経営の視点で押さえるべきポイント

 事業を営む方やそれを支える方にとって、既にご承知のものも含め、経営目線で必要と考えられ押さえておきたい項目はいくつもあると思いますが、その中でも特に押さえておいた方がいいと日頃から思うことをピックアップしてご紹介したいと思います。基本的なことなので、多くの方々は今更と思われることも多いかもしれませんが、時が来たら検討しよう、既に対応している、あまり興味はない、などと思われている方も含め何等かの気づきが得られるかもしれませんので参考にしていただけると幸いです。今日は、経営の三要素、「ひと・人材」、「もの・資源」、「カネ・資金」の内、「カネ・資金」に関連してお届けしたいと思います。

「お金」を調達する

1月24日に開かれた日銀の金融政策決定会合で政策金利を0.5%程度に引き上げることが決まり、17年ぶりに政策金利が0.5%となりました。どの経営者にとっても、貸出金利の動向は常に気がかりで、できれば少しでも金利負担を軽減したいと考えておられることと思います。コンマ25金利負担が増えると、従業員○○人分の年収分が増えてしまうという試算も出て焦ることもあるのではないでしょうか。そこで、押さえておきたいのが制度融資の存在です。制度融資とは、政府や自治体などの公的機関が主導して提供する融資のことで、創業融資、運転資金融資、設備資金融資、緊急融資などがあるとされています。また、公的金融機関の支援を受ける、あるいは特殊な融資制度を活用するという選択肢も外せないポイントのひとつです。

マル経融資(小規模事象者経営改善資金)商工会、商工会議所又は都道府県商工会連合会の実施する経営指導を受けている小規模事業者(商工業者に限る)であって、商工会、商工会議所等の長の推薦を受けた方を対象として、2000万を限度として無担保無保証人で借入が可能な制度

・日本政策金融公庫融資 国民生活事業、中小企業事業、農林水産事業の各分野ごとに、様々な融資制度があります。

保証協会(例:福井県信用保証協会) 県毎にある保証協会に対して、各金融機関の窓口を経由して申込することで、業種などに制約があるものの、低金利での融資を受けれる場合もあります。  

・経営セイフティ共済 こちらも、中小機構の制度で、『「取引先の倒産」という不測の事態に備え、中小企業が連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐため、無担保・無保証人で掛金額に応じた借入れをすることができる制度です。』 

・都道府県の中小企業向け制度融資(例:福井県) 福井県の例では、取扱金融機関を経由して申込することを前提として、各種の制度融資があるようです。取扱期間や金利、要件などは都度確認する必要があります。詳しくは、該当自治体等のホームページでご確認ください。ここでは、福井県中小企業者向け制度融資要綱を引用して掲載します。

・市町村の中小企業向け制度融資(例:福井市) 『福井市中小企業者等融資制度は、 市内の中小企業者の皆さんが事業に必要な資金の調達を低金利、長期間の返済でご利用できるように、福井市が金融機関と協調してサポートする制度です。保証料の補助も行っているため、保証料を負担に感じている事業者の皆さんにも安心してご利用いただくことができます。まずは取扱金融機関へご相談ください。』・・・福井市のホームページより引用

「お金」を有効活用する

・キャッシュフロー(営業活動、投資活動、財務活動から生じるお金の動き)の動向を常に意識して、今の状況と今後の見込を予測し、円滑な資金繰り計画が立てられるようにするための工夫が大切です。それができて初めてお金を有効活用することができる環境が整うことになります。

・お金を有意義に使うには、例えば必要以上の在庫を抱えないように売れ筋や回転率などを把握し多すぎず少なすぎない仕入れに心がけることが重要です。月次の経費支出の動きに着目して、急激な増減がある項目については要因を突き止め早めの対策を打つ必要もでてきます。

・投資タイミングの判断を誤らないようにする一方で、先行投資は時には大胆に仕掛ける必要があることもあるかもしれません。また、売却、処分のタイミングもなかなか簡単には結果の良しあしの判断がでないことが多いようです。総合的な経営判断により結論づけしていくことが重要かもしれません。

・効率的な資金運用を心掛け、余剰資金は金利負担軽減のため繰上償還に充てることも念頭にすることも考えられます。

・修繕計画や設備・機器・ソフト等の更新のタイミングは、新商品の動向、保守期間、サポート期間なども合わせて検討して、早過ぎたり、遅すぎたりしないように工夫する必要があります。

補助金を活用して「お金」を補填する

補助金については、別の記事で掲載しましたので詳細は略させていただきます。経営の三要素のひとつ「お金」を考えるにあたり、外せないもののひとつとして「補助金」があるという意味であげています。

