「N3合格者は、あらゆる能力が必ずA2またはB1である」 という意味ではありません。
2025年12月に実施されたJLPTから、合格者の成績書に、 総合得点に応じたCEFRレベルが参考情報として表示されるようになりました。 公表されている対応は、次のとおりです。
| JLPTレベル | 総合得点 | 参考表示されるCEFR |
|---|---|---|
| N5 | 80点以上の合格者 | A1 |
| N4 | 90点以上の合格者 | A2 |
| N3 | 95~103点 | A2 |
| N3 | 104点以上 | B1 |
| N2 | 90~111点 | B1 |
| N2 | 112点以上 | B2 |
| N1 | 100~141点 | B2 |
| N1 | 142点以上 | C1 |
注意: この表示は、JLPTが測定している「言語知識・読解・聴解」の範囲における 参考情報です。会話力や作文力を含めたすべての日本語能力を、 総合的にCEFRで認定するものではありません。
また、現在の参考表示では、JLPTの成績からC2が表示される仕組みには なっていません。N1で高得点を取った場合の参考表示はC1です。 だからといって、N1より上の日本語能力が存在しないという意味ではありません。 JLPTが測る範囲と、CEFRが表現する能力の範囲が異なるためです。
6.なぜ完全に一致しないのか
JLPTとCEFRが完全に一致しない理由は、二つが作られた目的と 評価方法に違いがあるからです。
JLPTは、一定の条件のもとで同じ問題を受験し、 日本語の知識、読解力、聴解力を客観的に測る試験です。 資格として履歴書に記載しやすく、進学や就職、社内での能力確認などにも 活用しやすいという利点があります。
一方のCEFRは、特定の一つの試験の名称ではありません。 学習目標の設定、教材の作成、授業、自己評価、試験結果の説明などに使う 共通の枠組みです。
つまり、JLPTが「試験によってどの水準に合格したか」を示すのに対し、 CEFRは「実際の言語活動でどのようなことができるか」を、 より広い視点から表現するものだと考えると分かりやすいでしょう。
7.外国人を採用するときは、どちらを見ればよいか
外国人材を採用する企業では、 JLPTの資格だけで判断したくなることがあります。 しかし、実際の仕事では、試験の合格級だけでは分からない能力もあります。
例えば、N2に合格していても、人前で話すことに慣れておらず、 職場での報告や相談に時間がかかる人がいます。 反対に、JLPTではN3であっても、日常的に日本人と会話しており、 現場での受け答えが非常にスムーズな人もいます。
採用や配属の場面では、次のように複数の要素を確認することが大切です。
- JLPTの取得レベルと総合得点
- 質問を聞いて理解する力
- 自分の状況を説明する力
- 分からないときに聞き返す力
- 職場で使う専門用語の理解
- 報告・連絡・相談ができるか
- 簡単な文章や作業記録を書けるか
JLPTは採用判断の重要な参考材料ですが、それだけで仕事上の コミュニケーション能力を断定しないことが大切です。 面接や実技確認では、CEFRのCan-doの考え方を取り入れ、 「この仕事で何ができる必要があるか」を具体的に確認するとよいでしょう。
8.日本語学習者は、二つをどう使い分ければよいか
日本語を学ぶ本人にとっても、JLPTとCEFRは競い合うものではなく、 目的に応じて併用するものです。
JLPTは、「次はN3に合格する」「来年はN2を取得する」という 分かりやすい目標になります。 試験日が決まっているため、語彙や文法、読解、聴解の勉強を 計画的に進めやすいという利点もあります。
CEFRのCan-doは、「病院で症状を説明できるようになる」 「職場で遅刻の理由を伝えられるようになる」 「会議で自分の意見を説明できるようになる」など、 実生活に結び付いた目標を設定する際に役立ちます。
したがって、学習目標は次のように組み合わせると効果的です。
資格の目標:半年後にJLPT N3へ合格する
行動の目標:職場で、その日の作業内容と問題点を 自分の言葉で上司に報告できるようになる
このように、試験合格と実践的なコミュニケーションの両方を 目標にすることで、「問題は解けるが話せない」という状態を防ぎやすくなります。
9.よくある誤解
誤解1――N1の「1」とA1の「1」は同じ意味
同じ意味ではありません。 N1はJLPTの最上位ですが、A1はCEFRの入門段階です。 数字だけを見て比較しないようにしましょう。
誤解2――N1合格者は必ず会話も完璧
N1は非常に高い日本語理解力を示しますが、 JLPTには直接的な会話試験がありません。 実際の会話力は、日本語を使ってきた環境や経験によっても異なります。
誤解3――CEFRは英語だけの基準
CEFRは英語試験でよく使われるため、英語専用と思われがちですが、 特定の言語だけを対象とした仕組みではありません。 日本語教育でもCEFRを参考にした評価や学習目標が活用されています。
誤解4――N2は全員同じ日本語能力
同じN2合格者でも、得点や得意分野、会話経験には違いがあります。 読解が得意な人もいれば、聴解が得意な人もいます。 資格名だけでなく、実際の受け答えや仕事の遂行状況も確認する必要があります。
10.まとめ
- N1~N5は、日本語能力試験JLPTのレベルである
- JLPTはN5が初級で、N1が最上位である
- A1~C2は、CEFRという国際的な言語能力の共通枠である
- CEFRはA1から始まり、C2が最も高い段階である
- JLPTは語彙、文法、読解、聴解を試験で測る
- CEFRは「その言語で何ができるか」を重視する
- JLPTとCEFRには対応関係が示されているが、完全に同じものではない
- 採用では資格だけでなく、実際の会話、説明、報告、相談の力も確認する
日本語能力を正しく理解するために大切なのは、 一つの数字や資格だけで、その人の能力全体を決めつけないことです。
JLPTの合格級は、学習努力と一定の日本語理解力を示す大切な実績です。 同時に、実際の職場や生活では、話す力、書く力、聞き返す力、 相手に合わせて説明する力も必要になります。
N1~N5とA1~C2、それぞれの特徴を理解し、 資格としての評価と「実際に何ができるか」という評価を組み合わせることで、 外国人本人にとっても、受け入れる企業にとっても、 より納得できる日本語能力の判断ができるようになるでしょう。
※本記事は、日本語能力試験JLPT、欧州評議会のCEFR、 国際交流基金が公表している情報を基に作成しています。 JLPTのCEFR参考表示は、JLPTが測定する言語知識・読解・聴解の範囲を 対象とするものであり、会話力や作文力を含む総合的なCEFR認定とは異なります。
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