経営者が遺言に記すべき内容とは?

中小企業の経営者にとって、「会社を誰に、どのように継がせるか」は極めて重要な問題です。特に福井県では、家族経営や地域密着型の企業が多く、経営者の高齢化とともに事業承継の必要性が高まっています。そんな中、注目されているのが「遺言書」の活用です。この記事では、特定行政書士・宅建士の視点から、福井県内の経営者が遺言で伝えるべき内容、注意点、そして家族会議や業種ごとの配慮についても詳しく解説します。

なぜ経営者にとって遺言が重要なのか?

経営者の遺言書は、単なる「財産の分け方」ではありません。それは、会社の未来を託す“最終の経営判断”とも言えます。

  • 自社株式の集中と経営権の明確化
  • 不動産や設備の分配
  • 後継者への期待と周囲への配慮
  • 地域との関係性や企業理念の伝達
    これらを明文化しておくことで、遺された家族・従業員・取引先に安心感を与え、トラブルを未然に防ぐことができます。

遺言で記しておきたい主な内容

1. 自社株式の集中と後継者の指定

非上場企業では、自社株式=経営権です。株式が相続人に分散すると意思決定が困難になるため、後継者となる人物に集中して相続させる旨を明記することが重要です。他の相続人とのバランスをとるために、現金や不動産など別の財産を配分する工夫も必要です。

2. 不動産や設備の相続とその負担

事業に使う不動産(土地・建物など)を相続する場合、相続人は次のような負担を背負う可能性があります。

  • 固定資産税
  • 建物の維持・修繕費
  • 管理費(マンション・ビル等)
  • 地域の負担金(私道の維持費、町内会費など)
    これらを考慮せずに「価値があるから」と相続させると、相続人にとっては“負の財産”になりかねません。遺言では「誰に、なぜその資産を託すのか」も含めて明記しておくと良いでしょう。

3. 許認可が関わる事業の引継ぎ

ホテル、飲食店、介護施設、建設業など、営業にあたって許認可が必要な業種では、次のような手続きが必要となる場合があります。

  • 営業許可(旅館業、飲食業など)(※風営4号ホテルの場合、別途風営法許可必要)
  • 消防署・保健所への届出
  • 建設業許可・介護事業所の指定など
    遺言で事業承継の意思を示すだけでなく、許認可や届出の必要性も考慮した準備が必要です。これらの再取得・名義変更に手間取ると、営業停止や収益悪化のリスクもあるため、承継者と事前に連携しておきましょう。

家族会議のすすめ|トラブルを防ぐ鍵は「話し合い」

遺言書は一方的に内容を決めるものではなく、家族との話し合いを通じて作るべきものです。実際、事業承継における最大のトラブルは「相続人同士の感情的な対立」にあります。

家族会議を行うメリット

  • 相続人が遺言の内容を事前に理解・納得できる
  • 誤解や不満を解消しやすい
  • 相続人が役割や期待を認識できる
  • 経営者の「思い」を言葉で伝えられる
    福井県のような地域密着型の経営では、親族・従業員・取引先が密接に関わるため、家庭内の調和がそのまま企業の安定につながります。

業種ごとに異なる注意点

業種によって、遺言で配慮すべき点は異なります。

業種留意点
製造業・建設業設備や不動産が多く、相続税評価や管理負担が大きい。
小売業・サービス業顧客・従業員との信頼関係が資産。引継ぎに人間関係のケアが必要。
宿泊・飲食業営業許可、保健所・消防などの手続きの再取得が必要。
介護・医療系行政への届け出、職員体制の維持、施設運営の継続が課題。

各業種に応じて、法律・許認可・資産評価の専門家と連携することが不可欠です。

ありがちな事例|成功と失敗から学ぶ

成功例:製造業者

公正証書遺言で長男に株式を集中。その他の相続人には別の財産を明記し、家族会議を複数回実施。経営者の理念と従業員への配慮も記されており、社内外で承継が円滑に行われた例。

失敗例:建設業者

自筆証書遺言の内容が曖昧で、相続人間で株式をめぐる争いに発展。建設業許可の更新手続きも遅れ、信用問題に発展した例。

遺言作成におけるポイントまとめ

  • 公正証書遺言の作成で法的トラブルを回避
  • 後継者と家族会議を行い、事前の合意形成を
  • 事業用財産の負担や許認可に留意した記述を
  • 専門家との連携でリスクを最小限に

まとめ|企業を未来へつなぐ「意思表明」を今こそ

福井県の経営者にとって、遺言書は「資産の整理」だけでなく「経営者としての想い」を残す重要なツールです。後継者と家族、従業員、地域社会に対して、経営者としての責任を果たす第一歩でもあります。
「まだ早い」と思っていても、今のうちに意思を言葉にしておくことが、企業の安定と家族の安心につながります。

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行政書士中川まさあき事務所(福井県越前市)