本人確認制度がますます厳しくなる?

私のような昭和生まれ年代の方には、抵抗感が強いとされる「本人確認制度」ですが、どのような変遷を辿ってきたのでしょうか?

2001年9月1日午前におきた米同時多発テロの発生を起点として、国際的に急速に関心の高まるテロの不安と恐怖に対する備えや、2000年代になり社会問題化した特殊詐偽の増加など背景に、国内外からも法整備の必要性が論じられてきました。

金融機関等での本人確認に焦点をあてていえば、資金洗浄防止やテロ資金への対策のため、「金融機関等による顧客等の本人確認等に関する法律」により、本人確認に関する規制が強化されたのを皮切りに、不正利用した者に対する罰則を加えて改正施行された「金融機関等による顧客等の本人確認等及び預金口座等の不正な利用の防止に関する法律」を経て、現在は、「犯罪による収益の移転防止に関する法律」に一本化されて、取引の際の本人確認作業などのルール化がなされているようです。また、これらの規制は、金融機関のみならず他の業種・士業(特定事業者)にも拡大され、かつ、取引の内容毎(特定取引等)に細かな規制も加えられる傾向にあります。もちろん、この他にも、個別の法律で本人確認に関する規制も存在するようですが、一般的には、本人確認の規制の多くは「犯罪による収益の移転防止に関する法律」が基本となっていると考えてよさそうです。金融機関以外の業種において、どのような取引に対し、どのような規制が適用されるかについて、一例をご紹介します。例えば、特定事業者に該当する業種のひとつである宅建業者が取り扱う業務に関して、特定業務と位置付けられる「宅地建物の売買又はその代理若しくは媒介業務」を行う場合で、「宅地建物の売買契約の締結又はその代理若しくは媒介」などの特定取引をする場合には、①取引時確認の義務、②確認記録の作成・保存の義務、③取引記録等の作成・保存の義務、④疑わしい取引の届出の義務、⑤取引時確認等を的確に行うための措置を講ずる努力義務が課せられています。

犯罪防止のためには、各機関が連携して対応できるような体制を組むことは重要です。そのためには、多少の事務量の増加もやむを得ないですが、現場の負担はできるだけ軽減するような対策も同時に考えて頂けると助かりますね。

行政書士中川まさあき事務所