
日本国内においては、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」平成30年1月策定(令和2年9月/令和4年7月改定)を、厚生労働省が公表したことなどもあり、副業・兼業に関する柔軟な考え方が社会に浸透してきています。その結果、ガイドラインの冒頭にも記載があるように、「副業・兼業を希望する者は年々増加傾向にある。副業・兼業を行う理由は、収入を増やしたい、1つの仕事だけでは生活できない、自分が活躍できる場を広げる。様々な分野の人とつながりができる。時間のゆとりがある、現在の仕事で必要な能力を活用・向上させる等・・・・」このような人々の様々な声に応えられるような体制整備も進んできているといえます。
しかし、その一方で、総労働時間の把握や過重労働といった問題もあるといわれています。複数の仕事を掛け持ちでするということは、当然、心身への負担も増加するという考え方もあり、副業が本業に与える影響というものも同時に見ていく必要があるといわれています。
さて、それではこの副業・兼業に関する柔軟な対応の流れは、在留外国人(永住者・定住者など一部の在留資格を除く。)にも同様にあてはめることができるでしょうか。しかし、それは原則難しいということになります。
永住者・永住者など一部の在留外国人を除いては、与えられた在留資格の範囲でのみ活動することができるということが前提となっているからです。
従って、現在、技術・人文知識・国際業務の在留資格をもって企業に勤めている外国人の方が、副業で会社を立ち上げて商売をしたい。という場合を例にとると、両方をしようとしてもできないということになり、現在の在留資格を経営・管理の在留資格に変更して開業して現在の会社を辞めるか、副業は諦めるかのどちらかということになります。変更して対応するにしても、必ず、許可が下りるという保証はないため、あらかじめしっかりした計画を立てる必要があるといえます。なお、例外的に、商売ではなく、ふたつ目の会社で在留資格の範囲内で副業として働くということは可能な余地がないわけでもないですが、就業規則上の問題、競合の問題を考えると現実的ではないかもしれません。
それ以外の選択肢としては、良好な素行要件を前提に一定の在留期間を経て永住者の申請をすることにより、はれて許可となった場合には、原則そのような縛りは無くなりますので、それまで気長に待って現状を維持するという選択肢もない訳ではありませんが、それをクリアするには多くの時間や忍耐も必要です。
日本における労働者不足、少子高齢化の流れを受け、副業・兼業の論点を外国人労働者まで広げることに関しては、将来議論される時が来るかもしれませんが、現状では、限界があるということになります。これは、入管法にも規定されているように、「本邦に入国し、又は本邦から出国する全ての人の出入国及び本邦に在留する全ての外国人の在留の公正な管理を図る・・」という目的のためには、一定の枠組みやはどめを設けることもやむを得ないという考え方が前提にあるのかもしれません。