待遇改善に思うこと

令和6年11月に行われた業界向けの研修において国土交通省が作成した資料によれば、政府投資額及び民間投資額を合わせた建設投資額はピーク時の平成4年度:約84兆円から平成22年度:約42兆円まで落ち込みましたが、その後、令和6年度は約73兆円となる見通し(ピーク時から約13%減)
○ 建設業者数(令和5年度末)は約48万業者で、ピーク時(平成11年度末)から約20%減。
○ 建設業就業者数(令和5年平均)は483万人で、ピーク時(平成9年平均)から約30%減。

という現状ということだそうです。このことから関連して思うことは、建設業界や宅建業界を含めどちらも日本経済の牽引役を担う業種であることは否定できず、これらの業界への熱い視線が注がれるのも理解できます。建設業界に携わる方々の待遇見直しと改善はこのところ急速に進んでおり、国交省を主体として強力に改善策を推し進めて来られた成果だと評価できると思います。

今後も、日本経済の将来を、若くて頼もしい、決して奢らない誠実な方たちの強力な牽引のもと、着実に発展していいってほしいと願うのは多くの荒波を超えてきた、また、まさしく今荒波を超えるべく奮闘している方や将来を案じる隠居組の方にとっては考え深く切実な願いといってもいいと思います。

しかし、建設業界等に限らず、所謂、3Kを伴う業種は近年の複雑多様化した現代においては、必ずしも建設業界だけなどの問題ではなく、様々な業種、様々な時間帯、様々な状態に対応する方々の問題として取り上げられるべき問題になってきました。介護の現場、教育の現場、保育の現場、医療・救急の現場、公共交通の現場、災害の現場その他漏れていたら本当に申し訳ないのですが、これ以外にも様々なぎりぎりの選択を迫られる現場で奮闘する方々が埋もれているという現実から目を背けないでほしいと思うのです。

これらの考え方の前提として、3Kの真逆の世界の夢物語を否定しているということではありません。若者たちが大きな夢を抱いて、突き進む原動力にもなる。そのようなことも当然あり得ることで、そのようなことがあるからこそ、とてつもない努力と忍耐を経て多くの人々を結果として救うことになることもあるということでしょう。また、まさしく今3Kの問題と戦っておられる当事者の方々も、それを乗り越えた経験を明るい未来に向けた新たな試みにも挑戦することで、更なる進化を遂げる力にもなり得るということにも期待したいのです。

この二つの両面は、決して対立構造として存在するものではなく、並立的に存在して初めて明るい将来を切り開く原動力になりえるというふうに私は個人的に考えています。そして、夢を掴んだ若者が、陰に埋もれる現実的な問題に強力に力を注ぎ、知恵を貸し、大きな変革を与える存在になる。また、ぎりぎりの選択を迫られてた経験を持つ若者がそれぞれ融合することで大きな力となってほしいのです。

近年、権利と義務のバランスの問題から、言いたいことを権利として発言する、知る権利を主張してなんでも知りたがる、その一方で、自制する義務、その他相手の立場を尊重する義務の側面はないがしろにするというアンバランスの状態が日常化し、埋もれる方々、陰で支える方々、黙々と目先の困りごとに向き合う方々に更なる追い打ちを仕掛ける結果になっていることに気が付かない、という現象が多発しているように思います。

現状の改善と新たな夢の原動力は、明るい未来に向けた試みです。よりよい将来を若手の皆さんが様々な困難に立ち向かい乗り越えていかれることを切に願います。

行政書士中川まさあき事務所