留学告示まで深掘りしてみる。

一般的に法令の優劣は、憲法 > 条約 > 法律 > 政令 > 府 省令)> 条例>規則 の順とされています。

ここでは、留学の在留資格を例に法令の優劣の順位に沿って、条文との関連性について確認していきたいと思います。出入国管理及び難民認定法(法律)において、留学の在留資格に関しては、法第7条第一項第二号前段に規定されている別表第一の下欄に掲げる活動の中のひとつとして、別表第一の4の表に掲載されていることが確認できます。これは在留資格該当性と呼ばれるものです。

出入国管理及び難民認定法より 一部抜粋

(入国審査官の審査)
第七条
1 入国審査官は、前条第二項の申請があつたときは、当該外国人が次の各号(第二十六条第一項の規定に
より再入国の許可を受けている者又は第六十一条の二の十五第一項の規定により交付を受けた難民旅行証
明書を所持している者については、第一号及び第四号)に掲げる上陸のための条件に適合しているかどう
かを審査しなければならない。
一 その所持する旅券及び、査証を必要とする場合には、これに与えられた査証が有効であること。
二 申請に係る本邦において行おうとする活動が虚偽のものでなく、別表第一の下欄に掲げる活動
(二の表の高度専門職の項の下欄第二号に掲げる活動を除き、五の表の下欄に掲げる活動については、法務大臣があらかじめ告示をもつて定める活動に限る。)又は別表第二の下欄に掲げる身分若しくは地位(永住者の項の下欄に掲げる地位を除き、定住者の項の下欄に掲げる地位については、法務大臣があらかじめ告示をもつて定めるものに限る。)を有する者としての活動のいずれかに該当し、かつ、別表第一の二の表及び四の表の下欄に掲げる活動を行おうとする者については我が国の産業及び国民生活に与える影響その他の事情を勘案して法務省令で定める基準に適合すること(別表第一の二の表の特定技能の項の下欄第一号に掲げる活動を行おうとする外国人については、一号特定技能外国人支援計画が第二条の五第六項及び第七項の規定に適合するものであることを含む。)。
三 申請に係る在留期間が第二条の二第三項の規定に基づく法務省令の規定に適合するものであること。
四 当該外国人が第五条第一項各号のいずれにも該当しないこと(第五条の二の規定の適用を受ける外国人にあつては、当該外国人が同条に規定する特定の事由によつて同項第四号、第五号、第七号、第九号又は第九号の二に該当する場合であつて、当該事由以外の事由によつては同項各号のいずれにも該当しないこと。以下同じ。)。

出入国管理及び難民認定法 より 一部抜粋

法別表第一4の表  を抜粋


在留資格 本邦において行うことができる活動
留学
本邦の大学、高等専門学校、高等学校(中等教育学校の後期課程を含む。)若しくは特別支援学校の高等部、中学校(義務教育学校の後期課程及び中等教育学校の前期課程を含む。)若しくは特別支援学校の中学部、小学校(義務教育学校の前期課程を含む。)若しくは特別支援学校の小学部、専修学校若しくは各種学校又は設備及び編制に関してこれらに準ずる機関において教育を受ける活動

別表第一 4の表 を抜粋

次に、同第二号後段に規定されている「かつ、別表第一の二の表及び四の表の下欄に掲げる活動を行おうとする者については我が国の産業及び国民生活に与える影響その他の事情を勘案して法務省令で定める基準に適合すること」の条文の「法務省令で定める基準」というのが省令に該当し、上陸基準省令とも呼ばれ在留資格該当性と並んで重要な基準省令適合性を判断する基準になるものです。