・国、政府などの補助金

 各省庁や、補助金実施機関等のホームページなどで詳しい内容を確認していく必要があります。

・各自治体の補助金

 各自治体、商工会議所、商工会等のホームページなどで詳しい内容を確認していく必要があります。

「お金」を将来のために備える、又は運用する

・小規模企業共済 中小機構の共済制度で、『小規模企業(事業)の経営者や役員の方が、廃業や退職時の生活資金などのために積み立てることのできる、いわば「経営者のための退職金制度」です。掛金が全額所得控除できるなどの税制メリットに加え、事業資金の借入れもできる、おトクで安心な小規模企業の経営者のための制度です。』

・経営セイフティ共済 こちらも、中小機構の制度で、『「取引先の倒産」という不測の事態に備え、中小企業が連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐため、無担保・無保証人で掛金額に応じた借入れをすることができる制度です。』 

中小企業退職金共済 中退共制度は、昭和34年に中小企業退職金共済法に基づき設けられた中小企業のための国の退職金制度です。中退共制度をご利用になれば、 安心・確実・有利で、しかも管理が簡単な退職金制度が手軽に作れます。この中退共制度は、独立行政法人勤労者退職金共済機構・中小企業退職金共済事業本部(中退共)が運営しています。と紹介されています。会社にとっては経費に計上しつつ、従業員への退職金の原資は保全されるため両者にとってもメリットがあると言われています。

・企業年金 企業年金は、確定給付企業年金(DB)、厚生年金基金、確定拠出企業年金(DC)の3種類があるとされますが、厚生年金基金は、運用状況の悪化によって縮小・解散する基金が増えていることから、確定給付企業年金と企業型確定拠出年金が主流となっています。企業が負担する企業年金の掛け金は確定給付企業年金法に規定する確定給付企業年金に係る規約に基づいて支出する掛け金や確定拠出年金法に規定する企業型年金規約に基づいて企業型年金加入者のために支出する事業主掛金などは、経費として算入できるようですが、具体的には税理士先生のご指導により処理する必要があります。

・役員退職慰労金の原資としての生命保険加入、積立金等 従業員に退職金制度があるのと同様に、役員にも退職金制度を策定し将来に備えるという方は多いと思います。前述の小規模企業共済等で備える他は、独自に資金を積み立てるか、若しくは、生命保険等に加入し、死亡退職金の原資を確保するかなどの対応が必要になります。こちらも、税理士先生のご指導のもと、役員退職金規定等、退職金基準の策定や具体的会計処理を適正におこなっていくことになるかと思います。

国民年金基金  自営業・フリーランスの方のための年金額を増やせる年金制度です。個人事業主の方は、一度は検討されたことのある方も多いかもしれません。

「お金」をより厳格・慎重に取り扱う

 中小企業においては、会社も社長も同じだと認識される傾向がありますが、基本的に会社は法人で、代表者は個人ですので人格が違うという点をまず意識する必要があります。その上で、会社と代表取締役や役員の間で生じる取引関係に関しては留意する必要がでてきます。会社と役員などの間で生じる取引の内、競合する取引や会社へ損害を生じかねない取引をする際の一定のルールがあります。例えば、会社から代表者がお金を借りた場合、無利子で貸すことは問題がある可能性が高く、また、会社の財産を安く買い取るといった場合にも同じような懸念が生じます。

会社法 第356条

(競業及び利益相反取引の制限)

第三百五十六条 取締役は、次に掲げる場合には、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。

一 取締役が自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき。

二 取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をしようとするとき。

三 株式会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間において株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとするとき。

2 民法第百八条の規定は、前項の承認を受けた同項第二号又は第三号の取引については、適用しない。

会社法 第356条 抜粋

日本監査役協会のホームページにおいては、以下のような「競合及び利益相反取引のチエックリスト」を掲載して紹介されています。

「お金」を試算する

代表や事業主に万が一のことがあったらどういう流れになるか?、相続はどうなる?、今の不動産価値はどの程度か?、事業継続可能なのか?、事業継承はどうなるか?などの課題について、税理士先生を交えて相談したり、自分なりに試算できることは挑戦してみるという視点も経営には必要といえるかもしれません。そうすることで、見直し、前倒し、斬新、一新というひらめきや気付きがあれば、心の葛藤に対する見返りとしては十分と評価できるのではないでしょうか。

今日は。「お金」をテーマに、●調達する、●有効活用する、●補填する、●備える、●厳格・慎重に扱う、●試算する という項目に分けポイントを整理してみました。何かのきっかけづくりやお役に立てれば幸いです。

行政書士中川まさあき事務所