銀行から運転資金や設備資金を借入するにあたり、その金利については、固定型と変動型がある点は既に誰もがご承知の通りで、金銭消費貸借契約書に○○%と記載されており、借入実行時において、金利固定型は、変動型より高めの金利設定がされているが、世の中の金利が上昇しても当初の金利は上がらないという利点がある一方で、変動型は、固定型より低めでお得感があるが、世の中の金利が上昇するとそれに付随して上がるという欠点がある(また、その逆の場合もある)という理解をされていると思います。
では、変動型がどのように変動するのかという点についてはどうかというと、日銀が、マイナス金利政策の解除を3月の会合で決定したことを受け、今後の動向に対する関心の高さから、気にする方も増えてきたようです。ここでは、変動金利の根拠がどのようになっているかについて、三種類に分けて例を紹介します。
➀旧長期プライムレート連動型(長プラ連動型)(旧長プラ連動型)
「長期プライムレート」とは、金融機関が優良企業に対して、長期融資に適用する最優遇貸出金利(プライムレート)を指すと定義されています。また、以前の長期プライムレートは、日本長期信用銀行が発行する5年もの利付金融債の発行利率に一定の利率を上乗せして決定されていたようですが、日本長期信用銀行は1998年に経営破綻し、後にSBI銀行となったという経緯があることから、昔、旧長プラ連動にて借入実行した借入残高がある場合は、こちらの方法により連動して適用されているという前提になります。
日銀のホームページに記載される長期プライムレートは、みずほ銀行が独自に自主的に公表したものを掲載しています。一部の金融機関では、このレートを変動金利に連動させている例もあるようです。
②新長期プライムレート連動型(新長プラ連動型)
「新長期プライムレート」は、銀行が1年を超える期間で大企業向けに融資する際の指標となる金利です。融資期間が1年以内の指標金利である短期プライムレートに一定の金利を上乗せして決定されます。
現在、一般的に、金融機関から新規借入の際適用されているのは、この新長プラ連動型だということがいえます。また、この新長プラ連動型の他に、後述するTIBOR連動型もあるようです。
新長期プライムレートは、新長期貸出優遇金利と言われることもあり、
新長期プライムレート=短期プライムレート + ○○%
であらわされ、大企業向けの長期融資の指標とされています。
銀行の金銭消費貸借契約書にも、
利率 年 ○.○〇%
変動金利の基準金利 ○.○〇〇%
年2回見直し 〇/〇日と〇〇/〇日 (変動金利は、新長期貸出優遇金利)
という記載がされることもあります。
変動金利の基準金利=新長期貸出優遇金利=新長期プライムレート
つまり、借入実行時点の金利は、利率年○○%ですが、
新長プラ金利に連動して上げ下げしますよという事です。
③TIBOR連動型
「TIBOR」(Tokyo InterBank Offered Rate)は、日本の銀行間取引における金利を示し、日本円建ての短期金融市場における適用金利を示すものとされています。
具体的には、東京の銀行間取引金利を指し、指定された複数の有力銀行(リファレンスバンク)から報告されたレートを一般社団法人全銀協TIBOR運営機関が集計し、毎営業日に公表するとしています。この指標には日本円TIBORとユーロ円TIBORの2種類があり、それぞれ1週間物、1・3・6・12か月物の5種類が公表されているようです。
TIBOR連動型は、以下のような構成で記載されるようです。
基準金利 〇.○○○〇〇% (融資実行日現在)
適用利率と基準金利の差(スプレッド) +〇.〇〇%
基準金利=TIBOR = 短期金融市場における適用金利相当(前記説明文参照)
スプレッド = 適用金利と基準金利の差 = 融資においては「利鞘」と呼ばれる
融資の決定金利= TIBOR + スプレッド = 適用金利
以上のことから、新長プラ連動型は長プラに、TIBOR連動型はTIBORに連動しているということになります。どちらが得かどうかは、将来の一定の時期に、結果を比較してみないとわからないというのが実際のところです。
【参考】尚、日銀のHPによれば、近年の短期プラの最頻値は 2009年以降 1.475 で推移し、2024年6月現在も変化はなく、長プラは、2009年以降 0.9 ~ 2.3で推移し、2024年6月11日現在 1.8となっています。