【導入】AI技術の進化と行政書士業界への影響―福井でも変化の波が到来
ここ数年で急速に進化したAI技術。その代表例として、ChatGPTなどの生成AIが多くの業界にインパクトを与えています。行政書士業界も例外ではなく、福井県内でも少しずつAI活用への関心が高まりつつあります。
なぜ今、行政書士に業務効率化が求められているのでしょうか？それは、制度改正の頻度が増し、顧客ニーズが多様化している一方で、事務処理にかかる時間や人的負担が増大している現実があるからです。特に福井のような地域では、一人または少人数で運営する士業事務所が多く、効率化は業務継続の鍵となります。
この記事では、特定行政書士・申請取次行政書士・宅建士の立場から、AI時代に対応した業務効率化の具体的な戦略を解説します。
行政書士業務における非効率の現状とその課題
まずは、業務のどの部分が「非効率」なのかを明確にし、その背景を整理してみましょう。
手続き書類の作成・チェックにかかる時間
行政書士の主要業務である「書類作成」は、多くの知識と注意力を要する作業です。申請書類や添付書類の整備に加え、法改正への対応や記載漏れの防止など、単純作業に見えて実は高度な業務です。人手での作成・確認では、どうしても時間とコストがかかります。
顧客対応やスケジュール管理の属人化リスク
また、問い合わせ対応やアポイント管理、進捗管理なども属人的になりがちです。事務員がいない事務所では、全てを一人でこなす必要があり、業務の属人化が「対応漏れ」や「二度手間」につながることもあります。
福井の特定行政書士が実践するAI活用の具体例
こうした課題に対し、AIを活用することで効率化を図ることが可能です。ここでは、私が実際に取り入れている・検討しているAIツール活用法をご紹介します。
書類作成支援AI（ChatGPT等）による時間短縮効果
例えば、ChatGPTなどの生成AIを活用すれば、契約書のひな形や申請理由書の草案を自動で作成することが可能です。もちろん、最終的なチェックや表現の調整は必要ですが、ゼロから作るよりも大幅な時間短縮になります。
また、文書の校正や読みやすさの確認にもAIは有効で、作成後の「読み手視点での見直し」に活用することで、より質の高い書類を提供できます。
顧客対応・予約管理における自動化の工夫
問い合わせフォームにChatGPT連携のチャットボットを設置すれば、よくある質問には自動対応が可能になります。さらに、予約管理システムと連携させることで、顧客自身が空き状況を確認し、オンラインで面談予約を完了させる仕組みも構築できます。
福井のように対面主義が根強い地域でも、まずは一次対応だけでも自動化できれば、時間に余裕が生まれます。
宅建士資格を活かした不動産関連業務の効率化戦略
行政書士と宅建士の両資格を活かすことで、特に相続・不動産関連の案件においてAI活用の幅が広がります。
契約書チェックや説明義務の補助にAIを活用
不動産売買や賃貸借契約書のチェック業務では、AIが形式的な誤字脱字、条文構成の妥当性をある程度確認してくれます。また、重要事項説明の内容についても、AIが文章を要約・言い換えすることで、顧客にわかりやすく伝える工夫が可能です。
地域密着型の不動産・相続案件におけるAIとの相性
福井県内では、空き家問題や農地転用など地域に根差した案件が多くあります。AIはその中で、「調査レポートの下書き」や「法令検索」などを補助してくれるため、業務スピードを上げながらも地元に寄り添った対応ができます。
AI活用における注意点と行政書士の責任範囲
AIを導入する上で、忘れてはならないのが「誤情報」や「責任の所在」に関する問題です。
誤情報リスクと専門家による最終確認の重要性
AIが生成する文章は、正確に見えても、法的に不適切な表現や事実誤認を含むことがあります。特に行政手続きでは、わずかな誤記が不許可の原因になることもあるため、最終的な確認は必ず人間が行う必要があります。
プライバシー・守秘義務を守るための運用体制
AIに情報を入力する際は、個人情報や機密情報の取り扱いに注意が必要です。無料のチャットAIでは情報が学習に利用される可能性もあるため、法人向けのセキュリティ対策が講じられたサービスを選び、必要に応じて「社内専用AI」の導入も検討すべきです。
福井・北陸エリアで進める業務改革のススメ
AI活用は大手事務所だけのものではありません。福井や北陸のような地域でも、小規模事務所こそその恩恵を受けやすいのです。
小規模事務所でもできる効率化の第一歩
まずは、ChatGPTの無料版から始めて「自分の業務のどこに使えるか」を体験してみることが大切です。マニュアル作成や社内文書のテンプレート化など、地道な作業から効率化を進めることで、少しずつ業務の質とスピードが向上していきます。
他士業・地元企業との連携による効率化推進
AIの活用は、他士業との連携でも力を発揮します。例えば税理士・司法書士との書類共有、スケジュール調整などもツール化することで、業務の見える化と効率化が図れます。福井の地域特性を活かした「顔の見える連携」と「デジタル化」の融合が鍵となります。
まとめと展望―AIを味方にした行政書士の働き方とは？
AIは、脅威ではなく「働き方を見直すきっかけ」と捉えるべき存在です。行政書士・申請取次行政書士・宅建士として、これまで蓄積してきた知識と信頼をベースに、AIという新しいツールを活用すれば、より多くの依頼者に迅速かつ正確なサポートが可能になります。
今後は「AIに任せられる部分は任せ、人が行うべき業務に集中する」という柔軟な姿勢が、士業の生存戦略として不可欠になるでしょう。福井という地域性を踏まえながら、持続可能な業務体制を築いていきたいと考えています。
行政書士中川まさあき事務所（福井県越前市）