出入国管理及び難民認定法第7条第一項第二号の基準を定める省令 より抜粋

法別表第一の4の表の留学の項の下欄に掲げる活動
一 申請人が次のいずれかに該当していること。
イ 申請人が本邦の大学若しくはこれに準ずる機関、高等専門学校又は専修学校の専門課程に入学して教育を受けること(専ら日本語教育(日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律(令和五年法律第四十一号。以下「日本語教育機関認定法」という。)第一条に規定する日本語教育をいう。以下この項において同じ。)を受ける場合又は専ら夜間通学して若しくは通信により教育を受ける場合を除く。)。
ロ 申請人が本邦の大学に入学して、当該大学の夜間において授業を行う大学院の研究科において専ら夜間通学して教育を受けること。
ハ 申請人が本邦の大学若しくはこれに準ずる機関、高等専門学校若しくは専修学校の専門課程に入学して専ら日本語教育を受けること又は高等学校(定時制を除き、中等教育学校の後期課程を含む。以下この項において同じ。)若しくは特別支援学校の高等部、中学校(義務教育学校の後期課程及び中等教育学校の前期課程を含む。以下この項において同じ。)若しくは特別支援学校の中学部、小学校(義務教育学校の前期課程を含む。以下この項において同じ。)若しくは特別支援学校の小学部、専修学校の高等課程若しくは一般課程若しくは各種学校若しくは設備及び編制に関してこれに準ずる教育機関に入学して教育を受けること(専ら夜間通学して又は通信により教育を受ける場合を除く。)。
二 申請人がその本邦に在留する期間中の生活に要する費用を支弁する十分な資産、奨学金その他の手段を有すること。ただし、申請人以外の者が申請人の生活費用を支弁する場合は、この限りでない。
二の二 申請人が教育を受けようとする教育機関が、当該教育機関において教育を受ける外国人の出席状況、法第十九条第一項の規定の遵守状況、学習の状況等を適正に管理する体制を整備していること。
三 申請人が専ら聴講による教育を受ける研究生又は聴講生として教育を受ける場合は、第一号イ又はロに該当し、当該教育を受ける教育機関が行う入学選考に基づいて入学の許可を受け、かつ、当該教育機関において一週間につき十時間以上聴講をすること。四 申請人が高等学校において教育を受けようとする場合は、年齢が二十歳以下であり、かつ、教育機関において一年以上の日本語教育又は日本語による教育を受けていること。ただし、我が国の国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人、国立大学法人、学校法人、公益社団法人又は公益財団法人の策定した学生交換計画その他これに準ずる国際交流計画に基づき生徒として受け入れられて教育を受けようとする場合は、この限りでない。四の二 申請人が中学校若しくは特別支援学校の中学部又は小学校若しくは特別支援学校の小学部において教育を受けようとする場合は、次のいずれにも該当していること。ただし、我が国の国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人、国立大学法人、学校法人、公益社団法人又は公益財団法人の策定した学生交換計画その他これに準ずる国際交流計画に基づき生徒又は児童として受け入れられて教育を受けようとする場合は、イ及びロに該当することを要しない。
イ 申請人が中学校において教育を受けようとする場合は、年齢が十七歳以下であること。
ロ 申請人が小学校において教育を受けようとする場合は、年齢が十四歳以下であること。
ハ 本邦において申請人を監護する者がいること。
ニ 申請人が教育を受けようとする教育機関に外国人生徒又は児童の生活の指導を担当する常勤の職員が置かれていること。
ホ 常駐の職員が置かれている寄宿舎その他の申請人が日常生活を支障なく営むことができる宿泊施設が確保されていること。
五 申請人が専修学校又は各種学校において教育を受けようとする場合(専ら日本語教育を受けようとする場合を除く。)は、次のいずれにも該当していること。
ただし、申請人が外国から相当数の外国人を入学させて初等教育又は中等教育を外国語により施すことを目的として設立された教育機関において教育を受ける活動に従事する場合は、イに該当することを要しない。
イ 申請人が外国人に対する日本語教育を行う教育機関で法務大臣が文部科学大臣の意見を聴いて告示をもって定めるもの(以下この項において「告示日本語教育機関」という。)若しくは認定日本語教育機関(日本語教育機関認定法第三条第一項に規定する認定日本語教育機関をいう)に置かれた留学のための課程(認定日本語教育機関認定基準(令和五年文部科学省令第四十号)第二条第一項に規定する留学のための課程をいう。以下この項において同じ。)において一年以上の日本語教育を受けた者、専修学校若しくは各種学校において教育を受けるに足りる日本語能力を試験により証明された者又は学校教育法第一条に規定する学校(幼稚園を除く。)において一年以上の教育を受けた者であること。
ロ 申請人が教育を受けようとする教育機関に外国人学生の生活の指導を担当する常勤の職員が置かれていること。
六 申請人が本邦の大学若しくはこれに準ずる機関、高等専門学校、専修学校、各種学校又は設備及び編制に関して各種学校に準ずる教育機関において専ら日本語教育を受けようとする場合は、当該教育機関が告示日本語教育機関又は認定日本語教育機関であること(当該教育機関が認定日本語教育機関である場合にあっては、留学のための課程において日本語教育を受けるものに限る。)。
七 削除
八 申請人が設備及び編制に関して各種学校に準ずる教育機関において教育を受けようとする場合(専ら日本語教育を受けようとする場合を除く。)は、当該教育機関が法務大臣が告示をもって定めるものであること。

出入国管理及び難民認定法第7条第一項第二号の基準を定める省令 より抜粋

次に、上記の「出入国管理及び難民認定法第7条第一項第二号の基準を定める省令」を受けて、この省令の規定による「日本語教育機関」及び「教育機関」を留学告示として以下の通り規定しています。

以上のように、法律から省令に投げられ、省令から告示へなげられるというように、徐々に細かな部分を決めていき法全体の構造を成り立たせていることがわかります。また、それら在留資格該当性と基準省令適合性を満たすには、これらのすべてをクリアする必要があるともいえます。つまり、法令的に下位の順であろうがなかろうが、規定される告示の内容にも合致しなければクリアできないということになるのです。

因みに、留学告示で規定する、出入国管理及び難民認定法第7条第一項第二号の基準を定める省令の「留学の項の下欄第八号の規定よる教育機関別表四の通りとする。」と規定し、アニメやデザイン、ファッション関連の専門学校を指定しているのが確認できますが、これは、2015年12月に官民・異業種連携の強化を図る場となる「クールジャパン官民連携プラットフォーム」が設立され、アニメやファッションといった日本独自の文化をより発展させていこうとする政策から生まれたものということだそうです。

以下、内閣府 新たなクールジャパン戦略について より引用

行政書士中川まさあき事務所