相続人以外への遺贈と死因贈与契約の違い|遺言で会社や法人へ財産を残す際の注意点
遺言を作成する際、相続人(配偶者・子など)だけを対象とするケースが一般的ですが、相続人以外の方や法人・団体へ遺贈(いぞう)を行うケースも少なくありません。 たとえば、自身が経営する会社や、お世話になった団体、知人などへの遺贈を希望する場合です。
しかし、このような「相続人以外への遺贈」には、法律的・実務的にいくつかの注意点があります。 また、似た制度である「死因贈与契約」との違いも理解しておくことが大切です。
1. 相続人以外の法人や団体に遺贈する場合の注意点
たとえば、所有する不動産を自分が経営する会社に遺贈した場合、会社側にも次のような判断や負担が生じます。
- 受遺の承諾が必要: 遺贈は遺言者の一方的意思で成立しますが、受ける側には「受け取らない」自由もあります。会社として受遺を承諾するかどうかの判断が必要です。
- 税金・維持費の負担: 不動産を受け取ることで資産が増える一方、不動産取得税・固定資産税・修繕費・維持管理費などの負担も発生します。
- 経営・株主への影響: 会社の資産価値が上がることで、株式評価額が上昇し、株主である相続人の利益や税負担に影響することもあります。
- 専門家への相談: 税務処理や事業承継上の影響を踏まえ、税理士・行政書士・弁護士等の専門家の助言を受けることが重要です。
遺贈は「もらえる」だけではなく、「受け取る責任」も伴います。 会社や団体に遺贈する場合は、感情論ではなく経営判断としての検討が不可欠です。
【相続人以外への遺贈のポイント】
- 受遺者の認識と受諾意思: 遺贈の存在を理解し、受け入れる意思があるか確認する。
- 遺贈後の負担: 税金・維持管理費・修繕費など、継続的コストを考慮する。
- 専門家の助言: 税理士や事業承継専門家のアドバイスを受け、リスクとメリットを把握する。
- 遺言の確実な執行: 公正証書遺言など信頼性の高い方式で作成し、改ざん・紛失を防止する。
- 相続人への影響: 相続人の同意は不要だが、将来のトラブルを防ぐため事前説明が望ましい。
2. 遺贈の対象による違い
- 法人への不動産遺贈: 経営に直接影響。不動産取得税や固定資産税の負担増。
- 公的団体への現金寄贈: 財務負担が少なく、比較的スムーズに実行可能。
- その他の財産遺贈: 管理能力や目的適合性を事前に確認しておく必要あり。
特に企業への不動産遺贈は、会社の資産構成・株主構成・税務処理に影響するため、事前調整と専門家支援が重要です。
3. 遺贈と死因贈与契約の違い
いずれも「人の死亡を原因として財産を譲渡する」点は同じですが、成立の仕組みと法的性質が異なります。
遺贈(いぞう)
- 性質: 遺言によって財産を譲る一方的な行為
- 成立要件: 有効な遺言書(自筆証書遺言・公正証書遺言など)の作成が必要
- 撤回: 遺言者は自由に撤回・変更できる
- 受遺者の同意: 遺言者の死亡後に承諾すればよい(生前の同意は不要)
- 執行方法: 遺言執行者がいれば、法的手続きが円滑に行える
死因贈与契約(しいんぞうよけいやく)
- 性質: 生前に契約を交わし、死亡後に財産を譲る合意行為
- 成立要件: 贈与者と受贈者の双方の合意が必要(契約書の作成が望ましい)
- 撤回: 契約成立後は原則として撤回できない(特約があれば可能)
- 受贈者の同意: 契約時点で同意が必要
- 執行方法: 契約内容に従い、受贈者が権利を取得する
遺贈は「遺言による一方的な意思表示」であるのに対し、 死因贈与契約は「生前に双方が合意して結ぶ契約」です。 この違いにより、撤回の可否や受贈者の関与のタイミングが大きく異なります。
まとめ:相続人以外への遺贈は「想い」と「実務」の両立が大切
遺贈は、遺言者の「想い」を形にする手段であり、相続人以外への感謝を伝えることもできます。 しかし、その裏には税務・法務・経営上の影響が伴うため、専門家による事前設計が欠かせません。
特に、法人や団体への遺贈、または事業承継を伴う遺言の場合は、行政書士・税理士・弁護士が連携してサポートすることで、遺言者の意思を確実に実現できます。
相続や遺言書の作成、法人への遺贈などでお悩みの方は、行政書士中川まさあき事務所へご相談ください。 ご事情を丁寧にお伺いし、最適な遺言の形と実行方法をご提案いたします。
※本記事は一般的な法的知識に基づいた解説です。実際の遺贈・契約内容は個別の事情により異なります。税務処理については税理士、法的紛争に関しては弁護士へご相談ください。
