
行政書士法の一部を改正する法律が議員立法により成立し、令和7年6月13日公布されました。改正法は、令和8年1月1日に施行されることとされています。改正の主な内容は次の通りです。
行政書士の使命
行政書士は、その業務を通じて、行政に関する手続きの円滑な実施に寄与するとともに国民の利便に資し、もって国民の権利利益の実現に資することを使命とするものとされたこと。(第1条関係)
職責
1 行政書士は、常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、公正かつ誠実にその業務を行わなければならないものとされたこと。
2 行政書士は、その業務を行うに当たっては、デジタル社会の進展を踏まえ、情報通信技術の活用その他の取組みを通じて、国民の利便の向上及び当該業務の改善進歩を図るよう努めなければならないものとされたこと。(第1条の2関係)
特定行政書士の業務範囲の拡大
特定行政書士が行政庁に対する不服の申立ての手続きについて代理し、及びその手続きについて官公署に提出する書類を作成することができる範囲について、行政書士が「作成した」官公署に提出する書類に係る許認可等に関するものから、行政書士が「作成することができる」官公署に提出する書類にかかる許認可等に関するものに拡大することとされたこと。(第1条の4第1項第2号関係)
業務の制限規定の趣旨の明確化
行政書士又は行政書士法人でない者による業務の制限規定に、「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」の文言を加え、その趣旨を明確にすることとされたこと。(第19条第1項関係)
両罰規定の整備
行政書士又は行政書士法人でない者による業務の制限違反及び名称の使用制限違反に対する罰則並びに行政書士法人による義務違反に対する罰則について、両罰規定を整備することとされたこと。(第23条の3関係)
施行期日
改正法は、令和8年1月1日から施行することとされたこと。
今回の改正でいちばん注目したいのが、特定行政書士の業務範囲の拡大についてです。特定行政書士による従来の業務範囲については、かねてより懸案事項として様々な意見がネットでもあがっておりました。従来は「行政書士が作成した案件」に対してのみ関与ができると解釈されており、それではあまり現実的ではないのではないか、端的にいえばあまり存在意義がないのではないか。等という指摘が多くあったことも事実です。今回の改正により、そのような懸案事項は解消されたことになりますが、と同時にとても重い職責を担うということになります。
そして、その次に注目したいのは、「デジタル社会の進展を踏まえ、情報通信技術の活用その他の取組みを通じて、国民の利便の向上及び当該業務の改善進歩を図る・・・」という点です。これは、次に来る、既にもう来ている、AI活用社会を意識している、若しくは意識する必要があるということが根底にあるように感じます。キャッシュレス社会やAI導入に関しては他国より遅れている、あるいは慎重であるという日本においては、良い意味でも悪い意味でも社会の変化には敏感である必要があります。当事務所におきましても、積極的に改善進歩を図るよう努めたいと思います。
行政書士中川まさあき事務所