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株式会社と合同会社 どっちを設立するか迷ったとき

株式会社と合同会社 どっちを設立するか迷ったとき

合同会社(LLC)と株式会社の違いを行政書士が徹底解説|メリット・デメリット・税制・経営構造まで比較

合同会社(LLC)は、平成17年の会社法施行によって創設された新しい会社形態で、アメリカのLLC(Limited Liability Company)を参考に導入されました。しかし、税制や経営構造には大きな違いがあります。本記事では、行政書士の視点から、合同会社と株式会社の違いを実務的かつわかりやすく整理します。

1.合同会社(日本版LLC)の特徴|アメリカ版LLCとの違い

●合同会社とは

合同会社は、出資者(社員)が自ら経営に携わることができる柔軟な会社形態です。少人数の会社やスタートアップ、大企業の子会社・ファンドなど幅広く利用されています。

●アメリカLLCとの主な違い:パススルー課税の有無

  • アメリカLLC:パススルー税制(法人税なし。構成員の所得として課税)
  • 日本の合同会社:法人税の課税対象(株式会社と同じ)

税制が異なるため、アメリカLLCと完全に同じ制度ではありません。

2.「合同会社は信用されない」は本当か?実際の評価と変化

合同会社が導入された当初は馴染みが薄く、「代表社員」「社員」という呼称に抵抗感がありました。特に年配層では「株式会社の方が信用できる」という反応が多かったのも事実です。

しかし近年では、

  • 新設法人の約3割が合同会社
  • Amazon、Google、日本の大企業も合同会社形式の子会社を活用
  • スタートアップの標準形態として普及

このように、時代とともに合同会社への抵抗は薄れつつあります。

3.ただし「上場・成長戦略」では株式会社に軍配があがる

合同会社は自由度が高い反面、以下のような制約が存在します。

  • 株式公開(IPO)ができない
  • 株式による資金調達ができない
  • 決算公告義務がなく透明性で劣るため、金融機関の与信で不利になる場合がある

そのため、将来的に事業を大きく成長させたい場合は株式会社の方が適しています。

4.【比較例】2人で会社を設立する場合の「株式会社」と「合同会社」

実務で多い、「2人出資・1人が経営者」という例で比較します。

●比較表:株式会社 vs 合同会社

項目株式会社合同会社
出資者の呼称株主 A(200株) B(100株)社員 A(200万円) B(100万円)
責任有限責任有限責任
代表者取締役 A(代表取締役)代表社員 A
※定款で業務執行社員を限定できる
議決権持株数に比例出資額と無関係に自由に設定可能
経営判断株主総会・取締役会社員の過半数や全員一致など自由に設定
定款の認証公証役場で認証が必要不要
機関設計株主総会・取締役(※規模により監査役等)特に義務なし
法人税課税対象課税対象
登記費用登録免許税最低15万円最低6万円
決算公告義務あり義務なし
配当1株あたり金額で決定分配割合を自由に設定可能
許認可との関係役員の要件・財務要件などあり株式会社とほぼ同様
銀行融資代表取締役保証が多い代表社員または全社員の保証を求められる傾向
代表者死亡時株主の相続により経営権移転が成立しやすい持分の相続は定款次第。他社員との関係悪化リスクあり

5.合同会社は自由度の高さが魅力。しかし「信頼関係」が絶対条件

合同会社は自由な利益分配や柔軟な経営体制が可能ですが、その分、出資者間の信頼関係が何より重要です。

特に、

  • 友人同士で設立するケース
  • 社員が途中で抜ける可能性がある場合

などでは、会社の運営が不安定化するリスクがあります。 社員間の価値観のズレが、そのまま経営の混乱につながると言っても過言ではありません。

6.過去の「インボイス制度」による合同会社設立ブームについて

インボイス制度導入前には、「消費税の免税事業者扱い」を目的とした合同会社設立が増えた時期がありました。しかしこれは本質的な事業戦略ではなく、一時的な現象といえます。

今後は、

  • 副業・スモールビジネスの増加
  • オンライン事業者の増加
  • 外資系企業の日本法人設立

などを背景に、「コストを抑えながら柔軟に経営したい層」に合同会社が選ばれていくと考えられます。

7.まとめ|合同会社は「自由で保守的な会社形態」

合同会社は、設立コストが低く、運営が柔軟で、利益分配の自由度が高い点が魅力です。一方で、公開性・透明性の面では株式会社に及ばず、金融機関や取引相手から見た信用力では不利な点もあります。

結論として、合同会社は、

  • 少人数で機動的に経営したい
  • 社内の信頼関係が強い
  • 外部株主を入れる予定がない

という場合に非常に適した会社形態です。

一方で、

  • 将来的に事業を大きくしたい
  • 株式公開・資金調達を見据えている
  • 外部の信用をより重視したい

という場合は、株式会社の方が向いているといえます。

合同会社は「自由」でありながら「関係性への依存度が高い」という意味で、ある種の保守性を持ち合わせた会社形態といえるでしょう。

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