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日本で頑張ろうとする人が安心して未来を描ける制度なのか

日本で頑張ろうとする人が安心して未来を描ける制度なのか

日本で頑張ろうとする人が安心して未来を描ける制度なのか

日本で頑張ろうとする人が安心して未来を描ける制度なのか
~在留手数料の大幅引上げと経営・管理ビザ3000万円要件を考える~

近年、日本の外国人政策は大きな転換点を迎えています。

在留資格の変更・更新、永住許可などに関する手数料の見直し、そして在留資格「経営・管理」の要件厳格化は、その象徴的な動きといえるでしょう。

ただし、この問題を論じるときには、まず事実関係を正確に分ける必要があります。

在留手続の手数料については、2025年4月1日から、出入国管理及び難民認定法施行令の一部改正により、在留資格変更許可等に係る手数料額が改定されました。入管庁は、改定後の手数料は2025年4月1日以降に受付をした申請に適用され、2025年3月31日までに受付した申請については、許可や交付が4月1日以降となっても改定前の手数料によると説明しています。

また、在留資格変更、在留期間更新、永住許可などの手数料については、法律上の上限額を大幅に引き上げる改正も行われています。法務省資料では、在留資格変更許可、在留期間更新許可の上限を10万円、永住許可の上限を30万円とする内容が示されています。ここで注意すべきなのは、これは「法律上の上限額」であり、実際に申請者が納付する具体的な金額は政令等で確認する必要があるという点です。

一方、経営・管理ビザの要件厳格化は、2025年10月16日に施行された上陸基準省令等の改正によるものです。入管庁は、在留資格「経営・管理」に係る上陸基準省令及び入管法施行規則の一部が改正され、令和7年10月16日に施行されると公表しています。

つまり、手数料改定と経営・管理ビザの要件改正は、同じ一つの改正ではありません。日付も法形式も異なります。この点を混同せずに整理したうえで、今回の制度変更が何を意味するのかを考える必要があります。

制度の厳格化には理由がある

私は、制度改正そのものを否定するつもりはありません。

外国人の在留者数が増える中で、地域社会では実際にさまざまな課題が起きています。

ごみの分別ルールをめぐるトラブル、深夜の騒音、交通ルールへの理解不足、生活習慣や文化の違いから生じる近隣住民との摩擦、自治会や地域行事との関係など、現場では決して小さくない問題が起きています。

また、一部では事件・事故、不法就労、迷惑行為、実体の乏しい会社設立などが問題となり、地域住民の不安につながっている地域もあります。

もちろん、これは外国人全体の問題ではありません。

大多数の外国人の方は、真面目に働き、税金や社会保険料を納め、地域社会の一員として生活しています。

しかし、一部の問題行動によって地域住民の不安が高まっていることもまた事実です。

その意味で、在留管理を適正化し、制度の不適切な利用を防ぐ必要があることは理解できます。

問題は、制度を厳しくすること自体ではありません。

どの程度厳しくするのか。どのような説明をするのか。そして、既に日本で生活し、事業を営み、人生設計を立ててきた人への配慮をどうするのかです。

在留手数料の大幅引上げが投げかける問題

永住許可は、外国人にとって非常に大きな意味を持つ在留資格です。

在留期間の更新が不要になり、就労制限もなくなります。住宅ローン、子どもの進学、家族の生活設計、事業活動にも大きく関係します。

そのため、永住許可という大きな利益を受ける人に対して、一定の手数料負担を求めること自体には合理性があります。

これは行政法でいう「受益者負担」の考え方です。

パスポート、住民票、戸籍謄本、各種許認可申請など、行政サービスを受ける人が一定の手数料を負担する仕組みは多くあります。

しかし、受益者負担だからといって、どこまでも負担を引き上げてよいわけではありません。

特に、永住許可の手数料上限が30万円とされることは、従来の1万円という水準から見れば非常に大きな変更です。

もちろん、上限が30万円になったからといって、実際の永住申請手数料が直ちに30万円になると断定することはできません。

しかし、制度として大幅な負担増の方向に進んでいることは明らかです。

ここで問われるべきは、なぜその金額なのか、審査コストとどのような関係があるのか、負担増によってどのような行政目的を達成しようとしているのか、という点です。

金額が高いことだけが問題なのではありません。

説明が十分でなければ、制度への信頼が損なわれることが問題なのです。

経営・管理ビザの資本等要件 500万円から3,000万円への引き上げ

経営・管理ビザの改正も、非常に大きな影響があります。

従来は、資本金等500万円以上という基準を満たすことで、小規模な起業でも在留資格取得を検討できる余地がありました。

しかし、2025年10月16日施行の上陸基準省令等の改正により、資本金等要件 3,000万円以上、常勤職員1名以上の雇用、日本語能力、経営・管理に関する経歴や学歴、事業計画書の専門家確認などが求められることになりました。入管庁は、主な改正内容として、1人以上の常勤職員の雇用、3,000万円以上の資本金等、日本語能力、経歴・学歴、事業計画書の確認などを示しています。

