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新設された「企業内転勤2号」とは|育成就労との関係まで(経営者・人事総務向け)

新設された「企業内転勤2号」とは|育成就労との関係まで(経営者・人事総務向け)

新設された「企業内転勤2号」とは|育成就労との関係まで(経営者・人事総務向け)

新設された「企業内転勤2号」とは|育成就労との関係まで(経営者・人事総務向け)

重要(正確性のための前提)
「企業内転勤2号」は、2024年の法改正で制度上“新設”されましたが、運用開始や具体的な基準は関係省令等で整備される領域が大きく、最新の官公庁公表資料での確認が必須です。本記事は、出入国在留管理庁(以下、入管庁)およびe-Gov法令検索等の一次情報に基づき、経営者・人事総務のご担当者の方々にとって少しでも参考になればとの想いからまとめたものです。

1. そもそも在留資格「企業内転勤」とは(従来の枠)

在留資格「企業内転勤」は、海外の本店・支店・関連会社等から、日本にある事業所へ“企業グループ内で”社員を転勤させるための就労資格です。入管庁の案内ページでは、申請書式や制度概要が整理されています。

従来は、いわゆる「技術・人文知識・国際業務」相当の業務を中心に、海外拠点の職員が日本拠点へ“転勤”して活動する枠として理解されてきました(詳細は入管庁の在留資格案内・Q&Aで確認できます)。

2. 「企業内転勤2号」新設のポイント(法令上の位置づけ)

今回新設された「企業内転勤2号」は、企業内転勤の活動類型に“技能・技術・知識(技能等)の修得”を目的とする転勤を位置づけるものです。法令上は、企業内転勤の定義の中に「第2号」が明確に置かれ、

  • 日本側事業所で講習を受け、かつ
  • 技能等に係る業務に従事する

という構造が読み取れます。さらに重要なのは、企業内転勤2号の活動が「企業内転勤(従来型)」や「育成就労」に該当する活動を除くと明記され、制度境界を作っている点です(=“何でも2号で受けられる”ではない)。

3. 企業内転勤2号と「育成就労」の関係性(公的機関の見解を根拠に)

(1)入管庁Q&Aが示す「想定される使い分け」

入管庁が公表している「育成就労制度・特定技能制度Q&A」では、制度見直し後の受入れの考え方として、技能実習で受け入れているような類型の一部を、一定要件の下で“企業内転勤2号”により受け入れることを想定している旨が明記されています。

ここから読み取れる実務的な意味は次のとおりです。

  • 育成就労=外部から“育成・確保”のために受け入れる制度(制度自体が人手不足分野の人材育成・確保を狙う)
  • 企業内転勤2号=同一企業グループ内の海外職員を、日本側で技能等を修得させる目的で“転勤”させる制度

つまり、両者は「技能等を身につける」という点で接点がある一方、誰を(企業内か外部か)、どんな制度設計で(転勤か、受入れ制度か)動かすのかが違う――というのが、入管庁Q&Aが示す“有力な整理”です。

(2)法令上も「育成就労とは別物」として線引きされている

企業内転勤2号の条文構造では、2号の活動から育成就労に該当する活動が除外されています。これは、「人手不足分野の受入れ制度」である育成就労と、「企業グループ内の転勤」である企業内転勤2号が、制度趣旨・監督枠組みの異なる制度であるため、相互に“すり替え”が起きないよう線を引いていると解釈するのが自然です(条文上の除外規定が根拠)。

(3)制度運用は同じタイミングで整備される(施行日が一致)

育成就労制度の施行日は、2027年4月1日と入管庁サイト(制度概要ページ)等で整理されています。企業内転勤2号は、育成就労制度の創設に伴う関係省令整備の中で基準が示されており、同じ制度改正パッケージの一部として同時期に運用が立ち上がる位置づけです。

※実務上は「育成就労の準備=企業内転勤2号の準備にもつながる」ため、人事総務は社内の受入れ体制(研修計画、講習実施、労務管理、説明体制)を同じ地図で整備するのが効率的です。

4. 経営者・人事総務が押さえるべき実務ポイント

(1)「2号は研修目的」—目的と実態が一致しているか

企業内転勤2号は「講習+技能等修得」が中核です。したがって、実態が単なる労働力補充になっていないかが、制度設計上の最大リスクになります。人事総務としては、受入れ前に次を文書化しておくことが安全です。

  • 技能等の到達目標(何をどこまで身につけるのか)
  • 講習カリキュラム(座学・OJTの区分、実施者、時間、評価)
  • 業務従事の範囲(技能等修得と結びつく業務に限定できているか)

(2)受入れ体制・規模の要件(“受けられる会社”が限定される)

企業内転勤2号は、受入れ機関の規模・体制に関する要件が論点として整理され、受入れ人数の上限などが示されています。例えば、関係省令等についての入管庁資料では、受入れ人数を常勤職員人数の5%までとする整理が見られます(制度の適正運用を担保する設計)。

(3)育成就労との“選択ミス”を防ぐチェック観点

観点企業内転勤2号が向きやすい育成就労が向きやすい
人材の出所海外の自社/グループ拠点の職員(転勤)制度に基づき受入れ(外部からの受入れ設計も含む)
主目的講習を受けつつ技能等を修得(研修性が高い)人手不足分野で育成・確保(制度目的に沿った受入れ)
制度境界条文上、育成就労に当たる活動は除外(すり替え不可)育成就労の制度枠内で要件・監督が設計される

上の表は“傾向”の整理です。最終的な判断は、申請時点での最新の要件・運用(告示・省令・審査要領等)を前提に、個別事案で行ってください。

5. まとめ:2号は「育成就労の代替」ではなく、「企業内育成のための転勤枠」

公的機関の情報から整理すると、企業内転勤2号は、育成就労制度の創設と同じ改正パッケージの中で整備され、入管庁Q&Aでは技能実習で受け入れてきた類型の一部を、一定要件の下で企業内転勤2号で受け入れることを想定すると説明されています。一方で、条文上は企業内転勤2号の活動から育成就労に該当する活動が除外されており、両制度は目的・枠組みを分けて運用される設計です。

経営者・人事総務としては、次の3点を優先して準備することが実務上の近道です。

  1. 「研修(講習+技能等修得)」の目的と実態が一致する受入れ計画を作る
  2. 受入れ体制・人数枠など、要件に抵触しない社内運用を整える
  3. 同一企業グループの転勤なのか/育成就労の受入れなのか、制度選択の根拠を社内で共有する

参考文献・出典(官公庁・公的機関)

※:本記事は一般的情報提供を目的とするもので、個別事案の法的助言ではありません。申請・受入れ判断は、最新の官公庁資料・法令・通達等を確認の上で行ってください。

※:「企業内転勤2号は、省令により令和9年4月1日施行と定められていますが、現時点では施行前であり、申請実務は開始されていません。

行政書士中川まさあき事務所(福井県越前市)

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