法別表第一に区分された在留資格該当性を考慮するにあたっては、ケースによっては、二つ以上の在留資格があてはまる場合もありえるという点を押さえておく必要があります。例えば、技術・人文知識・国際業務の在留資格を念頭にする場合において、業務内容が所謂ホワイトカラー主体の在留資格(例外あり)といえる、高度専門職、企業内転勤、特活46号(本邦大学卒業者)など求められる基準に差があるにしても、当て嵌め方(条件の限界に当てはめるケースから、条件を下げて当てはめるケースまでの範囲を指しています。条件にあてはまらないものを当てはめるという意味ではありません。)によっては、その後の選択肢が変わってくるということや、すすむべき方向性がその後ちがってくることになるため、依頼人の方の希望する当て嵌め方と、可能な当て嵌め方について、予め、十分な聞き取りと適宜アドバイスする心がけが重要だと考えられています。たとえば、特活46号はN1特活と呼ばれていたということですが、これは、技人国の活動の範囲を広くしたようなイメージの在留資格といえますが、その方が特活46号(本邦大学卒業者)の在留資格の申請を希望していたとしても、従来までの経緯や、その資格を必要とする背景と理由、過去の状況等を総合的に検証した場合において、転職が念頭にあるなら技・人・国の在留資格も説明した方がよいということになります。これは、技人国の在留資格を持っている場合においては、基本的には転職が可能であり、事後的な届出をするだけで足りますが、特活46号の在留資格を持っている場合においては、法務大臣が指定する本邦との公私機関等への転勤は可能ですが、予め、在留資格の変更許可が必要となるため、大きな違いが生じることになるからです。また、在留資格によっては、配偶者の活動の範囲や可否についても差が生じることになりますので、補足説明が必要(下記告示並びに別表参照)と考えられます。具体的には、高度専門職外国人の配偶者は、特活告示33や33-2により就労が可能(下記)ですが、特活46号における扶養をうける配偶者や子は単に家族滞在としての在留資格があるということにとどまり、原則就労はできないことになります。(資格外活動許可を受けた場合を除く)このように、依頼に応じて事務的に申請をする場合のリスクは、意外と大きいことに気づかされます。
在留資格一覧 別表第一の二 別表第二
技 術 本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学,工学その他の自然科学の分野に属する技術又は知識を要する業務に従事する活動(一の表の教授の項に掲げる活動並びにこの表の投資・経営の項,医療の項から教育の項まで,企業内転勤の項及び興行の項に掲げる活動を除く。)機械工学等の技術者
在留期間 5年,3年,1年又は3月
人文知識・国際業務
本邦の公私の機関との契約に基づいて行う法律学,経済学,社会学その他の人文科学の分野に属する知識を必要とする業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動(一の表の教授の項,芸術の項及び報道の項に掲げる活動並びにこの表の投資・経営の項から教育の項まで,企業内転勤の項及び興行の項に掲げる活動を除く。)通訳,デザイナー,私企業の語学教師等在留期間 5年,3年,1年又は3月
一部抜粋
特定活動告示 出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の規定に基づき同法別表第一の5の表の下欄に掲げる活動を定める件(平成2年5月24日法務省告示第131号)
特定活動告示46号
出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の規定に基づき同法別表第一の5
の表の下欄に掲げる活動を定める件(平成2年5月24日法務省告示第131号)46 別表第 11 に掲げる要件のいずれにも該当する者が、法務大臣が指定する本邦の公私の機関との契約に基づいて、当該機関の常勤の職員として行う当該機関の業務に従事する活動(日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務に従事するものを含み、風俗営業活動及び法律上資格を有する者が行うこととされている業務に従事するものを除く。)
47 前号に掲げる活動を指定されて在留する者の扶養を受ける配偶者又は子として行う日常的な活動
一部抜粋
別表第 11
一部抜粋
一 次のいずれかに該当していること。
イ 本邦の大学(短期大学を除く。以下同じ。)を卒業して学位を授与されたこと。
ロ 本邦の大学院の課程を修了して学位を授与されたこと。
ハ 本邦の短期大学(専門職大学の前期課程を含む。)又は高等専門学校を卒業した者(専門職大学の前期課程にあっては、修了した者)で、大学設置基準(昭和 31 年文部省令第 28 号)第 31 条第1項の規定による単位等大学における一定の単位の修得又は短期大学若しくは高等専門学校に置かれる専攻科のうち独立行政法人大学改革支援・学位授与機構が定める要件を満たすものにおける一定の学修その他学位規則(昭和 28 年文部省令第9号)第6条第1項に規定する文部科学大臣の定める学修を行い、かつ、独立行政法人大学改革支援・学位授与機構が行う審査に合格して、学士の学位を授与されたこと。
ニ 本邦の専修学校の専門課程の学科(専修学校の専門課程における外国人留学生キャリア形成促進プログラムの認定に関する規程(令和5年文部科学省告示第 53 号)第2条第1項の規定により文部科学大臣の認定を受けたものに限る。)を修了し、専修学校の専門課程の修了者に対する専門士及び高度専 門士の称号の付与に関する規程(平成6年文部省告示第 84 号)第3条の規定により、高度専門士と称することができること。
