「クールジャパン」 アニメ、ファッション・デザイン、日本の食文化

 日本のアニメが世界の隅々まで広がり、一種の日本ブームが巻き起こっているといっても過言ではない状況となっています。日本のアニメにあこがれて、日本に行ってみたい。日本でアニメに関する仕事に就きたい。日本でアニメの勉強をしたい。・・・など様々な夢・希望・期待を抱く外国の方が増えているのは大変ありがたいことです。今日は、そんな外国人の方にとって、在留資格「技術・人文知識・国際業務」の本来の枠組に加えて政策的に認められるケースを一般的なケースと併せてご紹介していきたいと思います。

【「クールジャパン」に関わる分野において就労しようとする留学生当に係る在留資格の明確化等について】というタイトルで、出入国在留管理庁が平成29年9月(令和3年3月改訂)に公表したものがあります。簡単にいうと、日本において、アニメ又はファッション・デザインや食の分野など、日本の文化を世界に向けて強力に発信していこうとする意図を受けて、本来、認定のハードルが高いとされる「技術・人文知識・国際業務」の在留資格について、これらの分野に関しては、高度な技術力の発揮が期待できるような人材に関しては、少し間口を広げた上でより多くの人材を確保していこうとする意向が表れている感じのものです。

これらの意図をアニメ分野に特化していえば、「日本のアニメ専門学校へ留学にして下さい。」そして、「アニメの専門的仕事で「技人国」の認定ができたら長く在留して日本のアニメを世界に発信する力を貸して下さい。」。。。といった方が分かりやすいでしょうか。

ここで、要件としてどうしてもクリアしなければならない点は、外国人が日本の大学又は専門学校においてアニメ又はファッション・デザインに関連する科目を履修して卒業し(専門学校卒業者については、「専門士」又は「高度専門士」の称号を付与された者に限る。)、これらの知識を用いて日本の企業に就職を希望する場合に該当する必要があります。また、日本の食分野に関しても同様に、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の該当性を審査することになる他、調理師又は製菓衛生師として就労を希望する者で農林水産省が実施する「日本の食文化が海外普及人材育成事業」の対象となる場合は、在留資格「特定技能」による就労が認められます。但し、外国料理の調理師として就労する場合は在留資格「技能」への該当性が審査されることになります。

クールジャパンとは

◎クールジャパンとは、世界から「クール(かっこいい)」と捉えられる(その可能性のあるものを含む)日本の「魅力」。

◎「食」、「アニメ」、「ポップカルチャー」などに限らず、世界の関心の変化を反映して無限に拡大していく可能性を秘め、様々な分野が対象となり得る。

◎世界の「共感」を得ることを通じ、日本のブランド力を高めるとともに、日本への愛情を有する外国人(日本ファン)を増やすことで、日本のソフトパワーを強化する。

内閣府ホームページより引用

【具体的な許可事例】

(アニメ分野)

  • ●本邦の専門学校においてマンガ・アニメーション科を卒業し、専門士の称号を付与された外国人が、コンピュータ関連サービスを業務とする会社においてキャラクターデザイン等のゲーム開発業務に従事するケース
  • ●本邦の専門学校においてマンガ・アニメーション科を卒業し、専門士の称号を付与された外国人が、アニメ制作会社において絵コンテ等の構造や原画の作成といった主体的な創作活動に従事するケース

(ファッション・デザイン分野)

  • ●本邦の専門学校においてデザイン科を卒業し、専門士の称号を付与された外国人が、デザイン事務所においてデザイナーとして創作業務に従事するケース
  • ●本邦の専門学校においてデザイン科を卒業し、専門士の称号を付与された外国人が、服飾業を営む会社の海外広報業務を行う人材として採用された後、国内の複数の実店舗で3か月間販売接客にかかる実地研修を行い、その後本社で海外広報業務に従事するケース

(美容分野)

  • ●本邦の専門学校において美容に関する専門課程を卒業し、専門士の称号を付与された外国人が、海外展開を予定する化粧品会社における海外進出準備のための企画・マネジメント業務に従事するケース
  • ●本邦の専門学校において美容に関する専門課程を卒業し、専門士の称号を付与された外国人が、ヘアーウィッグやヘアーエクステンション等の商品開発及び営業販売の業務に従事するケース

(食分野)

  • ●本邦の調理師養成施設において調理師免許の取得資格を得た外国人が、農林水産省が実施する「日本の食文化海外普及人材育成事業」の対象となって、5年間調理に関する技能を要する日本料理の調理に係る業務に従事するケース
  • ●フランス国籍を有する者がドイツにおいてイタリア料理の調理師として10年間活動した後、我が国においてイタリア料理の調理に係る業務に従事するケース

【不許可の事例】

(アニメ分野)

  • ●本邦の専門学校においてマンガ・アニメーション科を卒業し、専門士の称号を付与された外国人が、アニメ制作会社において、主体的な創作活動を伴わない背景画の色付け作業等の補助業務にのみ従事するケース

(ファッションデザイン部門)

  • ●本邦の専門学校においてデザイン科を卒業し、専門士の称号を付与された外国人が、服飾業を営む会社において、主体的な創作活動を伴わない裁断・縫製等の制作過程に従事するケース
  • ●本邦の専門学校において主に経理を学んで卒業し、専門士の称号を付与された外国人が、衣料品販売店において専ら販売業務に従事するケース

(美容分野)

  • ●本邦の専門学校において美容学科を卒業し、専門士の称号を付与された外国人が、美容師やネイリストとして業務に従事するケース
  • ●本邦の専門学校において美容学科を卒業し、専門士の称号を付与された外国人が、海外展開を予定する化粧品会社に雇用され、同社の海外進出準備のための企画・マネジメント業務を行うため1年間の座学及び実地研修を行うとして申請があったが、実際には同社で同じく業務に就く日本人は4か月で実地研修が終わるのに対し、当該額国人については店舗を替えながら実地研修をするという名目で1年間に渡って販売接客業務させる計画であったことが審査の課程で明らかになったケース

(食分野)

  • ●本邦の専門学校において経営学に係る学科を卒業し、専門士の称号を付与された外国人が、飲食店チェーンにおいて3年間の滞在予定で海外展開業務を行うとして申請があったが、実際には、入社後2年間は実施研修名目で店舗での調理・接客業務に従事させる計画であったことが審査の過程で明らかになったケース

最近では、アニメ制作の分野においてもAIが導入されることが増えているとされていますが、世界で末永く愛され続けているのは本来のアニメであり、漫画であり、まだまだ人の手、技術が必要な重要な部分が多くあるとされ、その意味で真のクールジャパンという魅力を醸し出していると言えるのではないでしょうか。そして、これらの分野が、日本の将来をより魅力的で価値のあるものに導いていただけるよう願ってやみません。

行政書士中川まさあき事務所