損益計画と資金繰り計画の違い:創業時に必ず押さえておきたいポイント
創業時や経営計画を作成する際、「損益収支計画」と「資金繰り計画」を同じものとして扱ってしまうケースが少なくありません。
しかし、この二つは目的も構造もまったく異なる計画であり、混同してしまうと事業予測に大きなズレが生じてしまいます。
特に混乱の原因になりやすいのが減価償却費の扱いです。
1.損益計画と資金繰り計画を分けて考える必要性
●損益計画に入る項目の代表例:減価償却費
損益収支計画では、減価償却費は経費として計上されます。 しかし資金繰り計画では、減価償却費は実際の現金支出を伴わないため、キャッシュアウトとして扱いません。
この「経費だけれど現金は出ていかない」という性質が、両計画の違いを理解するうえで重要なポイントです。
●逆に「資金繰りには影響するが損益には影響しない」項目もある
例えば、
- 従業員の住民税などの預り金の納付
- 消費税の納付
これらは現金が出ていくため資金繰りには影響しますが、損益には計上されません。
このように、二つの計画には構造的な違いがあり、両者を切り替えて考えなければ正確な経営判断ができないのです。
2.損益計画と資金繰り計画の関係
損益収支計画は、
「売上・費用・利益」がどのように推移するかを月次・年次で示す計画
一方で資金繰り計画は、
損益計画をもとに、実際の現金の出入りがどう動くかを表す計画
という違いがあります。
財務管理ソフトを導入すれば、入力したデータから自動的にBS(貸借対照表)・PL(損益計算書)・キャッシュフロー計算書を作成してくれますが、これはあくまで「前提条件を正しく設定した場合」に限られます。
●前提条件の設定は“人間の判断”が不可欠
どれだけ高機能な会計ソフトでも、
- 売上予測
- 仕入れ・経費の見積り
- 減価償却の方法
- 投資計画
などを適切に設定しなければ、正しい財務データは出てきません。
つまり、創業前や経営計画の段階で「自分で計画を作れるかどうか」が、会計ソフトの精度にも直結するのです。
3.損益計画・資金繰り計画は表裏一体
損益と資金は異なる側面を持ちながらも、事業運営においては切り離せない関係です。
- 損益計画 → 会社が利益を出せるかを見るもの
- 資金繰り計画 → 会社が倒産しないかを見るもの
利益が出ていても資金ショートすれば会社は続きませんし、資金が潤沢でも損益面で利益が出なければ長期的には持続しません。
まさに表裏一体の計画です。
4.経営計画はさらに広く「人・物・金」を含んでいく
損益計画・資金繰り計画の他にも、創業・経営計画では複数の計画が連動します。
- 投資計画(設備・車両・事務所など)
- 人員計画(採用・配置・給与設計)
- マーケティング計画
- 販売計画
そしてこれらすべての上位に位置付けられるのが、
社長自身の経営理念・社是・ビジョン
です。
理念に基づいて事業全体を設計し、そのうえで各計画が一体となって企業の方向性をつくっていきます。
5.行政書士は、創業の総合プロデューサーになれる
会社設立にはじまり、各種許認可、税務・労務の届出、創業計画の作成など、創業者が考えるべきことは非常に多岐にわたります。
それぞれの分野には専門家がいます。
- 税務 → 税理士
- 登記 → 司法書士
- 労務 → 社会保険労務士
- 紛争 → 弁護士
行政書士は、これら専門家と連携しながら、創業者を総合的にサポートできる「プロデューサー」的な立ち位置にいます。
許認可・事業構築・計画策定など幅広く関われる行政書士だからこそ、 創業者が安心して前へ進めるように寄り添う役割を果たせるのです。
