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前払式証票等(むかし)と、前払式支払手段(げんざい)

前払式証票等(むかし)と、前払式支払手段(げんざい)

前払式支払手段とは?旧前払式証票規制法との違いと登録制度を行政書士が解説

— プリペイドカード・電子マネーを発行する前に知っておきたい法的ルール —

1.かつての「前払式証票規制法」とは?

金融庁の資料によると、「前払式証票の規制等に関する法律(前払式証票規制法)」は、 「発行等の業務の適正な運営を確保することにより、前払式証票の購入者等の利益を保護し、 前払式証票に係る信用の維持に資すること」を目的として平成元年(1989年)に制定されました。

つまり、「誰でも自由に商品券やプリペイドカードを販売してよい」というわけではなく、 購入者保護の観点から以下のようなルールが定められていました。

  • 一定金額や発行残高を超える場合は、財務局経由で登録が必要。
  • 販売額-利用額=「発行残高」の半分を供託して、万一の倒産時に備える。
  • 発行残高を常に把握し、利用者に開示可能な体制を整える。

この法律により、商品券やプリペイドカードの乱発を防ぎ、消費者が不利益を被らない仕組みが作られたのです。

ただし、無料配布の割引券・キャンペーン券や、自治体発行の地域振興券などは「前払い」を伴わないため、同法の対象外でした。

2.「資金決済法」への移行と制度の近代化

情報通信技術(ICT)の進展により、電子マネーやオンライン決済が急速に普及。 これに対応するため、前払式証票規制法は廃止され、 平成22年(2010年)4月1日施行の「資金決済に関する法律(資金決済法)」に統合されました。

新法では、以下のような制度整備が行われました。

  1. サーバー型前払式支払手段(電子マネー等)も規制対象に追加。
  2. 銀行以外の事業者にも資金移動業を認める新制度を創設。
  3. 銀行間決済の透明性を確保するため、資金清算業(免許制)を導入。

これにより、電子マネーやアプリ内通貨など、デジタル上で発行・管理される前払い型の仕組みも包括的に監督できるようになりました。

3.前払式支払手段の定義とポイント

資金決済法では、「前払式支払手段」を以下の3条件すべてを満たすものと定義しています。

  1. 金額やサービスの数量が記載または記録されている。
  2. 記載された金額や数量に応じた対価が支払われている
  3. その金額・数量に応じて商品やサービスと交換できる

つまり、利用者が事前に支払った金額を元に商品やサービスを購入できる仕組み全般が対象となります。 代表例として、交通系ICカード、オンラインプリペイドカード、アプリ内チャージなどがあります。

また、発行主体や利用可能範囲によって、次の2種類に分けられます。

  • 自家型前払式支払手段:自社のみで利用可能(例:自社商品券)
  • 第三者型前払式支払手段:複数事業者で利用可能(例:電子マネー)

4.登録・届出・供託のルール

発行事業者は、発行残高や利用範囲に応じて次の義務を負います。

  • 発行残高1,000万円を超える場合:財務局への届出が必要。
  • 第三者型を発行する場合:金融庁への登録(資金決済法第3条)が必要。
  • 発行残高の2分の1以上を供託(または保証契約)して、倒産リスクに備える。

登録事業者一覧は、金融庁|資金決済に関する制度で確認可能です。

5.身近な事例:該当するもの・しないもの

  • ○ プリペイドカード、電子マネー(Suica、WAONなど) → 該当
  • ○ ECサイト内のチャージ式ポイント → 該当
  • × 割引券・クーポン(無料配布) → 該当しない
  • × クレジットカード・後払い決済 → 該当しない
  • × 自治体の地域振興券(地方公共団体発行) → 適用除外

6.まとめ:事業で商品券・プリペイドを発行する前に

現在、前払式支払手段を発行するには、資金決済法の登録・届出・供託義務を正しく理解することが不可欠です。 ルールを誤ると、無登録業者とみなされ行政処分や罰則を受けるおそれもあります。

もし、自社で商品券・プリペイドカード・電子ポイントを発行したい場合は、 発行形態・残高・利用範囲に応じて適切な手続きを行いましょう。

行政書士として、登録書類・届出書類の作成支援や、制度設計時の法令適合性チェックもお手伝い可能です。 お気軽にご相談ください。

金融庁|資金決済法の概要を見る


執筆者:中川正明(特定行政書士/申請取次行政書士/宅建士)|福井県越前市

※本記事は金融庁および財務局の公開資料(資金決済法関連)をもとに構成しています。実際の登録・届出の際は最新情報をご確認ください。

⇒ 「行政書士中川まさあき事務所のホームページ」

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