①遺言書を書いて残すこと、又は近い将来書いて残したいと考えている方と、②遺言書を残さない、又は、まだ決めていない方について、その理由をまとめると概ね以下の通りとなります。もちろん、それぞれの理由がすべての方に当てはまるわけではありませんので、あくまでも、理由の全てを羅列的にあげているにすぎません。
①【遺言書を書いて残したいと考える理由】
・自分の財産を、希望通りに相続人へ残したいと考えているから
・相続人間で、なるべく争いごとになることを避けたいと考えているから
・相続人が遺産分割協議を経ることなく財産を配分できるため、残された方の負担が少ないと考えているから
・さらに、遺言執行者を指定することで、財産の名義変更や分配の手続きをスムーズに行えるようにしたいから
・相続人以外の特別な方に財産を残したいと考えているから
・財産や負債が多岐にわたり複雑なので、相続人に迷惑をかけたくないと考えているから
②【遺言書を残さない、あるいはまだ決めていない理由】
・そもそも、自分の死後のことを深く考えていないから
・まだまだ、先のことであるのでその時が来たら書けばいいと考えているから
・相続人の数が少なく、財産も負債もしれているから遺言書まで書く必要がないと考えているから
・遺言書を書くことで、かえってややこしくなるのではないかと躊躇しているから
・遺言書を書く方法が解らないし、手続きが面倒と考えているから
・遺言書を書く時間や費用をかけたくないと考えているから
では、遺言書を残した方がいいケースはどういう場合かについてまとめると以下のようになります。
【遺言書を残した方がいいケース】
・特定の方へ相続させたい場合
例えば、
夫婦間に子供がいないため、配偶者の他に親や兄弟が相続人になるため、配偶者に多めに相続させたい
世話になった特定の相続人へ多めに相続させたい
法定相続人以外の特定の方(パートナーや内縁関係の方)へ相続したい
慈善団体へ寄付したい
・再婚歴があり前婚の子がいたり、愛人との間の子がいるようなケースで、話し合いが長期化するおそれがある場合
・相続人の中に、意思疎通が困難な方や行方不明の方などがおられ、分割協議そのものに時間と労力が必要な場合
・相続人の間の仲が悪い場合
・家業を営んでおり、事業用の財産があるなど、事業継承に支障が出ないようにしたい場合
・故人の意思を反映させるため、分配の方法や、割合を指定しておきたい場合
・相続人の数が多数のケースや、財産・負債の種類/金額が多い場合
・配偶者がすでに他界しており、相続人が子供二人以上の場合
・以上の他、遺言書を残したいと考えている場合(争いにしたくない、負担を軽くしてあげたい)
【遺言書の種類】
①自筆証書遺言
手軽に書ける、費用がかからない、他人を介さずに作成できるなどのメリットがある一方で、遺言が確実に実行されるか不確実な要素もあるほか、遺言を見つけ出した相続人は、家裁への検認申立が必要となる。また、遺言書を全文自筆で過不足なく仕上げる必要があり、このため不備により無効となるリスクもある。
②公正証書遺言
遺言者が証人二人とともに公証人役場へ行き作成する形式をとる。(公証人が病室等へ出張してもらうことも可能)遺言書原本は公証役場に保管され、改ざん・紛失の心配もなく、確実に遺言書を残すことができるほか、家裁への検認が不要となり、遺産分割協議も不要となるというメリットがある。ただ、それなりの時間と費用もかかるほか、気軽に変更や再作成できないため、慎重に熟慮した結果に基づき作成する必要がある。
まとめ
こうして考えてみると、遺言書を残すにしても残さないにしても、故人の思いと相続人の思いが相互に理想通りに実現され、希望ある未来へと故人の意思も財産も受けつがれることが望まれます。それに越したことはありません。遺言書を書いたために、家族がそんなはずじゃないと受け止めたり、将来に遺恨を残すことになることを故人が望むはずはありません。理想により近くなる道を探るのが一つのポイントになってくると思います。その意味では、機会あるごとに家族でよく話し合いするというのも大切なことかもしれません。