
建設業許可の“鬼門”──技術者要件の落とし穴とは
建設業許可の申請において、多くの経営者が直面する課題が「技術者要件」です。中でも「指定建設業」に該当する業種を扱う場合、その要件の厳しさは一段と増します。特に、「専任技術者」や「監理技術者」の資格・実務経験を証明する場面では、「要件を満たしているつもりだったが、書類が足りない」といったケースも多く、許可取得を断念する事業者も少なくありません。
本記事では、建設業許可における技術者要件の基礎から、指定建設業における特有の注意点、そして要件を満たすための実務的なポイントまで、行政書士の視点から分かりやすく解説します。
なぜ「指定建設業」の技術者要件は厳しいのか?
指定建設業とは、国が特に重要と定めた下記の7業種を指します。
●土木一式工事
●建築一式工事
●電気工事
●管工事
●鋼構造物工事
●舗装工事
●造園工事
加えて、最近では「電気通信工事」も実質的に同等の扱いを受けることが増えています。これらの業種は、公共工事を中心に大規模な施工が多いため、施工体制の確保や技術力の担保が強く求められています。
そのため、許可を取得するには「1級施工管理技士」などの国家資格が基本となり、単なる実務経験や2級資格では要件を満たさないケースもあります。
建設業許可の技術者要件:基本の確認
建設業許可には「専任技術者」と「配置技術者」の2つの役割が存在します。
専任技術者とは?
営業所ごとに1名以上必要な技術者で、その営業所に常勤し、専門的知識・経験を有することが求められます。許可取得時点での要件確認が必須です。
要件は以下のいずれかで認められます:
1級または2級施工管理技士などの国家資格保有
所定の学歴+実務経験年数(例:指定学科の大卒+3年経験)
10年以上の実務経験(資格不問)
配置技術者とは?
現場ごとに必要となる技術者で、「主任技術者」または「監理技術者」に分かれます。
●主任技術者:原則として、工事全般を指導・管理する技術者。専任が求められることもある。
●監理技術者:発注者から直接請け負った特定建設業者に配置義務がある。1級国家資格が必要で、さらに「監理技術者講習修了」などの条件が課せられます。
例外制度の活用も可能:国交大臣の特例認定とは?
資格がない場合でも、一定の実務経験や能力があると認められれば、特例として技術者要件を満たすことが可能です。以下のようなケースがあります。
一般建設業での例外要件(建設業法第7条第2号)
登録基幹技能者:基幹技能者講習修了者で、対象業種において一定の指導的実務経験がある場合。
海外経験者:外国での建設業経験が国内の同等以上と認められた場合。
特定建設業での例外要件(建設業法第15条第2号)
指導監督的実務経験者:発注者直請けの大規模工事で2年以上の監督経験がある者。
国外の施工管理経験者:大規模な海外プロジェクトのマネージャー等としての経験者。
特殊技術を有する者:極めて専門性の高い技能を有し、資格はないがそれに相当する能力があると認められた者。
特例監理技術者制度とは?複数現場の兼任が可能な場合
通常、監理技術者は1現場への「専任性」が原則ですが、一定の条件を満たせば複数現場を兼任できる「特例監理技術者制度」があります。
要件としては以下の通りです:
現場が近接している:物理的に移動が可能な距離。
工事の進行が重複しない:スケジュールが重ならず、各現場に責任を持てる体制。
適切な補助技術者の配置:補助者による現場管理体制の整備。
発注者の承諾:各現場ごとに発注者からの承諾書が必要。
この制度を利用することで、監理技術者の効率的な活用が可能になる反面、証明資料の整備や現場管理の実態報告などが求められます。
技術者要件でつまずかないために:行政書士の視点から
建設業許可の中でも、技術者要件は「書類が複雑でわかりづらい」部分の代表格です。とくに指定建設業や特定建設業を目指す場合には、国家資格に加えて、過去の工事履歴や実務経験を証明する資料(契約書、注文書、請求書、写真など)を細かく整備する必要があります。
行政書士として、以下のような支援が可能です:
適用可能な要件の診断とアドバイス
要件該当性を疎明する証拠資料の整理・補強
特例申請に必要な申述書、経歴書の作成
許可取得後の体制整備に関する助言
まとめ:許可のカギは“技術者の適格性と証明資料”にあり
指定建設業の建設業許可取得は、決して簡単ではありません。技術者要件を満たしているかどうかの判定は複雑であり、要件に該当していても証明できなければ許可は下りません。技術者の確保と書類整備の両輪が求められるのです。
制度は頻繁に改正されるため、最新情報の把握も欠かせません。「もしかして要件に該当していないかも…」という不安を感じたら、まずは専門家にご相談ください。
行政書士中川まさあき事務所では、実務経験豊富な技術者の特定や証明書類の整備も含め、建設業許可の取得をトータルにサポートいたします。まずはお気軽にご相談ください。
行政書士中川まさあき事務所(福井県越前市)