定款作成支援ツールの公開
スタートアップ支援のための「定款作成支援ツール」公開──会社設立がよりスムーズに
日本公証人連合会はスタートアップ支援の一環として、2023年12月26日に「定款作成支援ツール」を公開しました。
このツールは、小規模でシンプルな会社を迅速に設立したいというニーズに対応するため、法務省協力のもと提供されています。
さらに、2024年1月10日からは、同ツールを用いて定款認証を申請する場合、48時間以内に手続きを完了させる「48時間処理」 の試行運用も開始されました。
当初の対象地域は東京都と福岡県のみでしたが、同年9月20日からは埼玉県、千葉県、神奈川県、愛知県、大阪府にも対象が拡大されています。
また、2024年9月20日より、公証役場と法務局が連携し、定款認証と設立登記を合わせて原則72時間以内に完了させる「72時間処理」 も開始されました。
対象地域では、公証役場で認証を受けてから最短3日ほどで会社設立ができる環境が整ったことになります。
加えて、2024年3月1日からは、電子定款の面前審査を原則オンライン(Web会議方式)で行う運用が全国の公証役場で開始されました。
来所負担が大きく軽減され、行政手続のデジタル化が大きく進んでいます。
■ 小規模・シンプルな会社設立の流れ(対象地域)
ここでは、定款作成支援ツールを利用する場合の会社設立手続きの流れを紹介します。
① 定款作成支援ツールのダウンロード
日本公証人連合会のホームページから、
「発起人1名用」または「発起人3名以内用」の定款作成支援ツールをダウンロードします。
② 必要事項の入力
ツールを開いて「コンテンツの有効化」をクリックし、会社の基本情報などの必要事項を入力します。
③ PDFファイルの自動生成
入力が完了すると、以下のPDFファイルが自動的に生成されます。
- 定款
- 委任状(代理人が作成する場合のみ)
- 実質的支配者申告書
- 特別処理申請書(48時間処理の利用申請書)
④ 電子署名または押印
発起人は、作成した定款PDFにマイナンバーカード等を用いて電子署名を行います。
代理人に依頼する場合は、委任状にも電子署名(または書面に印刷して実印押印)が必要です。
⑤ 公証役場へメール送付(事前チェック)
以下の書類を公証役場にメール送信し、事前確認を受けます。
- 電子署名済の定款
- 電子署名済の委任状(代理人が行う場合)
※書面の委任状の場合、委任状と印鑑証明書を郵送または持参 - 実質的支配者申告書
- 特別処理申請書
- 発起人全員のマイナンバーカード画像
- 代理人の身分証明書画像
⑥ 正式申請
公証役場から連絡が届いたら、以下の手続きを行います。
- 法務局の「登記・供託オンライン申請システム」から正式申請
- 面前審査(Web会議方式)の予約
- 手数料の支払い
⑦ 面前審査
予約日時に、公証人による面前審査を受けます(原則Web会議方式)。
希望すれば、公証役場に来所して対面審査を受けることも可能です。
⑧ 定款認証の完了
審査に問題がなければ、公証人が定款データに電子署名を付し、認証手続きが完了します。
■ まとめ
定款作成支援ツールや48時間処理・72時間処理の導入により、会社設立のスピードと利便性が大幅に向上しています。
特に小規模でシンプルな会社を設立したい起業家にとって、利用価値の高い制度といえるでしょう。
一方で、電子署名の手続きは初めての方にはやや複雑に感じられるため、必要に応じて専門家のサポートを受けることも選択肢のひとつです。
