一般的に、会社を設立する場合の株式会社と合同会社の論点は先に述べましたが、実は、この合同会社は、会社法 第3編 に定めがあるように、持分会社に該当します。持分会社は、3つの会社に分類され、無限責任社員だけからなる「合名会社」、無限責任社員と有限責任社員からなる「合資会社」、有限責任社員からなる「合同会社」の3種類です。ここでいう社員とは、会社を設立するにあたり出資をする者をさし、599条の定めにあるように、業務を執行する社員は、持分会社を代表することになります。つまり、代表社員という肩書にはなりますが、株式会社でいえば、経営者側(社長)と同様の立場ということになります。また、業務を執行する社員が二人以上ある場合は、各自、持分会社を代表することになりますので、代表社員が複数存在することにもなります。
これらを前提として、前回の論点、会社を新たに設立する場合に、株式会社と合同会社のどちらにすべきかということに関し、今回は、合同会社を設立する方にメリットがある例を示します。例えば、二人の仲間同士で、合同会社を設立と仮定した場合、一人は、1000万円を出資できる資力があるのに対して、もう一人は、100万円しか出資できないという場合においても、会社を代表して業務を執行する場合においては、二人とも、権限に差がないということになります。一方の社員は、金はあるけど、ノウハウがない。もう一方の社員は金は出せないけど、実務にたけるというようなケースで、平等な立場で会社経営をしていくという前提に立てば、それなりのメリットがでてくるといえます。逆に、ふたりの意見がたびたび対立するというようでは、デメリットの方が格段に大きくなってしまいますのでそのあたりは念頭にする必要がありますが。
合同会社の設立は、定款の公証人による認証も不要で、設立費用も比較的安くあがり、ランニングコストも少なくて済むなどのメリットがあるということで、選択肢のひとつとする方も一定数あるようです。代表取締役という肩書にも拘らず、代表社員という肩書でも支障がなく、将来会社をどんどん大きくしていくというよりは、自分の資力の範囲内で、機動性のある会社運営をしていきたいという場合は必要十分といえます。
アマゾンやアップルジャパンなども合同会社という形態をとっていることを念頭にすると、一般人から見て、会社設立に関して、法人のグローバル化の潮流の中における合同会社の選択は、まだまだ未知数といっていいかもしれません。そういう意味で、日本に永住資格を持ち、日本で会社経営を営む方などが、本国にいる友人を「経営・管理ビザ」取得を前提に呼び寄せ、新たに、日本国内で許認可の伴う新規法人を設立するといった場面では、これらの選択肢が机上にあがるということになるのでしょう。 いずれにしても、これらに対応するには、入管の専門家、許認可業務の専門家、会社法の専門家、税財務の専門家など、各方面の専門家の知恵を集結してあたらなければならない分野といえます。