
遺言を残すとなった場合、相続人の方だけが対象の遺言となるケースが多いと思いますが、相続人以外の方への遺贈も含む遺言を残すケースもあるかと思います。その場合、どのような問題点があるのかについて記述したいと思います。そして、今回は、遺言による遺贈の論点ですが、死んだらこれをあげるという「死因贈与契約」との違いを最後に載せてありますので、遺言で遺贈する場合との違いがあるからこ生じる問題について考えてみたいと思います。
例えば、所有する物件などの土地建物を自身が経営する会社へ遺贈する場合を想定した場合、まず、そもそも会社が遺贈を受けることに関し、承諾するかどうかを決める必要が生じるということがあります。遺贈は遺言者の一方的な意思のみで生じる法律効果ですが、遺贈を受ける側としては断るという選択もありえるということになります。仮に受け入れる場合、会社側の資産が増加することとなることから、会社の価値も増加することも考えられ、相続人が会社の株主であるような場合には、影響を受けることにもつながり、会社の経営としての視点では、遺贈を受けることで不動産取得税や固定資産税の負担増、修繕費・維持管理費の負担増も検討する必要がでてくることになります。また、遺贈をうけたことで会社が負担する税金などの問題に関して税理士先生の指導を受け処理していく必要も生じることになります。従って、会社が遺贈を受けることは、プラス面だけではなくマイナス面も含め経営の問題として総合的な視点で考えていく必要があるということになります。公的団体などに現金を寄贈する場合には、このような問題を考慮することは少ないと思われますが、遺贈するものの種類によっては同様の問題を考慮する場合もあり得るということになります。
これらのポイントをまとめると以下のようになります。
相続人以外への遺贈のポイント
- 受遺者の認識と受諾意思 遺贈される法人が、その事実を認識し、受け入れる意思があるか確認する。
- 遺贈後の負担 遺贈によって発生する税金(不動産取得税・固定資産税など)、維持管理費、修繕費などの負担を考慮する。
- 専門家の助言 事前に税理士や事業承継専門家のアドバイスを受け、メリット・デメリットを理解し、自己責任で受諾できるか検討する。
- 遺言の確実な執行 遺言書の紛失・改ざん防止策を講じ、確実に執行される環境を整える。
- 相続人の同意と影響 相続人の同意は必須ではないが、後々のトラブルを防ぐために事前に調整を検討する。 例えば、自身が経営する会社に不動産を遺贈する場合、会社の資産が増加し価値向上につながるが、株主である相続人に影響を与える可能性もある。
遺贈の種類による影響
- 法人への不動産遺贈 → 会社経営に影響、不動産取得税・維持管理費の負担増
- 公的団体への現金寄贈 → 財務負担は少なく、比較的スムーズに実行可能
- その他の財産遺贈 → 受贈者が適切に管理できるか事前の検討が必要
遺贈と死因贈与契約の違い
遺贈(いぞう)
- 性質:遺言によって財産を譲る
- 成立要件:遺言書の作成が必要(公正証書遺言など)
- 撤回の可否:遺言者は自由に遺言を変更・撤回できる
- 受遺者の同意:不要(受遺者は遺言者の死亡後に承諾するのみ)
- 執行方法:遺言執行者が定められている場合、円滑に手続きが進められる
死因贈与契約(しいんぞうよけいやく)
- 性質:生前に契約を結び、死亡後に財産を譲る
- 成立要件:贈与者と受贈者の合意(契約書の作成が望ましい)
- 撤回の可否:契約成立後は原則として撤回不可(特約があれば変更可能)
- 受贈者の同意:必要(契約時点で同意する)
- 執行方法:契約内容に従い、受贈者が権利を取得