国籍の取得、留保、選択、放棄 

 日本においては、国籍に関する規定は国籍法第2条に定めがある通り、父母両系血統主義となっています。また、原則として二重国籍を認めていない国ということになります。これは、国籍法第10条(外国籍を自発的に取得した場合の日本国籍の喪失)と、出生などにより二重国籍となった者に対し、所定期間内にどちらかを選択することを求める国籍法第14条の規定により、事実上二重国籍を維持することができないと解されていることなどからそのような解釈が導かれます。

 他国の例では、中国は二重国籍を認めていない国のひとつで、一方、アメリカやフランスは二重国籍を認めている国になります。このことは日本では選択猶予期間が過ぎると不適法な状態となる一方で、アメリカでは適法状態ということもあり得ることを意味します。アメリカに在住する22歳未満の二重国籍の方の話しとして、パスポートもアメリカと日本の二種類を使い分けるといったこともあるようです。パスポートが二種類あるなんて考えにくいですが、実際にはそのようなことも起こりえるということになります。

では、他の国ではどのような取り扱いになっているのでしょうか。
以下は、国籍の取扱いを①父系血統主義、②父母両系血統主義、③出生地主義を主な国別に区分したものになります。

①父系血統主義は,その国の国籍を有する父の子として生まれた子に,その国の国籍を与える主義 (クェート、アラブ首長国連邦、サウジアラビアなど)
②父母両系血統主義は,その国の国籍を有する父又は母の子として生まれた子に,その国の国籍を与える主義(日本、韓国など)
③出生地主義は,その国で生まれた子に,その国の国籍を与える主義(アメリカ、カナダ、ブラジル、ペルーなど)

但し、これらはあくまでも原則であり、例外もあります。例えば、日本における国籍法において国籍を有せず日本で生まれた子供は日本国籍を取得するという規定は、例外的に出生地主義があてはまる事になり、人権を守るという立場から当然に導かれることになります。アメリカにおいては、血統主義が補完的に重要な役割を果たしているともいわれています。

以上のことから、父母がそれぞれ違う国籍である場合において、その親から生まれた子供や出生主義の国で生まれた子供の場合には、その国籍がどのように扱われるか分かりにくい点があると思います。

日本国籍と外国籍が自動に付与される場合、国籍選択義務が生じます。例えば、母が日本国籍で父が父系血統主義国(例:クウェート)出身の場合、または父母の一方が日本国籍で他方が父母両系血統主義国(例:韓国)の場合、子は両国籍となります。さらに、日本人親の子が生地主義国(例:米国、加国、ブラジル、ペルー)で生まれた場合や、外国人父の認知、養子縁組、婚姻等で外国籍を得た場合、または日本国籍取得後も外国籍を保持する場合も同様です。
国際結婚する場合、当事者の国籍はそれぞれ原則維持され、当事者間においてどちらかの国で永住権を取得するかといったことや、帰化するかどうか検討することなどは、これとは別の次元の問題ということになり、国籍の影響がでるのはあくまでもその子供たちということになります。

このような場合において、アメリカ人と日本人の場合を例にすれば、次のような点を意識することになります。これらは、対象国の法体系により対応が異なりますので、詳しくはそれぞれの国で個別に対応する必要が生ずる点をご理解ください。


【出生届をする】
日本国籍を保持するためには、在外公館(日本大使館や総領事館)を通じて出生届を提出し、戸籍に登録する必要があります。尚、アメリカ国籍に関しては、出生証明書(Birth Certificate)が発行されますので、生まれた時点でアメリカ国籍を取得することになります。

【国籍留保の届出をする】
日本は「父母両系血統主義」を採用しているため、両親のどちらかが日本国籍を持っていれば、その子供も日本国籍を取得できます。ただし、日本国籍を保持するためには、出生後3か月以内に日本の出生届を提出し、「国籍留保の届出」を行う必要があります。


【国籍の選択をする、放棄する】
二重国籍となった場合、日本では22歳までにどちらかの国籍を選択する必要があります(国籍法に基づく国籍選択義務)二重国籍となったアメリカ国籍を放棄する場合は、本人が本人の意思でアメリカ大使館などで手続きをすることになります。

以上、今日は国籍と国際結婚と出生の関係を少し掘り下げてご紹介させていただきました。

行政書士中川まさあき事務所