多業種の現場を渡り歩き行政書士となった私


 福井県越前市在住、私の行政書士としての原点は、机上の理論ではなく、様々な“現場”にあります。信用金庫の新店舗での勤務経験ををはじめ、テナント管理業、財務会計、運転手、工場、そしてメディアの経営企画や宅建業に至るまで――人の営みに深くかかわる多様な業界で、私は働き、生き、学びました。振り返れば、そのキャリアの軌跡は一貫して「人を育てる力」と向き合う時間でもありました。管理職ではなくとも、常に後輩の育成や仕組みづくりに自然と意識が向いていたこと。それが、これからの行政書士としての業務にとっても確かな礎となっています。 

多様な現場経験が育てた“観察力と共感力”
たとえば、運転手としての経験では、高齢者や障がいを持つ方々とのふれあいを通して「言葉にならない気持ちを察する力」が磨かれました。数秒の会話と表情でその人の不安や期待を読み取り、安全かつ快適な運行に活かす力。これは行政手続きでお客様の真のニーズを見極める際にも極めて重要な感性です。

不動産管理の部門では契約や権利関係の複雑さと向き合い、宅建業の部門では宅建士としての経験が「丁寧に、わかりやすく伝える力」を育みました。また、テナント管理部門ではテナント対応や設備トラブルなど、現場特有の“解決力”が問われる場面に何度も直面。こうした経験は、今、行政書士として複雑な相談に向き合うこととなった際、必ず役立つに違いないと思っています。

メディア経営企画から得た「人づくりの視点」
特に印象深いのが、メディア業界で経営企画として10年間携わった経験です。数多くのスタッフや制作メンバー、それに行政関係者と接する中で、スキルだけでなく“思考の習慣”を育てることの大切さに気づきました。

人を育てるには、マニュアルを渡すだけでは足りません。「なぜこの業務が必要なのか」「どうすればお客様にとって価値があるか」そうした問いを共有できる土壌があってこそ、人は考え、動き、自ら成長していくのだと痛感しました。

また、企画業務では数多くのプレゼンや業務設計を通じて「仕組みの見える化」や「伝える技術」も高めることができました。これらは現在の行政書士業務において、報告書作成や説明責任を果たすうえで極めて重要なポイントとなっています。

「育成」は特別な場ではなく、日常業務に宿る
行政書士という仕事は、法律や手続きのプロであると同時に、“相談を通じて人と伴走する役割”も担っています。申請者の気持ちを理解し、より良い選択肢を提示し、時には勇気づける。これは、単に業務を遂行するだけでは実現しません。育成とは、目の前の相手を“自律的に動ける人”へ導くプロセス。日々の対応の中にそのヒントは散りばめられているのです。

多様性こそ、育成の原動力
私自身、多業種の経験があることで「業界の常識に縛られない発想」や「異分野の知見を活かした問題解決」が可能になりました。現場で学んだことの本質は、役職や肩書きではなく、人と向き合う“姿勢”にあると感じています。

行政書士になってからは、お客様の人生や事業に深く関わる案件に触れることが増えていくことになりますが、過去の現場で得た経験が自分を支えてくれると信じています。そして今、私自身が相談者、あるいは地域の人々を“助けて育てる立場”にあることを誇りに思っています。

行政書士中川まさあき事務所(福井県越前市)