深夜酒類提供飲食店と風俗営業の違い|届出が必要なケースを行政書士が解説
午前0時から午前6時の深夜時間帯において、酒類の提供を主として行う飲食店を営業しようとする場合、風営法33条に基づき、「深夜酒類提供飲食店営業届(深夜営業届)」を公安委員会に提出する必要があります。
ここでは、深夜酒類提供飲食店に該当するケース・しないケース、風俗営業との違いなどを行政書士の視点から整理して解説します。
1.深夜酒類提供飲食店とは何か(風営法33条)
深夜酒類提供飲食店とは、次の要件を満たす飲食店をいいます。
- 営業時間:午前0時〜午前6時
- 主として酒類を提供している
- 接待行為は行わない
この「主として酒類を提供」という点が重要で、判断基準になります。
2.なぜファミレス等は深夜酒類提供飲食店に該当しないのか
ファミリーレストランなど、深夜に営業している店舗でも、深夜酒類提供飲食店届が不要な場合がほとんどです。
理由は明確で、
酒類は“付随的”であり、主たるサービスではないため
です。
例えばファミレスでは、
- 酒類メニューはある
- しかし飲食提供の主体は料理
という状況であるため、風営法上の「主として酒類を提供する飲食店」には該当しません。
深夜酒類提供飲食店の典型例としては、
- カウンターに酒類が並び、
- 注文に応じて酒類を中心に提供する
いわゆるバー・パブ・ショットバーといった業態がイメージされます。
3.深夜酒類提供飲食店では「接待」はできない
深夜酒類提供飲食店は、あくまで「飲食店」であり、接待行為は禁止されています。
もし接待行為(客の隣に座る、談笑する、特別なもてなしをする等)を伴う場合、必要なのは「深夜営業届」ではなく、
風俗営業(1号営業)の許可
となります。
●風俗営業1号の営業可能時間
風俗営業1号は、原則として、
- 午前0時まで(地域により午前1時まで)
しか営業できません。
したがって、
接待を伴う飲食店が深夜(0〜6時)営業することはできません。
4.風俗営業許可店は深夜酒類提供飲食店届を出せない
よくある誤解のひとつに、
「風俗営業の許可を取っている店でも、深夜に酒を提供するなら深夜営業届を出せるのでは?」
というものがあります。
しかし、結論は明確で、
風俗営業許可(1号)を受けている店舗は、深夜酒類提供飲食店営業の届出をすることはできません。
両者はそもそも制度目的が異なり、並立できない(排他的)関係にあるためです。
5.まとめ:深夜酒類提供飲食店は「深夜・酒類中心・接待なし」がポイント
深夜酒類提供飲食店と風俗営業1号の違いは、以下の3点に整理できます。
- 深夜営業できるかどうか → 深夜酒類提供飲食店は0〜6時OK、風俗営業は不可
- 酒類の位置づけ → 深夜酒類は酒が主、ファミレスは付随
- 接待の可否 → 深夜酒類は接待NG、風俗営業は接待OK
飲食業の許認可は、業態によって必要な手続きが大きく変わる分野です。 行政書士として、事業者が誤解しやすい部分を丁寧に整理し、確実な手続きにつなげていくことが重要だと改めて感じます。
(深夜における酒類提供飲食店営業の届出等)
第33条 酒類提供飲食店営業を深夜において営もうとする者は、営業所ごとに、当該営業所の所在地を管轄する公安委員会に、次の事項を記載した届出書を提出しなければならない。
一 氏名又は名称及び住所並びに法人にあつては、その代表者の氏名
二 営業所の名称及び所在地
三 営業所の構造及び設備の概要
2 前項の届出書を提出した者は、当該営業を廃止したとき、又は同項各号(同項第2号に掲げる事項にあつては、営業所の名称に限る。)に掲げる事項に変更(内閣府令で定める軽微な変更を除く。)があつたときは、公安委員会に、廃止又は変更に係る事項その他の内閣府令で定める事項を記載した届出書を提出しなければならない。
3 前二項の届出書には、営業の方法を記載した書類その他の内閣府令で定める書類を添付しなければならない。
4 都道府県は、善良の風俗若しくは清浄な風俗環境を害する行為又は少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するため必要があるときは、政令で定める基準に従い条例で定めるところにより、地域を定めて、深夜において酒類提供飲食店営業を営むことを禁止することができる。
5 前項の規定に基づく条例の規定は、その規定の施行又は適用の際現に第1項の届出書を提出して深夜において酒類提供飲食店営業を営んでいる者の当該営業については、適用しない。
6 第18条の2の規定は、酒類提供飲食店営業(午前六時から午後十時までの時間においてのみ営むものを除く。)を営む者について準用する。
行政書士中川まさあき事務所(福井県越前市)