二 日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。
三 日常的な場面で使われる日本語に加え、論理的にやや複雑な日本語を含む幅広い場面で使われる日本語 を理解することができる能力を有していることを試験その他の方法により証明されていること。
四 本邦の大学、大学院、短期大学、高等専門学校、第1号ハに規定する短期大学等の専攻科又は同号ニに規定する専修学校の専門課程の学科において修得した学修の成果等を活用するものと認められること。
高度専門職外国人の配偶者の活動等
出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の規定に基づき同法別表第一の5
の表の下欄に掲げる活動を定める件(平成2年5月24日法務省告示第131号)33 高度専門職外国人の配偶者(当該高度専門職外国人と同居する者に限る。)が、本邦の公私の機関との契約に基づいて、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けて行う別表第5に掲げるいずれかの活動
一部抜粋
33 の2 高度専門職外国人であって第2号の4イに該当する者の配偶者(当該高度専門職外国人と同居する者に限る。)が、本邦の公私の機関との契約に基づいて、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けて行う別表第5の2に掲げるいずれかの活動
別表第5
一 研究を行う業務に従事する活動
二 本邦の小学校(義務教育学校の前期課程を含む。)、中学校(義務教育学校の後期課程を含む。)、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、専修学校又は各種学校若しくは設備及び編制に関してこれに準ずる教育機関において語学教育その他の教育をする活動
三 自然科学若しくは人文科学の分野に属する技術若しくは知識を必要とする業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動(法別表第一の2の表の研究の項、教
育の項及び興行の項の下欄に掲げる活動を除く。)
四 興行に係る活動以外の芸能活動で次に掲げるもののいずれかに該当するもの
イ 商品又は事業の宣伝に係る活動
ロ 放送番組(有線放送番組を含む。)又は映画の製作に係る活動
ハ 商業用写真の撮影に係る活動
ニ 商業用のレコード、ビデオテープその他の記録媒体に録音又は録画を行う活動別表第5の2
一部抜粋
一 本邦の大学若しくはこれに準ずる機関又は高等専門学校において研究、研究の指導又は教育をする活動
二 収入を伴う音楽、美術、文学その他の芸術上の活動(法別表第一の2の表の興行の項の下欄に掲げる活 動を除く。)
三 外国の宗教団体により本邦に派遣された宗教家の行う布教その他の宗教上の活動
四 外国の報道機関との契約に基づいて行う取材その他の報道上の活動
五 研究を行う業務に従事する活動
六 本邦の小学校(義務教育学校の前期課程を含む。)、中学校(義務教育学校の後期課程を含む。)、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、専修学校又は各種学校若しくは設備及び編制に関してこれに準ずる教育機関において語学教育その他の教育をする活動
七 自然科学若しくは人文科学の分野に属する技術若しくは知識を必要とする業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動(法別表第一の1の表の教授の項、芸
術の項 及び報道の項並びに法別表第一の2の表の研究の項、教育の項及び興行の項の下欄に掲げる活動を除く。)
八 興行に係る活動以外の芸能活動で次に掲げるもののいずれかに該当するもの
イ 商品又は事業の宣伝に係る活動
ロ 放送番組(有線放送番組を含む。)又は映画の製作に係る活動
ハ 商業用写真の撮影に係る活動
ニ 商業用のレコード、ビデオテープその他の記録媒体に録音又は録画を行う活動
九 本邦の公私の機関との契約に基づいて行う産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する活動で次に掲げるもののいずれかに該当するもの
イ 料理の調理又は食品の製造に係る技能で外国において考案され我が国において特殊なものを要する業務(リに掲げるものを除く。)に従事する活動
ロ 外国に特有の建築又は土木に係る技能を要する業務に従事する活動
ハ 外国に特有の製品の製造又は修理に係る技能を要する業務に従事する活動
ニ 宝石、貴金属又は毛皮の加工に係る技能を要する業務に従事する活動
ホ 動物の調教に係る技能を要する業務に従事する活動
ヘ 石油探査のための海底掘削、地熱開発のための掘削又は海底鉱物探査のための海底地質調査に係る技能を要する業務に従事する活動
ト 航空機の操縦に係る技能について、航空法(昭和 27 年法律第 231 号)第2条第 18 項に規定する航空運送事業の用に供する航空機に乗り組んで操縦者としての業務に従事する活動
チ スポーツの指導に係る技能を要する業務に従事する活動
リ ぶどう酒の品質の鑑定、評価及び保持並びにぶどう酒の提供に係る技能を要する業務に従事する活動
結論としては、在留資格該当性と基準省令適合性だけに注視して、単純な事務作業と化すことのないように、狭義の相当性や、肝心の、その在留資格が本当に求めるべきものであるのかどうか、最善の選択かどうかをその方の家族構成や生活全般、今後の計画をよく吟味するということが何よりも重要ということになります。
そして、今後よりよいアドバイスができるように、また、最終的には依頼者が決めることにはなりますが、ちよっとした気配りにより余計な遠回りなんてことがないように留意していきたいと思います。