これは単なる微調整ではありません。

制度の入り口そのものを大きく変える変更です。

行政側には、実体のない会社設立を防ぎたいという考えがあるのでしょう。その目的自体は理解できます。

形式だけの会社を作り、実際には事業を行わないようなケースを防ぐ必要はあります。

しかし一方で、3,000万円という金額は、本気で日本で起業したい外国人にとっても高い壁になります。

地方で小さな飲食店を始めたい人、ITサービスを立ち上げたい人、貿易業を始めたい人、地域に根差した事業をしたい人。

その中には、将来有望な経営者もいるはずです。

起業家の価値は、最初に持っている資金額だけで決まるものではありません。

事業構想、経験、人脈、努力、地域との関係、継続する力も重要です。

もちろん、外国人経営者に一定の実体を求めることは必要です。

しかし、基準が急激に上がることで、挑戦の機会そのものが狭まる可能性もあります。

すでに経営・管理ビザで事業を行っている人はどうなるのか

今回の改正で、多くの方が最も不安に感じるのは、「すでに経営・管理ビザで在留し、事業を行っている人はどうなるのか」という点ではないでしょうか。

例えば、10年以上前に経営・管理ビザを取得し、飲食店、貿易業、小売業、サービス業などを営みながら、日本で安定的に生活してきた外国人経営者は少なくありません。

この方々にとって、これまで500万円を前提として許可されてきた制度が、3,000万円へと変更されることは、生活と事業の将来に直結する大きな問題です。

この点について、入管庁は「施行日前に受け付け、審査を継続している在留資格認定証明書交付申請や在留期間更新許可申請等については、改正前の許可基準を適用する」としています。

また、すでに「経営・管理」で在留中の方が、施行日から3年を経過する日、すなわち令和10年10月16日までの間に在留期間更新許可申請を行う場合については、改正後の基準に適合しない場合であっても、経営状況や改正後の基準に適合する見込み等を踏まえて許否判断を行うとされています。

さらに、施行日から3年を経過した後の更新申請については、改正後の基準に適合する必要があるとしつつ、改正後の基準に適合しない場合でも、経営状況が良好であり、法人税等の納付義務を適切に履行しており、次回更新申請時までに新基準を満たす見込みがあるときは、その他の在留状況を総合的に考慮して許否判断を行うとされています。

