
はじめに
日本国内では少子高齢化の進行を背景に、外国人労働者の受け入れ拡大が進められています。 令和6年6月21日には、「出入国管理及び難民認定法」および「外国人技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」の一部改正が公布されました。これにより、技能移転による国際貢献を目的としていた技能実習制度が抜本的に見直され、新たに 育成就労制度 が創設されます。 この育成就労制度は、日本の人手不足分野における人材育成と確保を目的としており、公布日から3年以内に政令で定められる日に施行される予定です。近年、技能実習や留学による在留資格取得者を含め、在留外国人の数は急増しています。令和6年末には、在留外国人数が 376万8,977人(前年比10.5%増) となり、過去最高を更新しました。この増加傾向は今後も続くと予測されます。しかし、この流れに伴い、社会の課題も浮き彫りになっています。例えば埼玉県川崎市では、一昨年に逮捕者を出した騒動を機に治安の悪化が問題視され、河野議員が視察のうえ、不法滞在者の取締強化を主張するなどの動きが見られています。こうした状況は首都圏のみならず、全国各地で在留外国人の人口比率の拡大とともに、多様な課題を引き起こしています。
国際的な視点から見た在留資格の不安定性
一方、海外の動向も日本の在留資格問題を考える上で参考になります。アメリカでは、トランプ政権が 5月22日付で米ハーバード大学の留学生受け入れ機関としての認可を取り消す と発表しました。 この決定を受け、在留資格の安定性について不透明さが増し、「在留資格が絶対的なものではない」という認識を再確認させられる事態となっています。日本国内でも、一度与えられた在留許可を当事者の過失に関係なく一方的に取り消すような事例は、行政法の基本的な論点では考えられないことですが、実際にはこのような決定が行われており、受け入れざるを得ない状況となっています。
三権分立と行政裁量の問題
三権分立の観点から見ると、行政が持つ裁量の枠を逸脱し違法と認定されるかどうかは、今後議論の余地があるでしょう。 しかし、 在留資格の決定は行政裁量権の範囲内で処理され、その権限は行政に属する という見方が一般的です(マクリーン事件 昭和50年(行ツ)第120号)。そのため、行政の判断を覆すことは現実的に困難であると考えられます。
今後の日本の課題
日本の外国人労働者の受け入れ拡大は、人手不足解消のために不可欠な政策ですが、その一方で治安や地域社会との調和といった課題が浮上しています。 この状況の打開には、政治の役割がますます重要になると感じます。地域社会においても 文化の違いを理解し合い、相互に発展する関係性を構築することが不可欠 です。過去の幾たびのコロナ禍のパンデミックを乗り越えてきたように、社会全体が新たな道を模索し、前進することは可能であるはずですし、そう信じたいところです。