AIを使っても、最後は顔を合わせる仕事です
AIを使っても、最後は顔を合わせる仕事です
AIの進化によって、私たちの仕事の進め方は大きく変わりました。 メールの下書き、資料作成、情報整理、分析、さらには相談への回答案まで、AIが瞬時に提示してくれる時代です。 「対面で話さなくても仕事が進む」「会わなくても完結する」。 そんな感覚を持つ場面も増えているかもしれません。
しかし実務の現場に立っていると、強く感じることがあります。 それは、AIをどれだけ使っても、最後は顔を合わせる仕事に行き着くという事実です。 効率化の先に残るのは、人と人が直接向き合う場面なのです。
AIは「準備」を加速させる
AIが最も力を発揮するのは、準備段階です。 情報収集、選択肢の整理、想定問答の作成など、これまで多くの時間を要していた作業が、短時間で完了するようになりました。 この変化は非常に大きく、仕事の質を底上げしてくれています。
ただし、AIが整えてくれるのは、あくまで土台です。 その情報をどう使うのか、どの順番で伝えるのか、どこまで踏み込むのか。 これらは相手の反応を見ながら判断する必要があり、画面越しや文章だけでは完結しません。
顔を合わせる場面で求められるもの
実際に顔を合わせる場面では、言葉以外の情報が大量に飛び交っています。 表情、声のトーン、間の取り方、視線の動き。 こうした要素は、相手の理解度や納得感を測る重要な手がかりです。
AIは文章や音声を生成することはできますが、その場の空気を読み取り、微妙な変化に応じて対応を変えることはできません。 相手が不安を感じているのか、迷っているのか、それとも納得しているのか。 その判断は、顔を合わせてこそ可能になります。
難しい話ほど、対面が必要になる
条件が複雑な説明、リスクを伴う判断、将来に影響する選択。 こうしたテーマほど、対面でのコミュニケーションが重要になります。 文章やオンライン会議では、どうしても情報が削ぎ落とされてしまうからです。
特に、相手が不安を抱えている状況では、画面越しの説明だけでは十分ではありません。 「この人に任せて大丈夫か」「本当に理解してくれているか」。 その安心感は、直接会って話すことでしか生まれない場合が多くあります。
AIは「代弁」はできても「信頼」は作れない
AIは、適切な言葉を選び、分かりやすく説明することができます。 しかし、その言葉に責任を持ち、信頼を積み重ねることはできません。 信頼は、時間と経験の共有によって生まれるものだからです。
顔を合わせて話すという行為には、「この人は逃げない」「この人は向き合ってくれる」というメッセージが含まれています。 それは、どれだけ完成度の高い文章や資料でも代替できない価値です。
効率化が進むほど、対面の価値は上がる
AIによって多くの業務が効率化された結果、対面の機会そのものは減りつつあります。 だからこそ、実際に会う時間の価値は以前よりも高まっています。
「わざわざ会う」という選択には、理由があります。 その時間に何を話し、何を決めるのか。 対面での仕事は、量よりも質が問われるようになりました。 AIで準備を整えた上で、本当に必要な場面だけ顔を合わせる。 それが、これからの仕事の形なのかもしれません。
顔を合わせる仕事は、逃げ場がない
対面の仕事には、誤魔化しが効きません。 理解していなければ見抜かれますし、準備不足もすぐに伝わります。 AIを使って表面的に整えたアウトプットだけでは通用しない場面です。
だからこそ、顔を合わせる仕事は負荷が高く、同時に成長の機会でもあります。 相手の反応を受け止め、自分の言葉で説明し、責任を持って判断する。 この積み重ねが、仕事の厚みを作っていきます。
まとめ:最後に残るのは、人と向き合う力
AIは、仕事を効率化し、可能性を広げてくれる強力な道具です。 しかし、それだけで仕事が完結するわけではありません。 最終的に価値を生むのは、人と人が顔を合わせ、向き合う場面です。
どれだけ技術が進歩しても、「この人と話してよかった」「この人に任せたい」と思われる仕事は、人にしかできません。 AIを使いこなした先で、あらためて問われるのは、向き合う力そのものです。 その力を磨くことが、これからの時代の仕事の本質と言えるでしょう。
行政書士中川まさあき事務所(福井県越前市)
