外国人の方を採用するということ

在留資格該当性と基準省令適合性

一般企業が外国人の方を採用する際の手順を明確かつ具体的に説明します。

まず、どのような外国人の方を採用するかですが、すでに日本国内に在留する外国人の方(既に何等かの在留資格をもって在留している外国人)を採用するのか、それとも、海外に居住する外国人の方(これから、在留資格を新たに取取得する予定の外国人)を新たに採用するかによって対応も変わります。
さらに、就労に制限がある場合と、就労に制限がない場合に分かれますので、この点にも留意する必要があります。

でははじめに、日本国内に在留する外国人の方を採用する場合を確認していきましょう。ここで、前提条件として、日本国内に在留する外国人の方は、次に記載の「身分地位系の在留資格」か、「活動系の在留資格」のいずれかの
在留資格をもって日本に在留していることになることを理解しておく必要があります。

出入国管理及び難民認定法においては、日本に在留することができる資格、つまり、これを在留資格該当性といいますが、同法別表二の表に記載のある在留資格は、「身分地位系の在留資格」とされています。
一方、同法別表第一の表に記載がある在留資格を「活動系の在留資格」といい、この活動系の在留資格は、さらに、仕事等をすることで収入を得てもいい在留資格(就労資格)に該当するものと、原則として収入を得てはいけない在留資格(非就労資格)に分かれます。

もっとも、簡単なものから説明していきたいと思います。企業が外国人の方を採用するときに、日本人と同様に特に難しく考えることなく採用できる場合があります。

それは、就労に制限のない外国人の方の在留資格を持つ方ということになるのですが、出入国管理及び難民認定法 別表第二の表に記載のある①永住者、②日本人の配偶者、③永住者の配偶者等、④定住者 に該当する方がそれにあたります。これらの方は、就労に制限がありませんので、日本人と同様に就労することができます。ちなみに、在留外国人総数341万人の内、153万人の方がこの在留資格を持っているとみられます。

次に、それ以外の日本に在留する外国人の方の場合を確認していきましょう。このケースの場合には、就労できない方(留学生などで、例外的に就労できない方でも、特段の申請をすることで、特別に条件を付して就労を許可される場合もあります。)(観光で短期滞在の方は勿論就労することはできません)と、就労できる方に分かれます。また、既に就労している方は、さらに、転職できる方と、転職できない方などに分かれます。

これらのケースにおいて、企業が外国人の方の採用を考えるにあたっては、「活動系の在留資格」のうち、収入を得てもいい在留資格を持つ在留外国人の方を採用する。または、既に就労している方のうち、転職できる方を採用する。あるいは、新規に、自社にあった在留資格を取得または変更していただいたうえで採用する。ということになります。
また、ここで、更にわかりにくいことを考慮する必要がでてくるのですが、この収入をえてもいい在留資格を持つ在留外国人と認められるためには、それぞれに応じた許可基準があり、その基準に達していると認められた方に限り、その仕事に就くことができるということになります。この基準を、基準省令適合性とよんでいます。

以上、述べてきた項目をまとめますと、
①就労に制限がない外国人の方を採用する

②日本国内に在留する外国人の方で、特段の申請をされ就労を認められた方を、その範囲内で採用する。
③日本国内に在留し、既に就労している外国人の方で転職を希望し、転職ができる在留資格をもつ外国人の方を採用する。(一定の条件あり)
④日本国内又は海外の外国人の方で、新たに自社に対応した在留資格を取得または変更していただいた上で採用する。

というパターンがあるということになります。の場合には、特段の煩雑さもなく、自社で対応できることも多いですが、の場合は、自社で対応することは一般的には難しいと思われます。

従って、のケースに対応するような場合、困ったときは、支援機関等や専門家へご相談ください。

【一般的な外国人採用の流れ】

  1. 採用計画の策定:
    • どのような部署に、どのような仕事をしてもらう外国人を採用するのか具体的に決定します。
    • 求める日本語スキルや実際に行う予定の職種の経験を書類等で明確にします。
    • 採用する外国人に必要な在留資格を確認します。(在留資格該当性と基準省令適合性)
  2. 求人広告の作成と掲載:
    • 求人広告を作成し、適切な媒体(求人サイトや専門誌)に掲載します。
    • 採用条件や仕事内容を詳細に記載します。
     【受入支援機関などと外国人採用に関する事務を包括的に委託することで、このような対応は不要となる場合も考えられます。】
  3. 応募書類の受け取りと選考:
    • 応募書類を受け取り、書類選考を行います。
    • 面接候補者を選びます。
  4. 面接の実施:
    • 書類選考を通過した候補者と面接を行います。
    • 面接ではスキルや適性を確認します。
  5. 内定の通知:
    • 採用が決定した場合、内定の通知を行います。
    • 労働条件や雇用契約について詳細に説明します。
  6. ビザ申請の準備:
    • 採用が決定した外国人のために、ビザ申請の書類を準備します。
    • 必要書類には、在留資格認定証明書の申請書、パスポートのコピー、写真、雇用契約書などがあります。
  7. 入国管理局への申請:
    • 必要な書類をすべて揃え、入国管理局に申請を行います。
    • 在留資格認定証明書が発行されるまで、進捗を随時確認します。
  8. 在留資格認定証明書の取得:
    • 在留資格認定証明書を取得し、採用した外国人に送付します。(メールで発行されるケースもあり、メールでも証明書としての効力があるとされています)
    • 採用者はこの証明書を使ってビザ申請を行います。
  9. ビザの取得と入国:
    • 採用者が日本の大使館や領事館でビザを取得します。
    • ビザを取得した後、日本に入国します。
  10. 入社手続き:(これらも受入支援機関等と連携することでスムースに進めることができます)
    • 採用者の入社手続きを行います。
    • 必要な書類の提出や各種登録(住民登録、社会保険、税務署など)を行います。
  11. 継続的なサポート:
    • 採用した外国人がスムーズに業務に適応できるよう、定期的なサポートを行います。
    • 在留期間の更新手続きや家族の呼び寄せなどもサポートします。

行政書士中川まさあき事務所