会社を設立しようとする場合、まずは、定款を作成する必要があります。定款とはどのようなものかを確認するためには、日本公証人連合会のホームページにてひな型が公開されていますので、イメージを掴むためにも参考にされるのもいいかと思います。ここでは、株式会社の設立を前提とした定款の作成をする際の留意事項について記述していきたいと思います。
定款は、絶対的記載事項と相対的記載事項、任意的記載事項から構成されます。
絶対的記載事項
商 号 登記・供託オンライン申請システムで商号調査 | ※必ず 株式会社を前か後ろに入れる必要がある。 ※知名度が高いとされる有名な会社の商号の使用は認められない。 ※同一住所に同一商号は使用できない。(同じビルに入居するような場合等は注意が必要。 ※法律で禁止されている文字は使用できない。(銀行、大学、病院) ※使用できる文字 ローマ字(大文字・小文字)、アラビア数字、記号(&、ー、‘ , .・ )(文字を区切る際の符号として用いる場合に限る)、空白(ローマ字を用いる複数の単語を区切る場合に限る)、ギリシャ文字やローマ数字は使用できない。 |
目 的 | 事業目的 (多すぎず、少なすぎず、規模にあった適度な数を)(※許認可取得予定業種は必ず明記) |
本店所在地 ※登記や裁判管轄を定めるものとなるため重要 ※許認可事業を行う予定の場合は特に留意 | 最小行政区画である市町村までの記載でも可 例:東京都港区 (発起人の決定書等が必要となる。) 例: ○○県○○市○○町1番1号 ○○県○○市○○町1番1号 Aビル ○○県○○市○○町1番1号 Aビル2階 ○○県○○市○○町1番1号 101号室 ○○県○○市○○町1番1号 Aビル101号室 【※同一商号禁止に留意して住所を決めた方がよい。】 |
設立に際して出資される財産の価額又はその最低額 | 出資財産額 |
発起人の氏名又は名称及び住所 | 印鑑証明書に記載された通りの氏名・名称と住所を記入する必要がある。 |
発行可能株式総数 | 設立時発行株式総数は、発行可能株式総数の四分の一を下回ることはできない。(非公開会社を除く) ※会社設立時までに記載・記録が必要 |
商号 | 同一住所に下記の会社が併存した場合でも認められる | 本店所在地 | 商号が同一又は似たケースで、住所が下記の場合の可否 |
〇の例 | アイウ株式会社 あいう株式会社 | 〇の例 | 株式会社ABC 東京都港区六本木1番1号 株式会社エービーシー 東京都港区六本木1番1号 |
〇の例 | HIJ株式会社 エイチアイジェィ株式会社 | ×の例 | 株式会社ABC 東京都港区六本木1番1号Aビル 株式会社ABC 東京都港区六本木1番1号Aビル2階 |
〇の例 | 田中株式会社 株式会社田中 | ||
〇の例 | 田中株式会社 田中合同会社 |
相対的記載事項
株式の譲渡制限に関する定め | 株式の全部又は一部の種類株式について、その譲渡には会社の承認を得なければならないとすることにより株式の譲渡制限をする。 |
基準日 | 定款に基準日、基準日に関する事項を定めることにより、公告は免除される。(※基準日を定めたときは、2週間前までに当該基準日及び株主が行使することができる権利の内容を公告しなければならない。) |
取締役会、監査役、監査役会、会計参与、 会計監査人、委員会、代表取締役の設置 | これらの会社の機関は、定めがあれば設置が可能となる。 【一般的な機関類型例】 ①株主総会+取締役(1名でも可) ②株主総会+取締役会(3名以上)+監査役(1名以上) 大会社以外の非公開会社は監査役に代えて会計参与を設置できる。非公開会社(監査役会設置会社、会計監査人設置会社を除く)は定款で監査役の権限を会計監査に限定できる。 ③株主総会+取締役会(3名以上)+監査役会(3名以上) |
取締役・監査役等の任期の延長 | 公開会社ではない株式会社の取締役の任期を最大10年に伸長できる。 取締役の任期は原則2年、監査役は原則4年 |
取締役会の招集通知期間の短縮 | 原則1週間前までに通知義務があるが、定款で短縮できる。 |
取締役会決議の省略 | 取締役全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、取締役会の承認決議があったものと看做す旨を定款で定めることができる。 |
役員等の責任の軽減に関する定め | 会社法423条1項に基づく役員等の会社に対する責任(同法428条1項の場合を除く)を株主総会決議により軽減できる他、取締役会決議により責任の軽減をすることができる旨を定めることができる。 |
公告の方法 | 官報による、新聞掲載による、電子公告(ホームページ等)による。※定款に定めなかった場合は、官報掲載が原則 |
変態的記載事項 | 現物出資、財産引受、発起人の報酬・特別利益、設立費用 |
取得請求権付株式に関する定め | 株主が会社に対し株式の買取請求ができる株式に関する定め |
取得条項付株式に関する定め | 一定の事由が生じたとき、会社が買取できる株式に関する定め |
株券発行の定め | 株券不発行が原則。株券を発行する場合はその旨を定款でさだめる。 |
取締役会 | 公開会社は必ず設置する義務がある。 |
剰余金配当の定め | 取締役会設置会社は事業年度の途中において1回限り取締役会決議により配当財産が金銭であるものに限り剰余金の中間配当をすることができる旨を定款で定めることができる。 |
任意的記載事項
事業年度 | 一般的に、記載するのが慣例 |
株主総会に関する定め | 招集時期、招集権者、議長などの定め |
役員の員数 | 会社法に抵触しない限り、役員の人数を自由に定めることができる。 |
以上のように定款の記載事項には、資本金の額はどこにも出てこないようにみえますが、出資財産価額として記載され、それに続き一般的には「当会社の成立後の資本金の額は、金○○万円とする。」と記され、設立の登記が完了すると商業登記簿謄本には資本金の額が記載されることになります。会社法上は資本金1円でも設立できますが、金融機関への与信力の事を考えるとそう簡単に考えることもどうかと立ち止まる必要があります。また、会社設立の目的を各種許認可取得前提で考える場合は、本店所在地、資本金の額、役員等の要件その他様々なことを考えて設定しなければなりません。
行政書士は定款作成のみならず、会社設立に際して様々な角度からアドバイスが可能で、他士業と連携した適確なコンサルティングを得意としています。わかならいことはお気軽にご相談下さい。