つまり、現在500万円基準で許可を受けている経営者が、次回更新時までに必ず3,000万円へ増資しなければ直ちに不許可になる、という単純な話ではありません。

ただし、将来的には新基準への適合が強く求められる方向であることも明らかです。

特に重要なのは、経営状況、納税、社会保険、労働保険、事業の継続性、今後の基準適合見込みを、資料で説明できるようにしておくことです。

入管庁は在留期間更新時に、労働保険、社会保険、国税・地方税など公租公課の履行状況を確認するとしています。

したがって、既存の外国人経営者にとっては、単に資本金の問題だけでなく、経営の実体、納税、社会保険、雇用管理を日頃から整えておくことが重要になります。

地域社会の不安と外国人本人の人生設計

ここで大切なのは、地域社会の不安と外国人本人の人生設計を、どちらか一方だけで考えないことです。

地域住民からすれば、ごみ出しのルールが守られない、夜間に騒音がある、交通マナーに不安がある、言葉が通じず注意もしにくい、という悩みは切実です。

実際に生活環境が悪化している地域では、「もっときちんと管理してほしい」という声が出るのも当然です。

一方で、日本で暮らす外国人の多くは、仕事をし、税金を納め、家族を支え、地域の中で懸命に生活しています。

永住を目指す人は、10年単位で日本での人生設計をしています。

経営・管理ビザを目指す人は、事業計画を立て、資金を準備し、日本での挑戦に人生をかけています。

制度とは、単なる書類上のルールではありません。

その人の人生設計そのものに深く関わっています。

法治国家に求められる予測可能性

法治国家において重要なのは、人が将来をある程度予測できることです。

ルールがあるから、人は準備できます。

基準があるから、努力できます。

将来の見通しがあるから、生活設計や事業計画を立てることができます。

もちろん、制度は変わります。

社会情勢が変われば、法律や基準も変わります。

しかし、長年その制度を前提に努力してきた人がいる場合、急激で大幅な変更には慎重さが必要です。

行政法の世界では、信頼保護、法的安定性、比例原則、平等原則といった考え方があります。

難しい言葉ですが、簡単に言えば、「国がルールを変えるときも、それを信じて準備してきた人のことを無視してはいけない」という考え方です。

在留資格制度も同じです。

真面目に税金を納め、年金を納め、地域で生活し、将来の永住を目指してきた人。

日本で事業を始めるために準備してきた人。

すでに日本で店を構え、雇用を生み、納税し、地域社会の一員として生活してきた人。

そうした人たちに対して制度を大きく変えるのであれば、十分な説明、経過措置、相談体制が必要だと思います。

過去の判例から見える行政裁量の限界

過去の判例を見ると、税金、行政手数料、公的負担、許認可制度の設計について、裁判所は国会や行政に広い裁量を認める傾向があります。

つまり、「高い」「厳しい」というだけで、直ちに違法・違憲と判断される可能性は高くありません。

登録免許税、印紙税、国立大学授業料、各種許認可制度に関する争いでも、裁判所は制度設計について立法府や行政の判断を尊重する傾向があります。

しかし、だからといって何でも許されるわけではありません。

裁判所が重視するのは、制度目的との合理的関連性、負担の程度、公平性、説明可能性です。

今回の在留手数料や経営・管理ビザの要件変更についても、行政目的そのものには合理性があります。

しかし、その負担の大きさ、変更の急激さ、既に準備していた人への影響については、今後も丁寧な検証が必要です。

厳しさと信頼をどう両立させるか

これからの外国人政策に必要なのは、単なる厳格化ではなく、「厳しさ」と「信頼」の両立ではないでしょうか。

地域社会の安全と安心は守らなければなりません。

ごみ問題、騒音問題、事件・事故、生活習慣の違いから生じるトラブルに対して、行政が無関心であってよいはずがありません。

また、制度を悪用する人や、実体のない会社設立を行う人に対しては、厳格な対応が必要です。

しかし同時に、真面目にルールを守り、日本で生活し、働き、事業をしようとしている人たちまで、将来が見えなくなってしまっては困ります。

制度の厳格化は必要です。

しかし、そこには合理性、透明性、説明責任、経過措置が必要です。

外国人を受け入れるということは、単に労働力を受け入れることではありません。

人を受け入れるということです。

そこには生活があり、家族があり、地域があり、人生があります。

行政書士としてできること

行政書士として、私はこのような制度変更をただ批判するのではなく、正確に理解し、必要な情報を分かりやすく伝えることが大切だと考えています。

永住申請を考える方には、納税、年金、健康保険、収入、在留状況、家族構成、過去の違反歴などを早めに確認していただく必要があります。

経営・管理ビザを考える方には、資本金等要件 3,000万円だけでなく、常勤職員、事業所、事業計画、日本語能力、経営経験、税務・社会保険・労務管理まで、総合的な準備が必要になります。

既に経営・管理ビザで事業を行っている方については、今後の更新に備え、決算書、納税証明、社会保険・労働保険関係、許認可、雇用契約、事業計画、資金計画などを整理しておくことが重要です。

また、地域社会との関係も重要です。

日本で暮らす以上、ごみ出し、騒音、交通ルール、近隣関係、自治体のルールを理解することは欠かせません。

外国人本人の努力だけでなく、受け入れる側の説明、支援、相談体制も必要です。

制度が厳しくなる時代だからこそ、専門家には、書類作成だけではなく、制度と人、行政と生活、外国人と地域社会をつなぐ役割が求められていると思います。

まとめ

 在留手数料の見直しと、経営・管理ビザの資本金等要件 500万円から3,000万円への大幅な要件変更。

これらは単なる制度改正ではありません。

日本がこれから外国人とどのように向き合うのかを示す、大きな転換点だと思います。

地域社会で問題が起きていることは事実です。

ごみ、騒音、事件・事故、生活習慣や文化の違いから生じる課題に、きちんと向き合う必要があります。

その意味で、制度の適正化や在留管理の強化は必要です。

しかし同時に、日本で真面目に暮らし、働き、事業をしようとしている人が、安心して未来を描ける制度であることも大切です。

国はルールを変えることができます。

しかし、制度の向こう側には、一人ひとりの人生があります。

厳しさだけではなく、納得できる説明を。

管理だけではなく、共に暮らすための支援を。

負担増だけではなく、予測可能性と信頼を。

これからの外国人政策には、そのようなバランスが求められているのではないでしょうか。

行政書士として、私はこれからも制度改正の内容を正確に伝えながら、日本で真面目に暮らし、働き、事業を行おうとする方々、そして地域社会の安心の双方に寄り添っていきたいと思います。

※本記事は、執筆時点で確認できる出入国在留管理庁等の公表情報をもとにした一般的な解説です。実際の申請手数料、施行時期、経過措置、個別申請の可否については、必ず最新の公表情報や専門家に確認してください。

追伸:入管当局の最前線では限られた人員で激務をこなす

入管当局の職員の方は、これら入管法の各制度を法に則り的確に運用する責任があります。しかし、在留外国人が急増する世の中にあって、少数の限られた人員で、増加する一方の窓口対応・電話対応・事務作業と過酷な日々の業務に追われているのが実情です。在留外国人の増加数に応じて職員数を見直しするというのも難しいようですし、御多分に漏れず、このような法改正や社会情勢の変化に伴い、どうしてもいちばん負担が大きくなるのは行政の最前線にいる方々です。民間企業でも、カスタマ―ハラスメントが社会問題化する中、日頃から丁寧で、献身的な対応をいただく職員の方に対し、改めて敬意を表し、感謝の気持ちを忘れないようにしたいと思っています。入管法の制度上の問題を入管当局に投げかけるというのは、筋道が違うということも理解することが大切で、社会全体の高度な思考を要する問題と解釈すべきだと思います。

行政書士中川まさあき事務所

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