補助金申請前に必ず確認すべき6つのポイント
— 中小企業・個人事業主が、補助金を“逃さず”“使えるものにする”ための実務ガイド —
1.支出タイミング:交付決定前の購入や支払いは原則対象外
多くの補助金制度では、「補助金の交付決定を受ける前に発注・購入・支払いを行った経費は、補助対象経費にならない」というルールが定められています。例えば、補助事業の手引きには「交付決定日以降に発注したものが原則対象となる」旨明記されています。
このため、「既に買ってしまったものだから申請しよう」という発想では、支出時点が制度対象外となることが多く、残念ながら補助金が受けられないリスクがあります。実務的には、補助金交付決定通知の到着を確認してから予算執行(発注・支払い)に踏み出すのが安全です。
2.採択率:決して“誰でももらえる”わけではない
補助金を活用したいと思うのは当然ですが、制度の性質上、全申請者が採択されるわけではありません。例えば、小規模事業者持続化補助金では、過去に「20~40%台で推移してきた」という分析があります。
つまり、「採択される可能性は高くはない」ことを前提にしながら、申請と並行して不採択時の代替策や資金繰り計画も併せて検討しておくことが実務上重要です。
3.資金繰り:申請から入金までに時間を要する可能性
補助金の申請から、実際に入金されるまでには一定のタイムラグがあります。制度によって異なりますが、採択/交付決定 → 事業実施 → 実績報告 →審査 →入金という流れをたどるため、「半年程度かかる」ことを想定して資金繰りを立てる
この間に運転資金が滞ると、補助金を活用しようとした取組そのものが立ち行かなくなるリスクもあります。補助を前提に大きな支出を予定する場合、特に注意してください。 4.要件確認:自社が制度の対象となるかを明確にする 補助金には制度趣旨・対象者・対象経費・期間・申請書類など、細かな要件が定められています。要件を満たしていなければ、そもそも採択対象になりません。例えば、過去の売上減少率、業種、法令遵守、計画の新規性などが問われる場合があります。 制度をご検討の際には、必ず最新の〈公募要領〉をダウンロード・確認し、疑問点があれば支援機関へ相談することをお勧めします。5.事業計画・経営計画の記載内容:申請の核心部分 補助金申請書の中で、最も重視されるのが「事業計画書」および「経営計画書」の記載内容です。これらは審査員が「この事業がなぜ、どう実行できるのか」を判断するためのものです。 説得力を持たせるためには、以下のポイントを押さえましょう:
・なぜこの取組を行うのか(背景・課題)
・どのように実施するのか(取組内容・スケジュール)
・どの程度の成果を出すのか(数値目標・KPI)
・費用対効果や実現可能性(見積書・実績・体制)
書類の準備だけでなく、実行の裏付けになる根拠や数値・スケジュールをきちんと描いておくことが、採択に向けた重要な条件です。 6.採択後の対応とリスク管理:採択=終わりではない 補助金を獲得してようやくスタートではありません。採択後も、次のような対応が求められます: 交付決定書・契約書の確認 事業実施・支出・納品処理・領収書保管 実績報告書・確定検査・補助金支払 虚偽申請・目的外支出等による返還・損害賠償リスク例えば虚偽の申請内容や、目的外支出をした場合には補助金の返還や損害賠償請求がなされることがあります。申請段階から正確かつ誠実な対応を徹底しましょう。 まとめ:制度を味方につけるために、準備と順序を大切に 補助金は、決して「ただ申請すればもらえる」ものではありませんが、正しく理解・準備すれば、事業の追い風となります。上記6つのポイント――支出タイミング、採択率、資金繰り、要件確認、事業計画、採択後対応――をあらかじめ整理し、制度を味方につけてください。 私自身も、経営者の皆さまと腹を割った対話を重ねながら、必要な書類・計画・申請プロセスを丁寧に伴走する支援を行っています。福井県内で補助金申請を検討される方は、お気軽にご相談ください。 執筆者:中川正明(特定行政書士/申請取次行政書士/宅建士)|福井県越前市 ※本記事は公的情報(中小企業庁・経済産業省・各都道府県の手引き)に基づいて作成しています。実際の制度要件は公募要領をご確認ください。
