財務は「攻め」の前に「守り」を整える仕事です
財務は「攻め」の前に「守り」を整える仕事です
経営の話になると、「どうやって売上を伸ばすか」「次はどんな投資をするか」といった“攻め”の話題が中心になりがちです。 もちろん、成長のためには攻めの姿勢は欠かせません。 しかし、実務の現場で多くの企業を見ていると、強く感じることがあります。 それは、守りが整っていない状態での攻めは、非常に危ういということです。
財務の役割は、華やかな成長戦略を描くことではありません。 まずは会社が倒れない状態を作ること。 つまり、攻めの前に守りを整えることこそが、財務の本質的な仕事です。
財務の「守り」とは何か
財務の守りと聞くと、「節約」や「コスト削減」を思い浮かべる方も多いかもしれません。 しかし、それは守りの一部にすぎません。 本質は、お金が回り続ける仕組みを作ることです。
具体的には、資金繰りの把握、固定費の管理、借入金の返済計画、突発的な支出への備えなどが挙げられます。 売上が一時的に落ち込んでも、資金が尽きなければ会社は存続できます。 財務の守りとは、「最悪の状況でも耐えられる状態」を作ることなのです。
黒字でも倒産する現実
財務の重要性を語る上で、よく知られているのが「黒字倒産」という言葉です。 利益が出ていても、手元の現金が不足すれば会社は立ち行かなくなります。
売上は立っているが入金は先、仕入れや人件費の支払いは先行する。 このズレが積み重なると、帳簿上は問題がなくても、現実には資金が足りなくなります。 このリスクを管理するのが、財務の守りの役割です。
守りがあるから、攻めに踏み出せる
守りを固めることは、攻めを否定することではありません。 むしろ逆です。 資金繰りに余裕があり、リスクを把握できていれば、経営者は安心して攻めの判断ができます。
「この投資が失敗しても、どこまでなら耐えられるのか」。 そのラインが見えている会社ほど、思い切った一手を打つことができます。 財務の守りは、経営者の判断を支える土台なのです。
数字を見ない攻めは、賭けに近い
財務が弱い状態での攻めは、戦略ではなく賭けになりがちです。 感覚や勢いだけで判断し、うまくいけば良いが、外れれば致命傷になる。 この状態は、長く続けられる経営とは言えません。
一方で、財務状況を正確に把握し、複数のシナリオを想定した上での攻めは、リスクを取っても致命傷になりにくくなります。 財務は、ブレーキではなく、安全にスピードを出すための装置とも言えるでしょう。
守りの財務は、地味だが効果が大きい
財務の仕事は、目に見えにくく、評価されにくい分野です。 資金繰りが回っているのは「当たり前」と思われがちで、問題が起きて初めて注目されます。
しかし、問題が起きてからでは遅いのが財務です。 何も起きていない状態を維持していること自体が、財務が機能している証拠です。 この地味な積み重ねが、会社を長く存続させます。
財務は「未来の余白」を作る仕事
守りを整えることで、会社には余白が生まれます。 資金の余裕、時間の余裕、判断の余裕。 この余白があるからこそ、環境の変化に柔軟に対応できます。
逆に、余白のない会社は、常に追われるような経営になります。 目先の資金繰りに振り回され、本来考えるべき中長期の戦略に時間を割けなくなります。 財務の守りは、未来を考える時間を生み出す仕事でもあります。
まとめ:守りなくして、攻めなし
財務は、成長戦略を描くための脇役ではありません。 会社を守り、存続させ、その上で攻めに転じるための基盤です。
派手な成果は見えにくいかもしれませんが、守りが崩れれば、どんな攻めも意味を失います。 まずは守りを整える。 その上で初めて、攻めの一手が活きてきます。 財務とは、その順番を守り続ける仕事なのです。
行政書士中川まさあき事務所(福井県越前市)
